南極物語(1983)

劇場公開日:

解説

南極観測隊が悪天候に阻まれ、やむなく南極の地に置き去りにしてきた十五匹のカラフト犬の生への闘いと、観測隊員たちの姿を描く。脚本は「人生劇場(1983)」の野上龍雄、「色ざんげ(1983)」の佐治乾、「暗室」の石堂淑朗、「キタキツネ物語 THE FOX IN THE QUEST OF THE NORTHERN SUN」の蔵原惟繕の共同執筆。監督は「青春の門 自立篇(1982)」の蔵原惟繕、撮影は「キタキツネ物語 THE FOX IN THE QUEST OF THE NORTHERN SUN」の椎塚彰がそれぞれ担当。

1983年製作/145分/日本
原題または英題:The Antarctica
配給:ヘラルド=東宝
劇場公開日:1983年7月23日

ストーリー

昭和三十三年二月、南極の昭和基地から第一次越冬隊員が第二次隊員と交替すべく観測船“宗谷”へと“昭和号”で空輸された。だが、例年にない悪天候のため第二次隊員は昭和基地へは飛ばず、第二次越冬は中止と決定した。犬係の潮田と越智は、基地に残された十五匹の犬を救うべく“昭和号”を飛ばしてくれるよう小沢隊長に食いさがったが、満身創庚の“宗谷”には、これ以上南極の海にとどまる力はなかった。初夏、潮田は北海道大学講師の職を辞し、樺太犬を供出してくれた人々を訪ね歩く謝罪の旅に出た。なかには「どうして連れて帰って来なかったの!」と激しく怒りをぶつけてくる少女・麻子もいた。潮田の謝罪の旅を知った越智は稚内に向かう。稚内では学術探険に貢献したとして十五匹の犬の銅像が建てられ、その除幕式が行なわれていた。集った人々の中に潮田の姿を見つけ、外国人記者がぶしつけな質問を浴びせた。「この手で殺してやればよかった」と悲痛な表情で語る潮田を見守る越智。その頃、南極では犬たちの生きるためのすさまじい戦いが展開されていた。戦いは首輪を抜け出すことからはじまり悪戦苦闘の末に自由を得たのは十五頭のうち八頭だった。基地に食物のないことを知った犬たちは、餌を求めてさすらいの旅に出る。集団でアザラシを襲い、凍りついた氷塊の中に見える小魚を掘り出して喰べる犬たち。そのうち、獲物を探しながら足をすべらせ氷海に呑まれてしまう犬、狂ったように走り氷原に姿を消して帰らないもの、仲間の数は次第に減っていく。先導犬のシロも潮田、越智と共に犬ぞり探険行で見つけた思い出の鯨の死骸の中に入り込んだまま、息たえた。またリーダー格のリキもシャチに襲われ悲運の死を遂げる。一方、第三次越冬隊が組織されることをニュースで知った潮田と越智は進んでその隊員に加えて貰うよう頼み込んだ。宗谷からヘリで昭和基地に着いた二人は、鎖につながれたまま死んでいる犬たちを見つけ慟哭する。涙にくもった潮田と越智の眼が、不意に丘の上の二頭の犬をとらえた。二頭はタロとジロだった。二人は大声をあげて駆けだした。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第7回 日本アカデミー賞(1984年)

ノミネート

作品賞  
音楽賞 バンゲリス
話題賞 作品部門/俳優部門
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映画レビュー

5.0単なる犬のお涙頂戴映画なんかじゃあありません

2022年3月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2022年、今年は正月から大寒波で近年になくめったやたら寒かったです
3月に入って急に春めいたかと思えばまた気温が急低下して都心でも雪が降りました
ついこの間は、東北の大地震とのダブルパンチで大停電の一歩手前までいって大騒動です

でも究極の寒さとなるとやはり南極です
南極の映画と言えば?

遊星からの物体X!
え?日本映画?なら復活の日!
そうなるのは特撮ファンだけですwww

普通の人は本作になるのが当たり前です
なにしろ日本映画史上でも特筆ものの超特大ヒット作品なんですから!

1983年7月公開
国内1200万人動員、61億円の配給収入
1980年の黒澤明監督の「影武者」の記録を塗り替えて日本映画歴代映画興行成績1位に躍り出た作品なのです
1997年の「もののけ姫」まで、実写映画となると2003年公開の「踊る大捜査線2」に抜かれるまで、この記録は破られなかった大記録です

この年は猛暑だったんじゃないの?
真夏に南極の映像みて単に涼みたかっただけじゃねーの?なんていう人もいるかも知れません

それなら数カ国でも公開されて、近年はディズニーがリメイクしたという理由を説明できますか?

