劇場公開日 1966年3月26日

「監督の演出は冴え渡っており、さすが山本薩夫監督とうならせるものです」氷点 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0監督の演出は冴え渡っており、さすが山本薩夫監督とうならせるものです

2020年7月1日
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強烈な映画でした
圧倒されました
もちろん原作の持つ力ですが、それを山本薩夫監督は十二分に引き出して映画化しています

配役が大成功しています
父役、船越英二の偽善者ぶり
母役、若尾文子の「女」
兄役、山本圭の精神の線の細さ
恋人役、津川雅彦の誠実さ、真っ直ぐさ
そして何より安田道代の純真さ
見事にはまっています

監督の演出は冴え渡っており、さすが山本薩夫監督とうならせるものです
子役の陽子、大人になった陽子
それぞれ単なる笑顔が観る側のマインドセットしだいで全く異なって見えるのだといシーンを見事に撮影してみせています

エンドロールも味わいの深い終わり方てました
冬の雪に埋まる旭川の街中の光景で終わるのです
この時私達の凍結した心は、ようやく溶けはじめ席から立てるようになるのです
このエンドロールで無ければ誰もしばらく動けないでしょう

原罪とは何か?
陽子が殺人者の子供だからか?
自殺を選択したからか?
そもそも陽子にだけ原罪があるのか?
そうではない、陽子を取り巻く人物それそれに罪がありそれが積み重なってこの結末となったのだ
人は神ではなく完全無欠ではない
その時の考えが正しいのかそうでないのか
先の先まで見通せはしない
だから必ず間違える
知らぬ内に罪を犯す存在だ
私達人間総てがそうなのだ
それが原罪ではないのだろうか?
このような思いがぐるぐるといつまでも渦巻くのです

だからこのエンドロールで無ければならないのです

傑作です!

あき240