櫻の園(1990)

劇場公開日:

解説

毎年創立記念日にチェーホフの「櫻の園」を上演する女子高演劇部を舞台に、それに携わる少女たちの開演までの2時間の出来事を描く。吉田秋生原作の同名漫画の映画化で、脚本は「ノーライフキング」のじんのひろあきが執筆。監督は「猫のように」の中原俊。撮影は「君は僕をスキになる」の藤沢順一がそれぞれ担当。

1990年製作/96分/日本
配給:アルゴプロジェクト
劇場公開日:1990年11月3日

ストーリー

郊外にある私立櫻華学園高校演劇部では毎春、創立記念日にチェーホフの舞台劇「櫻の園」を上演することが伝統となっていた。そんな開幕2時間前の早朝、小間使いのドゥニャーシャ役の部長・由布子がパーマをかけた髪でやって来た。普段はまじめな由布子の変化に演劇部員たちは驚くが、そんな時、若い従僕ヤーシャ役の紀子が他校の生徒とタバコを吸って補導されたというニュースが部員の間に駆けめぐる。それによって上演中止にまで発展しかけたが、顧問の里美先生のけんめいな説得によってなんとか丸く納まった。男役として人気の知世子は、今年は女主人ラネフスカヤを演じることになっていたが、初めての女役に自信を持てない知世子を、由布子は優しく励まし、そんな二人の間に友情をこえる感情が芽生えていた。そして、二人の姿を偶然物かげから見てしまう紀子も由布子に好意を持っていた。こうして開幕は近付いてきた。舞台裏での緊張感の中で紀子がふっと「志水さん、今日は誕生日でしょう?」と由布子に言う。やがて少女たちの間で小さな声で歌われるハッピーバースデーと共に、開幕のベルは鳴るのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第14回 日本アカデミー賞(1991年)

ノミネート

作品賞  
監督賞 中原俊
脚本賞 じんのひろあき
新人俳優賞 中島ひろ子
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映画レビュー

3.0郷愁は誘う。けれど、原作の深みがない。 原作の方が百倍良い。

2023年9月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

単純

寝られる

吉田先生のファン。
 吉田先生の描く女子高校生は、もっと肉感的。第二次性徴による変化・アンバランスな危うさを匂わせてくれる。
 まだ経験値も低くて、何も考えていないような夢見る乙女を描かせても、どこか、”女”そしてやがて”おばさん”になる片鱗をちらつかせる。
 経験値と感受性・思考度が高い女子なら、なおさら、性的な意味だけでなく”女”を匂わせ、それでいて天女の如く、鬼女の如くその存在感を放つ。
 純粋で、それでいて泥臭く、神秘的で、”生”を感じさせてくれるような登場人物。
 それなりに、悩み、逡巡し、それなりに放り出し、それなりに生きていく。

それに比べて、この映画の女子は皆、砂糖菓子。
 何かを抱えていても、金平糖のよう。もしくは琥珀糖。
 本音を言っているようでも、男子を前にしたぶりっ子。金魚鉢の金魚。アイドルが頑張っています的な。
 そんな彼女たちを愛でたい人々からは珠玉の一本なのだろう。
 けれど、私には物足りない。

★ ★ ★ ★ ★

杉山さん、切ない。志水さん、まっすぐすぎて…。
脚本賞をとったのも納得。

でもね。演技が…。賞総なめって、確かに着眼点とか、演出の方法は唸るんだけど。

主要4人はなんとかいい味出しているものの、他のメンバーは棒読み状態。
 途中差し入れをしてくる先輩。もう少しどうにかならなかったのか。
 たくさんの演劇部員の雑談場面がカメラ目線の会話。確かに日々たわいもない会話をしている。でもその会話に没頭している時の仕草や表情がカメラ目線なんだよなあ。女性の監督だったら、ああは撮らなかっただろうなあ。

そして、主要4人。

 城丸さんは、本当は一番際どいはず。ばれたら杉山さんの比ではない騒ぎ。だけど、さりげなく傍観者の役をとってあっけらかんとしていて、え?という感じ。やばいと思っている半面、なんとかなると思っている世間知らずさ・要領の良さからくる万能感。周りがしていない経験している優越感と勇気があるみたいな勘違い。かえってスリルを楽しんでいるのだろうな。
 と想像するのだが、演技からは感じない。彼とお付き合いして、演劇部のことやってと時間割をこなしているみたい。男子にしたら、相手してくれるしでもポカやって迷惑かけられなさそうだし、都合がいいのだろうな。

 杉山さん役のつみきさん。煙草で指導受けている、その辺の演技がなおざり。何故、このような学校にいながら煙草を吸うメンバーと喫茶店にいたのかとか、吸っていないのに誤解されている憤りとか、確かに脚本にはないけど、ないからこそ、演技で表現してほしかったのだけど、表面的な台詞の解釈だけだった。
 でも、志水さん達が写真を撮っている場面を観ている表情。あれはぐっときた。見応えありました。そして、届かない志水さんへのアプローチ。切ないですねぇ。

