棒の哀しみ(1994)
劇場公開日:1994年10月1日
解説
自分を″棒のように生き、棒のようにくたばる″ような男だと冷めた目で見つめる、ひとりのヤクザの生き様を描くドラマ。「噛む女」(88)以来6年ぶりとなる神代辰巳監督作品。北方謙三の同名小説を原作に、脚本は神代と伊藤秀裕の共同、撮影は「ゴト師株式会社II」の林淳一郎が担当。R指定。94年度キネマ旬報日本映画ベストテン第4位、同読者選出日本映画ベストテン第9位。
1994年製作/120分/R/日本
配給:ヒーロー
劇場公開日:1994年10月1日
ストーリー
大村組の若頭だが組長に疎んじられ、危険な仕事はかり回されるやくざ、田中。組のために8年も刑務所暮らしをしてきたというのに、組長の大村は彼に新しい組を作れと命令し、上納金だけ絞り取って、跡目は若い倉内に継がせようとする。そんな折り大村は倒れ、言葉もろくに喋れない状態に。敵対する大川組も本家を挑発する。田中は情婦の一人、亜弓のマンションで舎弟の杉本と一計を案じ、倉内と大村を見返そうとする。シャブもルートを守るのを口実に抗争の応援を断った直後、組を裏切ろうとした若い梶田をわざと自分を刺すようにけしかけ、相手の鉄砲玉にやられたことにする。抗争の中心から巧みに逃れ、独自にシャブのルートも開発し稼ぎを大きくしていく。一方では飲み屋のツケの取り立てなどセコい仕事も続ける。レストランで働いていた洋子は、もう一人の情婦、芳江に預けシャブ漬けにさせた。やがて自分の役に立つ女になるだろうと。洋子の男が田中を狙い、刺す。そのナイフを腹に受けながらも男を殴り蹴り半殺しの目に合わせる。棒っきれのように生まれ棒っきれのようにくたばる人生。だが今、田中には運がある。大村が死に、壮大な葬式が行われた日。田中の乗るベンツを運転しているのは昨夜、田中を刺した男だ。田中がくわえたたばこの火を倉内がつける。田中は煙をくゆらせ、かすかに笑う。