子象物語 地上に降りた天使

劇場公開日:

解説

戦争のために軍によって殺されていく動物たちのなかで、辛うじて生き残った子象を守ろうとする人々の姿を描く。脚本は「動乱」の山田信夫、監督は「飛鳥へそしてまだ見ぬ子へ」の木下亮、撮影は「傷だらけの勲章」の安藤庄平がそれぞれ担当。主題歌は、水谷麻里(地上に降りた天使)。

1986年製作/106分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1986年7月26日

ストーリー

昭和15年冬、東京富士見動物園では飼育係の田辺正太に見守られ、象のサクラが子象を生み落した。同じ頃、正太の妻、節子も男の子を出産した。子象のハナ子は、動物園好きの小学生たちと絆を深めながら成長していく。だが、日本は太平洋戦争に突入し、軍は五大都市にある動物園の猛獣を殺すよう命令を下した。空襲による猛獣のパニックを防ぐ名目だが、実は国民に非常時の危機感をあおり、戦争の士気を高揚するのが目的だった。その実行にあたるのは正太の同級生だった東部軍司令部・秋元少佐である。正太は秋元に考え直すよう嘆願した。秋元の婚約者で、戦争のために音楽の道を閉ざされた木暮幸子も同じく批判的だったが、好戦派の秋元は全く聞き入れようとしない。動物園の飼育係たちは、地方の動物園に自分たちの動物をひきとってくれるよう手紙を書いた。ある日、長野動物園の栗田園長が、象を引き取りたいとやって来た。安堵した正太は妻子と共に長野に移る決心をする。動物処分の日、動物たちは園内で無残に殺されていった。サクラやハナ子も長野へ移るはずが、軍は例外を認めず餓死処分を強いた。やがてサクラは死んだ。長野へ疎開することになった小学生と幸子は大きなショックをうける。正太と幸子は辛じて生きているハナ子を何とか守ろうと決心した。幸子の案で、ハナ子をグランドピアノの木箱に入れ、楽団員たちが長野へ向かう列車に乗せて脱出するのである。検問をくぐり、婚約解消した幸子に会いに駅へ来た秋元の目もくらまし、正太と幸子、そしてハナ子を乗せた列車は長野へ向けて出発した。動物園でハナ子のいないことに気づいた秋元は、駅で目にした木箱を思いおこす。長野駅では、すでに疎開した小学生や栗田園長たちがハナ子の到着を待っていた。だが、秋元が知らせたため、列車は長野駅のひとつ手前の篠ノ井駅で、ハナ子の乗っている車輛だけ突然切り離された。一個中隊がハナ子と正太を包囲するなか、秋元がやって来た。彼はハナ子に銃を構えた。そこに栗田園長や小学生が走り込んでくるが、中隊が立ちふさがる。その時、銃声がするが秋元はハナ子ではなく空に向けて撃ったのだった。

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