こんな日本映画が他にありますか?
「七人の侍」ですら及ばないのです

でもなぜか映画ファンからは本作の評価は低いようです

老舗の映画会社でもないフジテレビの製作
それを電波を私物化して自局の番組で大々的に宣伝しまくったから大ヒットしただけ
動物を使った安易なお涙頂戴式の映画だ
などといろいろ批判されてます

かく言う自分も今の今まで観てなかったのですから、そんなに風に観てもいないのに頭からバカにしていたんだと思います

反省します
何にもわかっていませんでした
すみませんでした

大ヒットしたのは当然です
世界各国で公開されるのも当然です
ハリウッドリメイクされるのももちろん当然です
日本が世界に誇るべき素晴らしい映画だと思います
心からそう思います

格調高い映画だけが素晴らしい映画ではないのです
映画は大衆娯楽です
大衆が観て良いと思う作品が良い作品です
親も子供も観て、もう一度観たいと思うそんな映画だからこのような超特大ヒットになるのです
一部のひと握りの人間だけが理解できる小難しい映画だけが素晴らしい訳ではないのです

監督は蔵原惟繕
石原裕次郎の映画を沢山撮った人
つまり大衆娯楽の映画とは何かの神髄を理解されている監督だと言うことです

カメラは椎塚彰とあります
不勉強でこの方のことを全く知りません

しかし広い画角に非常に明るい画面で映し出される映像は、ロケ地のカナダの北極地帯や南極の光景はもちろん、北海道や京都のシーンでも目を見張るものです
名カメラマンと名高い宮川一夫や木村大作にも勝るような映像が全編に渡って写されているのです
特に真夏の北海道の無人駅や利尻富士のシーンの映像の美しさは、比較ができますからその腕前のすごさが良くわかります

観ていて思うのが、高倉健や渡瀬恒彦が台詞を喋っているのがふと日本語だと気づいて驚く感覚があるのです

画面の中の日本人達が日本語を話す
日本映画なのだから当たり前です
なのに驚くのです
字幕で日本語が流れないと思い、そこで初めてこれは日本語の映画だったと驚くのです
英語を話していて当たり前の映像だからでしょう
貧乏臭くない洋画水準の映像の美しさなのです

蔵原惟繕監督は「栄光への5000キロ」を1969年に撮った人
その映画も洋画的な感覚に溢れていました

つまり日本映画らしくない、洋画水準の映画に一番近くまで到達した映画だったからこそ、あれほどのスーパーヒットを記録したのだと思います

無駄のない脚本、編集
長いと批判されてますが、退屈な映画ならばこんな大ヒットなんかどんなに宣伝しても望めません
海氷の巨大な亀裂のたてる音に怯える子犬、クジラの巨大な死骸、アザラシの肉を投げ与えるシーン
それらは全て伏線なのです

人間のドラマは全体の半分もあるかどうか
ナレーションとテロップを最小限いれても台詞の無い犬達だけのシーンが長く続くのに厭きないし、退屈もしないのです
むしろ南極に取り残された樺太犬達の演技に目が釘付けになるのです
すごいことです

音楽はあのヴァンゲリス
本作の1年前の1981年の「炎のランナー」のテーマがアカデミー賞の作曲賞を受賞して、音楽チャートの1位まで駆け上がるほど
しかもそこに「ブレードランナー」が公開
正に旬の世界的な音楽家だったのです
当然世界中からいろいろなオファーが殺到していたはず
ギャラももちろん高騰していたはず
それを口説き落としたのです
ご存知の通りこのヴァンゲリスという人は金や名声には関心の無い男なのです
つまり本作の企画内容が彼の創作意欲をかき立てた力があったと言うことです
改めてこの「南極物語」のテーマを聴くと、ヴァンゲリスが単に南極の雄大な光景をイメージしているだけでなく、東洋的な曲調があると感じます

南極
それは国境の無い大陸
西欧だけでなく、アジアの日本も参加して世界各国が平等の立場で平和的に調査を行うところ
そこで展開される動物と人間の物語
それはヒューマニティーとは何かを問うてもいるのです
単なる犬のお涙頂戴映画なんかじゃあありません
だからヴァンゲリスは本作のオファーを請けたのです

高倉健と渡瀬恒彦の二大スターが共演
そこに夏目雅子もほんの少しですが登場します
その美しさ!超アップの美貌は圧巻です
インターミッションとしての機能を見事に果たしつつ、クライマックスへの接続を強力に補強しています

