喜劇 日本列島震度0
劇場公開日:1973年11月22日
解説
終末論がささやかれる一方、惰性的な平和がつづいている現代、その中に持ちこまれた地震さわぎを通して、庶民のさまざまな人間模様を描く“生存欲望喜劇”。脚本は南部英夫、吉田剛、監督は脚本も執筆している「虹をわたって」の前田陽一、撮影は「恋は放課後」の竹村博がそれぞれ担当。
1973年製作/90分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1973年11月22日
ストーリー
近い将来、大地震が日本を襲うことは確実といわれる昨今、ここ江東0メートル地帯では日に日に地震への話題が高まってきた。タビ職人・福田清造は、ひょんなことから町内の地震対策委員長に選ばれた。無職同然で、毎日ブラブラとしていた清造は俄然ハッスル、会う人ごとに避難対策の大演説をぶった。清造の娘・真知子は、区役所の地震対策室に勤めている南と恋仲であるが、最近はいささか倦怠ムード。その南は仕事をサボッてギャンブルばかりを楽しみ、おかげで金融業者の大津金次郎から借金を重ねていた。そんなある日、女占師・中島蓮月が、十二月一日午前十一時、東京に大地震が起こる、と予言した。町内は喧喧囂囂の大騒ぎ。特に、蓮月の信奉者である清造は以前にも増してハッスル、十二月一日に、町内まとめて八丈島への避難旅行を計画した。そんな騒ぎに目をつけた大津は、怪しげな緊急避難用具一式を売りまくり、一人で大儲けしていた。一方、蓮月は、以前から大津と関係していたのだが、金儲け一辺倒の大津に愛想をつかし、清造の純な情熱に次第にひかれていった。地震到来を一番待ち望んでいたのは、南と区役所の悪友たちだった。南は真知子との結婚を決意し、悪友たちは地震で借金がパーになることを願い、地震の当日、競輪で大穴を狙うことにした。さて、前日、八丈行きに集まったのは、意外にも清造と蓮月二人だけ。町民たちは、いつものように黙々と自分たちの生活を守っている。二人は、しかたなく出発した。一方、大津は、地震など信じてはいなかったが、清造と蓮月が二人だけで行った、と聞いてあわてて八丈島へかけつけた。八丈島では蓮月をめぐって、清造と大津が対立した。そして大津はある賭けを提案した。占い通り東京に地震が来れば、大津は蓮月から手をひく、来なければ、清造が手をひく、というのである。清造は承諾した。「惚れている女の言葉を信じる」。いよいよその時刻。と、グラグラと八丈島がゆれ始めた。だが、その地震は八丈島だけだったのである。しかし清造は賭けに勝った、八丈島も東京都だからだ。その頃、東京では競輪で大穴を当てそこなった南たちが茫然としていたが、真知子の気転に助けられ、大損はまぬがれた。東京に戻った清造と蓮月は幸せそうだった。南たちは区役所での悪事がばれ、警察に逮捕されたが、真知子はいつまでも南を待つ決意だった。