残菊物語(1956)

劇場公開日:

解説

名優尾上菊之助の悲恋を描いた村松梢風原作の再映画化。今回は大映カラー総天然色で製作される。(前作は昭和十四年、溝口健二監督、花柳章太郎・森赫子主演、同年キネマ旬報邦画ベスト・テン第二位入賞)。前作同様、依田義賢が脚色を担当し、「虹いくたび」の島耕二、長井信一が監督、撮影を、それぞれ担当した。主な出演者は、「銭形平次捕物控 死美人風呂」の長谷川一夫、「チャッカリ夫人とウッカリ夫人 (夫婦御円満の巻)」の淡島千景、「浅太郎鴉」の黒川弥太郎と市川小太夫・「腰元行状記」の阿井美千子、「東京犯罪地図」の見明凡太朗など。歌舞伎俳優の市川寿美蔵、嵐三右衛門、沢村訥升が特別出演している。

1956年製作/112分/日本
原題または英題:Kabuki Elegy
配給:大映
劇場公開日:1956年4月23日

ストーリー

尾上菊之助は養子ながら歌舞伎の名門、五代目菊五郎の後継者として苦労なく育ったが、それだけに上辷りな人気に酔っていた。この思い上った菊之助の芸を真実こもった言葉でたしなめたのは寺島家(菊五郎の本姓)に雇われて来た弟幸三の若い乳母お徳であった。菊之助はお徳の偽りない言葉に感激、芝居にも身を入れるようになったが同時に二人の間には恋心が茅ばえた。だが明治の封建的な気風の中に、菊五郎夫妻はお徳を解雇した。激昂した菊之助はお徳の行方を突止め二人は結ばれたが、菊之助は勘当され寺島家から姿を消した。彼はお徳の実家を訪れたがお徳と逢えず、一人空しく大阪劇壇の大御所、尾上多見蔵を頼り旅立った。そして一年--名を松幸と改めた菊之助は芸道に励んだが評判は更に悪かった。そのころ彼の不評を聞いて大阪朝日座に現われたのがお徳だった。路次裏の二階借りながら二人は晴れて夫婦となり漸く光明を見出したかに見えたがその矢先、頼る多見蔵に死なれ地方廻りの小劇団に身を落さねばならなかった。長旅にお徳は胸を病み、苦難の日が続いた。菊之助の将来を案じたお徳は菊之助の親友福助に菊之助の復帰を懇願、菊之助は勇躍、桧舞台に立ったが、その陰にはお徳が身を退くという犠牲が払われていた。月日が流れ菊五郎一行に加わり芸名上った菊之助の大阪初下りの日、お徳は重病の床に臥していた。その夜、晴れの菊之助に一目逢いたいというお徳の切な願いが叶えられ菊之助は舞台姿のまま死期迫るお徳の枕許に駈けつけた。大切な初日の舞台のこととて、菊之助は角座へ再び帰り菊五郎と親子獅子を華やかに踊ったが、その姿は臨終のお徳の脳裡にもありありと浮んでいた。

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