かと言ってアカデミー国際映画賞を取れるような作品とまではいきません
それでもクォリティーは大変に高いものがあります
先入観にまどわされて今まで観もせずにいたのは大変にもったいない事だったと思いました

高倉健、渡瀬恒彦、夏目雅子の代表的な出演作と大書きされるべき映画だと思います
この3人のスターのファンならば観てないとならないと思います

蛇足
15頭の樺太犬記念像が、東京タワーの真下にあったことをご存じの人も多いでしょう
東京タワーが完成した翌年、1959年に動物愛護協会が立てたそうです
死んだ犬達の慰霊碑でもあったそうです

ずっと今もそこにあると思っていたら、2013年に立川の「国立極地研究所南極・北極科学館」の西側に移転されているそうです
ビックリです
少し前に通りかかった時にあれ?ここにあったはずなのにと思っていたのですが、まさか移転していたとは全く知りませんでした

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共感した! 4件)
あき240

4.0感動超大作の見方

2021年10月24日
スマートフォンから投稿

泣ける

幸せ

全編2時間24分がとにかく長過ぎる。せっかく南極でお金と時間と命をかけて撮ってきた映像だから使いたい!という制作側の気持ちはよく分かりますが、そこがとにかく長い。しかし、まさに最高!と言えるほど見応えのあるシーンが6箇所あります。
①0:58高倉健が隊長にあと1回だけでいいからヘリを飛ばしてくださいと懇願するシーン。ポケットから毒薬を出して「殺してきます」。
②1:26夏目雅子が祇園祭で「言うこと聞かへんと結婚してあげへんよ」と言うシーン。
③1:32犬を置き去りにしたことを飼い主に謝り行脚をしていた高倉健が少女に「こんな犬いらない、リキを返せ」と言われ無言で耐えるシーン。
④1:55夕暮れの中、リキの飼い主の少女に高倉健が「自分は、どうして犬たちを殺してこなかったのかと後悔していました。でもそれは間違いでした。生き物はそんなものじゃない。誰も命を奪う権利なんてない」と言ってヴァンゲリスのテーマが初めてかかるシーン。
⑤2:07夏目雅子が「はよ東京に行かはったら、うち待ってるわ、その上でうちを選ぶなり、ほかすなりしてちょうだい」と言い、渡瀬恒彦があまりに愛おしくなって強く抱きしめるシーン。
⑥2:17再び南極に行った高倉健がタロとジロが生きていた奇跡に涙しオー!と叫ぶ有名なラストシーン。
録画した人は、この6シーンを中心に見てください。最初の見せ場が、映画開始から1時間も待たなきゃ行けない点が、この映画を初めて見る人の眠りに誘う要因になっています。高倉健、渡瀬恒彦、夏目雅子という日本映画史上に残る名優の水もしたたるイイ時の最高の演技が見れます。
つまり、この映画のウリである「南極大陸と犬たち」の冗長な映像を除けば傑作だと実感できるところが皮肉と言えます。

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ブロディー署長

4.0タロとジロ

2021年10月22日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

これは記憶にあるが、犬15匹を置き去りにしたことは悲しかったが、翌年、2匹が生き残っていたのは、新聞のトップ記事で、奇跡だと思った。
日本の砕氷船の能力が低く、犬を運ぶ余裕がなかったのだが、担当隊員2名(高倉健、渡瀬恒彦)の後悔と歓喜は伝わってくる。
よくぞ映画にできたものだと思う。

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いやよセブン

4.5置き去りにされた樺太犬のたくましさ

2021年3月1日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

公開30周年記念と言う事だから劇場で観て30年も経ったのかと改めて感じ入った南極物語。高倉健扮する潮田暁はじめ隊員と19頭の樺太犬が昭和基地で越冬する中、南極大陸長期旅行などは最強の15頭の犬ぞり隊で行く事になった。
寒風吹きすさぶ中、そりゃあ大変だろうが、そこは南極。ホワイトアウトで何も見えず、遭難寸前で犬も逃げ出したくなるわね。改めて観ると、タロとジロは幼い時から南極で育っていたんだね。だから救援にも行けるし、急遽な引き上げで残されても大丈夫だったんだな。名演技のリキたちを追った撮影が素晴らしかったし、久しぶりに聴いたBGMが画面にマッチしていて、壮大な南極の雰囲気が伝わったよ。
終盤で渡瀬恒彦の恋人役で夏目雅子が登場。画面に華が咲き美しさは言うまでもないが、30年経って高倉健も渡瀬恒彦も夏目雅子も残された映像だけの人になってしまったね。

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重

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