Helpless

劇場公開日:

解説

孤独感を抱える高校生や仮出所中のチンピラなど、救いようのない連中が突発的に起こす出来事をつづった新感覚の青春ドラマ。監督はOV『教科書にない!』の青山真治で、これが劇場映画デビューとなる。脚本も青山自らが執筆。撮影を「旅するパオジャンフー」の田村正毅が担当している。主演は「FRIED DRAGON FISH」の浅野忠信。本作は“J・MOVIE・WARS3”の中の1本として製作された。16ミリからのブローアップ。

1996年製作/80分/日本
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:1996年7月27日

ストーリー

1989年、高校生の健次(浅野忠信)は、仮出所で帰って来た片腕のやくざ・安男(光石研)に再会した。安男の兄貴分の坂梨(永澤俊矢)が、組長が死んでしまって組はつぶれたと話しても、安男は一向に信じようとしないばかりか、坂梨を撃ち殺す。自分だけにつらい思いをさせて出所したら雲隠れか、と怒った安男は、健次に知的障害をもつ妹のユリ(辻香緒里)と、大切なショルダーバッグを預けると組長の消息を追う。ユリを預かった健次は、安男との待ち合わせ場所である山中のドライブインに行くが、偶然会ったクラスメイトの秋彦(斉藤陽一郎)、そしてドライブインの主人とトラブルを起こしてしまう。そんな折り、精神病院に入院していた健次の父親が自殺を図った。それを知った健次は、突発的にドライブインの主人たちを殺害する。健次は警察の検問をくぐってきた安男と落ち会うが、安男がユリを殺そうとしたことに腹を立てる。安男を残し、健次はユリを連れてバイクで街へ向かう。追いつめられた安男は、自らの頭に銃口を当てた。街のレストランのトイレで、健次はショルダーバッグの中身を確かめた。そこには、白い粉と安男のミイラ化した右腕が入っていた。腕には、「HELP ME」と彫られていた。席に戻ってみるとユリの姿がない。健次は急いで追いかけ、ユリとともに道をどこまでも真っすぐに歩いてゆく。

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(C)1996 WOWOW /バンダイビジュアル

映画レビュー

4.0Helplessな(遣る瀬無い)思いを抱いていたのは、誰であったか…

2024年4月29日
PCから投稿

「おやじ」をめぐる映画である。荒唐無稽なストーリーなのかもしれない。「おやじ」の素性は映画の中で一切明らかにされない。しかしながら散りばめられたイメージ・記号をひとつひとつ拾い上げていくと、隠喩としての「おやじ」がぼんやりと浮かび上がってくる。

「おやじ」が死んだ。尊崇を一身に集めたカリスマである「おやじ」が死んでしまった。そのことについて、遣る瀬無い(helplessな)思いを抱いていたのは一体誰であったか。そのhelplessな多くの魂が、今も鎮魂されずに辺りを彷徨っているのかもしれない。あてもなく徘徊・彷徨する登場人物は、帰る場所のない魂のメタファーでもある。行き場のない、浮かばれない無数の魂の愛憎、栄辱、功罪が(昭和史の矛盾が)主人公の中で爆発する…

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Rosalind

3.5無機質で、説明がない作品で、救いようのない内容で、閉鎖的であったが...

2023年11月4日
iPhoneアプリから投稿

無機質で、説明がない作品で、救いようのない内容で、閉鎖的であったが、全く飽きずに観れたので、良い作品なんだと思った。

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おれ

3.0北九州サーガ3部作の序章

2023年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

青山の三部作を逆に見てしまったので、印象を整理する必要がある。本作品単体で見ると少し物足りない。しかし🎦ユリイカの序章とすると多くのカギが隠されている。まず三作ともロードムービーの体を為してはいるが、ほとんど九州から出る事がない。ロードムービーと呼んでいいかどうか凄く迷うところであるが、青山の、特にこの3部作に車による風景は絶対的に必要なカットであった事は言うまでもない。逃れる事の出来ぬ地元の縛りと、そこから逃れたくても逃れる術を持たぬ者たちの、不器用な生き様が、求めてもいない者同士の繋がりの中でがんじがらめになって織りなす僅かな波紋を、何事もなく流れていく世間の空気の中の淀みのようなさざ波としてとらえた空気感は、ワンカットの長回しの中に流れる僅かな時間のレイヤーに似ていると言える。映画だけでは前後の関係を突かぬのがかなり難しく原作を読む必要があるのかもだが、読まずして想像で感じるこの時の移り変わりの空気感とそれを包み込む光、それこそがフィルムの語る唯一の言語となってみる我々の心に沁み込んでくるのであろう。

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mark108hello

3.5虚無感

2023年3月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

今では考えられないヤサグレた光石研が賢くも無いチンピラ役を妹がいる設定を含め何となく長渕剛の「とんぼ」みたいで、全体的な雰囲気が北野武を彷彿とさせる無機質な感覚と説明過多にならない演出描写。

急に感情を爆発させる浅野忠信の演技というか存在感に魅了されながらこの作品で青山真治を認識し、当時は高校生で二十歳前半くらいまでは浅野忠信を追いかけて劇場に通っていた。

昔から浅野忠信が大好きだったが本作のジャケットにヤラれた感が絶大、忠信が着ていたNirvanaのTシャツが今ではバカみたいな値段のヴィンテージ!?

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万年 東一