転校生
劇場公開日 1982年4月17日
解説
山中恒の児童文学「おれがあいつであいつがおれで」を、大林宣彦監督が自身の故郷・広島県尾道市を舞台に実写映画化した名作青春ドラマ。互いの体が入れ替わってしまった中学生の男女が巻き起こす騒動を描く。勉強よりもイタズラが好きな中学生・斉藤一夫のクラスに、斉藤一美という少女が転校してくる。かつて同じ幼稚園に通っていた一夫を見つけて喜ぶ一美だったが、一夫は彼女に付きまとわれ迷惑顔。帰り道、神社の階段から一緒に転がり落ちたことをきっかけに、なんと2人の体は入れ替わってしまう。信じられない状況に戸惑いながらも、ひとまず相手になりきって互いの家族や友人の中で生活を続けることにするが……。
1982年製作/112分/日本
配給:松竹
スタッフ・キャスト
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ー 或る年代以上の映画好きには、忘れ難き作品ではないだろうか・・。ー
■感想
1.作品構成の妙
・転校してきた斎藤一美と斎藤一夫が、神社の階段から転げ落ちるシーンまではモノクロで、階段下の前の踏切を電車が取り過ぎるシーンから、カラーに切り替わり、ラスト、再び二人が同じ階段で転げ落ちるシーンから、再びモノクロに変わる、印象的な色彩の使い方。
2.若き小林聡美さんと、尾美としのりさんの、振り切った演技及び異性を演じる表現力。
1)特に小林さん。年頃の女性で、頑張ったなあ‥。実際には、大変みたいだったけれど、あの頑張りが今の小林さんの女優としての確固たる地位を築いたのだ!と勝手に思っている。
そして、お二人とも現在でも、ドラマ、映画の第一線で活躍されている。稀有なことであろう。
2)入れ替わった二人の台詞
・一夫と入れ替わった一美:”あれって、時々、形が変わるのね・・。”
”生理って知っているよね・・”
ー 女性の身体は男の子には魔訶不思議なモノ。それを、作品の面白さに昇華させる大林監督の、技量。ー
3.故、大林宜彦監督ならではの、どこか懐かしさを感じる画。
背景に映る穏やかな瀬戸内海の風景が作品の風合に優しさを加味している。
<元に戻った二人が、お互いに距離を縮め、相手への素直な想いを口にし・・、そして一夫の父の栄転により二人が別れる、切ないバスのシーン。子供の頃にTVで今作を観た男には、沁みます・・。>
2021年4月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
小林聡美熱演❣️可愛くキュートでした。
志穂美悦子の美しさに驚きました。
2020年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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かつてパロディ漫画を見たり、リメイク作でトークイベントに出たりした際に見返して以来10年以上ぶりだったためとても新鮮で面白い。冷静に見ると、尾見としのりがなよなよし過ぎで、冒頭の入れ替わる前の小林聡美と食い違う感じがする。小林聡美の暴れっぷりが痛快でかっこいい。太った子を蹴り倒してパンツを脱がせたり、黒板で数式をぐちゃぐちゃにしたり、一度やってみたい。
特に素晴らしかったのは尾見としのりと小林聡美が家出してフェリーに乗り込んでからのゆったりとした流れで、宴会の場面も最高なのだけど、これまで『ねらわれた学園』までの全部の場面を濃いインクで塗りつぶすような作風から、余白を活かすような、大林監督のステージが上がった感じがする。画面合成など特撮場面も、神社の階段くらいにとどめてぐっと地に足のついた演出で、ここからいよいよ快進撃が始まる。
2020年5月14日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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大林宣彦監督1982年の作品。
言わずと知れた監督の代名詞、“尾道3部作”の第1作目。
今では“尾道3部作”と言われているが、当初はそんな予定は全く無く、たまたま故郷・尾道を舞台にし、たまたま『時をかける少女』『さびしんぼう』も同舞台となり、後にファンがそう呼んだもの。
それが大林監督の名高い代表作になるのだから面白い。
話は今更語る必要も無いが、
斉藤一夫と斉藤一美。
一字違いの幼稚園の幼馴染みが、一美の転校で中学で再会する。
親しげに接してくる一美に一夫はうんざり。
ある時、2人一緒に石段を転げ落ち、気付いたら、
俺(私)たち、入れ替わってるゥ~!?
原作(山中亘『おれがあいつであいつがおれで』)はあれど、邦画に於ける“男女入れ替わり映画”の原点。
言うまでもなく、かのメガヒット・アニメ映画にも多大な影響を。
「ある!」「ない!」、モミモミ、アレどうやって使うの!?…子供の下ネタみたいだが、この手の作品のあるある定番。
やはり面白いのは、入れ替わった後。
一夫は活発でクラスの人気者だったのに、急にオカマみたいにナヨナヨに。
一美はおしとやかだったのに、急に「オレ」「テメェ」口調のガサツな性格に。
周囲の怪訝な目は元より、問題は当人たち。
困惑、トラブル…あ~もうヤだヤだ!イヤよイヤよ!
尾身としのりの女の子演技。
でもやはりMVPは、本作で映画デビュー&初主演の小林聡美だろう。
今やベテランの彼女だが、何とチャーミング。時に16歳。
入れ替わる前の女の子演技、入れ替わってからの男の子演技。
当時まだまだ新人ながら、女の子と男の子の魅力を見事演じ分け、天晴れ!
勿論、尾身としのりのナヨナヨ演技も(笑)
でも本作、少々苦言もある。
入れ替わってから、そんなに目立つ振る舞いしたら周囲に過剰に怪しまれるやろ! ちょっとはそれらしく振る舞おうよ…。
その後一夫は一応それらしく振る舞ったりするが、一美はいつまでもメソメソメソメソ…。見てて少しイライラ。
だけど、これがもし入れ替わったらのリアル…なのかも。
そしてこれがまた映画の面白味なのでもある。
ただのファンタジー青春ドタバタコメディに非ず。
入れ替わって初めて気付く、異性の事。
それぞれ報告・相談していく内に、お互いの事を思いやるようになる。
異性への理解と、もう一つ…。
大林監督作品としてはどちらかと言うとおとなしめで、ヘンな色は出してないが、遊び心やユニークな演出も。
まず冒頭、入れ替わる前は白黒、入れ替わってからはカラー、ネタバレだが最後元に戻ったら再び白黒。何だかこれが非常に情緒さを感じさせる。と同時に、2人にとって忘れられない青春の色…。
入れ替わる石段落ちは“らしい”表現。
8ミリカメラ映像、クラシック音楽、名作映画ポスター…。
そして、わが故郷の尾道。
あの黄金色の海。
誰もが思い浮かべる坂道。
その美しさ!
名所巡りではなく、どれも素朴な風景。それがまた魅力。
もし自分も映画を撮る立場に居たら、我が故郷・福島県郡山市を舞台に魅力を捉えたいものだ。
ユニークな設定を、青春の悲喜こもごもと共に、ノスタルジックに。
尾道への愛を込めて。
大林監督心の映画。
最後にこう付け加えたい。
故郷を離れた少年は映画監督となり、故郷を舞台にあの不思議な体験を基にした映画を作った…。
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