 志水さんも同じ。演技は頑張っているんだけど、なんで急にパーマかけてきたのか、その辺が全く表現されていなかった。別にパーマかけていないおさげ髪だって、そのあとの展開変わらない。ま、杉山さんと指導室に呼び出される為にパーマが必要だったのだろうけど。

 倉田さんが一番自然だったかな。いるいるああいう人、みたいな。

 そこにいて表現しているだけで、志水さん他各メンバーが、どういう家族の元で、どう成長して、そういう期待をかけられていて、昨日家庭でどういう会話をしてきて、今この場にいるかが全然見えない。
 映画中の台詞にはないし、場面もないけど、有名な役者はそこまで考えると聞く。最近、本当に実力のある若手が多かったから、その方々と比べちゃうのはかわいそうなのかもしれないけれど…。

 大切な、(伝統行事で毎年やるけど)自分が演じるという点では生涯1度しかない上演が潰れそうなのに、なんかのんきだなあ。そんなに思い入れなく、中止となったらそれはそれでOKで、あくまで”部活”としてやっているからかしら。そういえば「しらけ世代」という言葉が出てきたのってこのころだっけ?劇の上演より、友達とのおしゃべりや告白の方が数段大切ってところは、まさしく高校生を見事に描写したなぁと思う。どうせ、もうすぐ受験でそれどころじゃなく、卒業して別れて行くのだからこの一瞬を大切にというほとんど祈りにも似た思い。

 上田氏はさすが。学校にいる場面だけでなく、帰り道、家にいる様子とかも想像出来ちゃう。いいアクセントになっています。

吉田秋生先生の漫画を脚色した映画とな。
 でも、吉田先生が描くものってそんな単純なものだっけ?
 吉田先生の漫画なら、たったひとコマで、なんでパーマかけてきたのか、その前の志水さんの人生・家族背景を描きだしちゃう。
 学校では優等生やっていそうな城丸さんの別の顔。女のしたたかさとこれがばれた時の顛末を想像できない甘さ。もしくは、顛末を想像できない目の前の快楽に興じるだけの幼さのみの女子。それでいて上級生の恋愛ごっこに気づきながらも知らんぷりするしたたかさ。そんな人柄が描き出される。
 吉田先生は、けっして砂糖菓子のような綺麗事では済まない複雑な一人ひとりの内面をも描き出しつつ、その人たちの日常の一こまを紡ぎだしていくのがうまい作家さんだと思う。

美化した回顧録と重ね合わせてみるか、男性目線での映画。
 確かに、美しい部分の少女たちの姿が綺麗にまとまっており、ちょっとしたほろ苦さと共に気持ちよく映画の世界に浸れる。
 この映画が吉田先生原作のものでなければこういう切り口の映画ってあるねと、それはそれで評価できる。

でも、
 吉田先生原作と聞くと、登場人物への人間考察が表面的すぎて納得できない。
 なので☆3つです。

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とみいじょん

5.0チェーホフ

2022年2月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 大勢の演劇部員が練習場をぐるりと囲んでアイスクリームを食べるシーンに代表されるように、一ヶ所で数人が会話する一方で、他の数人も会話するような同時進行劇。どこまでが演出で決められているのかわからなかったが、この舞台劇と映画劇の融合とでも言うべきダイナミクスに驚かされる。ストーリーはあってもなくてもいい程の些細なプロット。劇が始まるまでの2時間ちょっとの話なんですからね・・・

 劇が始まる直前には、実は女子生徒同士の三角関係も見え隠れするが、ここではつみきみほの大人びた繊細な演技がすがすがしい。ほんとにタバコを吸いたかったんだろうなぁ~と思わせる絶妙な演技にも注目だ。

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kossy

4.5櫻の園=女子校を連想... うまい。

2020年3月9日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

萌える

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ピニョン

4.0令和の始まりにこそ相応しい映画だと思います

2019年11月7日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

見事な作劇の脚本で、開演前の2時間に少女達の青春を見事に切り出しています

毎年変わり泣く咲く櫻
毎年上演される櫻の園
しかし演じるのは毎年違う少女達なのです
それは終盤の定年間近の先生の終戦から間もない頃の青春とも変わらない姿なのです

時は流れ青春は短く櫻のようにすぐに散っていきます
しかし時は流れども若者達の青春は今年もあり、来年もくるのです

30年目の櫻は来春に咲くでしょう
彼女達は今47歳
きっと彼女達の娘が櫻の園を上演するのでしょう
青春は同じように繰り返されるようにみえて、その短い春に咲く花自身は唯一無二のものなのです
それこそが本作のテーマだと思います
令和の始まりにこそ相応しい映画だと思います

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