身も心も
劇場公開日:1997年10月18日
解説
複雑な過去を持ち、いまだに青春を引きずる全共闘世代の男女4人の愛の彷徨を描いた心理ドラマ。神代辰巳、藤田敏八、根岸吉太郎、澤井信一郎などの監督と組んで、多くの傑作を生み出してきた脚本家の荒井晴彦が、鈴木貞美の同名小説をもとに、自らの体験を重ね合わせて脚色、さらに初監督にも挑戦した。撮影は「東京兄妹」の川上皓市が担当している。主演は「ダブルベッド」でも荒井の分身といえる作詞家を演じた「誘拐」の柄本明に、「ありふれた愛に関する調査」で荒井自身を投影した探偵役を演じた「恋極道」の奥田瑛二。相手役に「いさなのうみ」の永島暎子と、「極道の妻たち 危険な賭け」のかたせ梨乃。97年度キネマ旬報ベスト・テン第7位。
1997年製作/126分/日本
配給:東京テアトル
劇場公開日:1997年10月18日
ストーリー
妻子と別居している開店休業中のシナリオライター・関谷善彦は、大学時代の友人・岡本夫妻のニューヨーク出張中の留守番を頼まれ、東京から飛行機で一時間ほどの小さな町へとやって来た。善彦は、岡本良介が彼を気遣って留守中の仕事として残していった辞書の校正の仕事に取り掛かるが、そこへ、良介の妻・綾から彼女が手伝っていた喫茶店の留守番を頼まれた原田麗子が、善彦と同じく東京からやって来る。ほとんど初対面の善彦と麗子の話題は、互いの共通の友人である岡本夫妻のことばかりだった。そして、ふたりのとりとめのない会話から、4人の複雑な関係を次第にお互いが知ることとなる。善彦は学生運動中にバリケードを壊しにきた機動隊に火炎ビンを投げ付け、3年間投獄されている間に、当時彼の恋人であった綾を親友の良介に奪われたのだった。麗子はその頃からの綾の親友で、綾の気持ちの揺れを、やはり当時逐一聞いていたのである。ある夜、酔っ払った麗子が綾の口調を真似て、「3年が待てなかったのよ」と善彦に言った。善彦もふざけて良介の真似をして応じる。なかば冗談なかば本気で、麗子は綾を、善彦は良介を演じて、互いの心中を語った。叶えられなかった本当の愛と偽りの演ずる愛とがないまぜになって、ふたりは身体を重ねるようになる。そんな折、綾が突然ひとりでニューヨークから帰って来た。うまくいかなくなっていた夫婦関係を修復するはずの外国生活が逆に亀裂を深め、綾は良介を置き去りにしたままこの町に戻って来たのである。善彦は昔のことを思い出し、どちらからともなく綾とも関係してしまった。それからも善彦は、どっちつかずのまま、綾とも麗子とも関係を続ける。やがて、ニューヨークから良介が戻って来るが、彼は善彦に対する過去の裏切りがまだ割り切れずにいた。良介と綾は離婚することになり、この町を去る決心をした善彦と麗子は、ふたりで一緒に町を出て、東京で別々に別れる。善彦がマンションへ帰ると、娘のあやねが部屋のドアの前に座って彼を待っていた。善彦は、笑顔で父を迎える娘に向かって走ってゆく。