母子草

劇場公開日:

解説

かつて田坂具隆監督が手がけた同名作品の再映画化。小糸のぶの原作を「実いまだ青し」の楠田芳子が脚色し、山村聡が「沙羅の花の峠」以来四年ぶりに監督する。撮影は「夜の配役」の荒牧正。

1959年製作/88分/日本
原題または英題:Mother and Her Children
劇場公開日:1959年4月22日

ストーリー

富士山の麓にあるとある町。小沢しげはそこで洋裁店を営んでいる。彼女は、長女の睦子、高校一年の秀一、それに浩二の三人の子供をかかえ、夫亡き後の生活をミシンを踏んで支えているのだ。--ある日、睦子は職員室で書類の整理をしながら、自分の戸籍謄本に「継母しげ」の名が記されているのを見た。藤本先生は静かにこう話してくれた。十八年前、睦子の父は製紙工場を経営していたという。実母は弟の秀一を生むと間もなく産褥熱で亡くなった。父は後添えとしてしげを迎えた。そして応召を受けて戦死。その時しげは浩二をみごもっていた。それから今まで、しげは三人の子をかかえ苦しい生活を続けて来たというのだ。睦子の胸には感動がわいた。--睦子は隣村の小学校の教師となった。だが、秀一は東大を再びスベった。彼は、炭坑に行くと言って家を飛び出そうとした。睦子は秀一に戸籍の秘密を話した。秀一は、自分の力をためすために働くのだと言った。送別の宴。しげは泣きながら手拍子を打って歌った--睦子は、ある生徒の親である高山という男から求婚された。高山は妻を亡くしていた。しげはこの縁談に反対した。睦子は「私もお母さんの歩かれた尊い道を歩こうと思います」と言った。さらに、高山をも愛していると言ってしげを説いた。その時、秀一が怪我をしたという知らせが届いた。秀一の眼は再び開かなかった。が、彼の表情はいつも明るい。睦子の前で、しげが秀一の点字の手紙を読んだ。「……お母さんが習いはじめたという点字の手紙を読みながら、ぼくはいくたび泣いたか知れません。……いつかお母さんにお送りした母子草も咲いているでしょう。“盲いたるまぶたに咲けり母子草”……」朝の空気の中に、富士はひときわ美しかった。

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