氷点

劇場公開日:

解説

三浦綾子の同名小説を、「怪談」の水木洋子が脚色、「スパイ」の山本薩夫が監督した女性もの。撮影は「新・兵隊やくざ」の中川芳久。

1966年製作/107分/日本
原題または英題:Freezing Point
配給:大映
劇場公開日:1966年3月26日

ストーリー

辻口啓造は父の遺した病院を継いでいる。博愛家でとおってきた彼が、娘ルリ子を殺害した犯人の娘を妻夏枝に秘密で養女にすることを思いたったのは、ルリ子の代りに女の子を育てたいという夏枝の望みを迎える風を装いながら、娘を殺された時刻に夏枝が眼科医村井と不貞を働いていたのでは、との猜疑の拭いきれないあせりのためではなかったのか。夏枝は何も知らない。彼女はその養女陽子を異常なほど溺愛した。そんなある日、乳児院に勤める啓造の親友高木に宛てた夫の手紙を見て、夏技は陽子の出世の秘密を知った。人格の一変した夏枝に、啓造も自分の偏狭さと軽卒を侮いた。長男徹は直感で陽子の秘密を知り、ただ一人の庇護者になろうと心に決めた。八年過った。その間に徹は妹の秘密を知ったが、陽子の方も母の冷い仕打に耐えて明るい娘に成長していた。徹はそんな彼女を異性として愛するようになっていたが、大学の親友北原に陽子を託す心づもりで、彼を夏休みに紹介した。二人はなんとなく直感で愛しあうようにみえた。が、夏枝の方が北原に興味を示し、歓待した。その頃、夏枝の親友で陽子も慕っている辰子が、啓造に陽子を養女に欲しいと申し出た。辰子の同情だった。夏枝は陽子宛の北原の手紙を陽子の意思と偽って返送したり、妹との写真を婚約者と写したものだと言ったりして二人を離そうとしたが、やがて陽子たちの仲が氷解したとき、夏枝は陽子の面前で北原に彼女の過去をぶちまけた。罪の血に絶望した陽子は遺書を認め、ルリ子が殺された川原で睡眠薬を呑んだ。その間、北原はその真実を求めて陽子を世話した高木に会った。高木は実はかつての仲間の不義の子を、犯人の子として啓造たちに育てさせていたのだった。それは彼の同情でもあった。皆、後悔した。悔いの中で、陽子の生命は再び息づきはじめていた。

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映画レビュー

4.0“氷点”というより“泥点”と言いたい泥々の愛憎劇だがラストには素直に感動した。筋立てとしては作為的に過ぎる面はあるが、演出・脚色・演技が全て良い方に働いた好例。

2022年7月10日
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鑑賞方法:VOD

①三浦綾子原作ということでキリスト教臭いかなと小説・映画とも敬遠していたが、山本圭出演作繋がりで鑑賞。②大変ドラマチックな物語なので、どの観点から描いてもそれなりに面白いものになると思う。③一組の夫婦が幼い娘が殺されるという悲劇から幕を開けるのだが、その後に始まるこの夫と妻とのドラドロの心理戦が前半の見処。

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もーさん

3.5辻口夏枝

2020年9月2日
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三浦綾子の原作の映画化 〈原罪〉について語られているが 展開が面白く 大ベストセラーになったのが判る 事件の元凶は 普通陽子の養母夏枝(若尾文子)と考えるのだが、彼女はその自己欺瞞のせいか反省もなく全然年も取らずに美しい 娘らしく成長した陽子(大楠道代)に敵愾心も見せる 男性の評価を自己評価の核にしているところが鬱陶しく、夫の疲労と憎悪は理解出来るが 彼の心も捻曲がっている 陽子の秘密の暴露も 自己欺瞞と北原に拒絶された腹いせと嫉妬などが重なった爆発に思えるが、優等生に追い詰められた劣等生に見えたりもする (ここも陽子の絶望する処であるのか… ) この作品のもう一人の主役は彼女なのだと思わされた 1966年(昭和41)頃の 辻口家の家屋の和洋折衷ぶりや 素朴さが感じられる「雪まつり」の様子にも興味をひかれた

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jarinkochie

5.0監督の演出は冴え渡っており、さすが山本薩夫監督とうならせるものです

2020年7月1日
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強烈な映画でした 圧倒されました もちろん原作の持つ力ですが、それを山本薩夫監督は十二分に引き出して映画化しています 配役が大成功しています 父役、船越英二の偽善者ぶり 母役、若尾文子の「女」 兄役、山本圭の精神の線の細さ 恋人役、津川雅彦の誠実さ、真っ直ぐさ そして何より安田道代の純真さ 見事にはまっています 監督の演出は冴え渡っており、さすが山本薩夫監督とうならせるものです 子役の陽子、大人になった陽子 それぞれ単なる笑顔が観る側のマインドセットしだいで全く異なって見えるのだといシーンを見事に撮影してみせています エンドロールも味わいの深い終わり方てました 冬の雪に埋まる旭川の街中の光景で終わるのです この時私達の凍結した心は、ようやく溶けはじめ席から立てるようになるのです このエンドロールで無ければ誰もしばらく動けないでしょう 原罪とは何か? 陽子が殺人者の子供だからか? 自殺を選択したからか? そもそも陽子にだけ原罪があるのか? そうではない、陽子を取り巻く人物それそれに罪がありそれが積み重なってこの結末となったのだ 人は神ではなく完全無欠ではない その時の考えが正しいのかそうでないのか 先の先まで見通せはしない だから必ず間違える 知らぬ内に罪を犯す存在だ 私達人間総てがそうなのだ それが原罪ではないのだろうか? このような思いがぐるぐるといつまでも渦巻くのです だからこのエンドロールで無ければならないのです 傑作です!

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あき240

3.0原作を読んでみたい・・・

2018年12月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 養女が娘を殺した殺人犯の娘という奇抜な発想なのである。愛と憎しみが家族内で複雑に交差する緊張感。真実を告げる瞬間にはゾクゾクするのだが、母親の若尾文子の心がそれほど真に迫ってないのが残念だ。むしろ山本圭の無心の愛に心打たれてしまう。  氷点の意味は出生の秘密によって、陽子が父の犯した罪に苦しみ、堪えていくことができなくなった限界点だ。旭川の厳寒の地でその気持ちが映像により伝わってくる。三浦綾子の小説を短い時間で堪能できる映画だ。原作のラストはどうだったのかは知らないが、何となくこんなにハッピーエンドではないような気がする。機会があれば読んでみたいものだ。

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kossy