天草四郎時貞

解説・あらすじ

松竹を退社した大島渚監督が東映で制作した初の時代劇。1637年、キリシタン弾圧に苦しむ天草と島原のキリスト教徒が起こした島原の乱と、その指導者・天草四郎の人間像を暗く重々しいトーンの中に描く。島原の乱に1960年安保闘争敗北後の民衆の心境をオーバーラップさせた、東映時代劇映画の中でも異色な作品。

1962年製作/101分/日本

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映画レビュー

5.0 細かい分裂とそれを乗り越えていく粘り強い論理

2025年10月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

1962年。大島渚監督。天草の乱がいかに引き起こされ、どのような経緯を経て原城籠城へと至るか。キリシタンと非キリシタン、武士と農民、男と女、支配者側と反乱側などの大きな対立だけでなく、キリシタンを裏切って密告するものの真実の絵を描くことという別の価値観で切る絵師とか、反乱を先導したものの非キリシタンであり勝利をもとめない籠城に反対する浪人とか、支配者側にありながらも四郎と友情を保ち続けつつて反乱に加わりつつ、妻と四郎との関係への疑いをぬぐいきれない武士とか、細かい差異がていねいに描き分けれられる。宗教的な真理の追究すること、支配者の圧政を終わらせること、苦しい生活を逃れること、など複数の目的間の葛藤と衝突を経ながら、それぞれが生き方を選んでいく。
みまがうことのない大島監督の「霧」と「討論」の映画。

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