蒲田行進曲

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説・あらすじ

劇作家つかこうへいの同名戯曲をつか自らが脚色し、深作欣二監督がメガホンをとって大ヒットを記録した人情喜劇。撮影所を舞台に、破天荒な花形スターと彼を慕う大部屋俳優の奇妙な友情、2人の間で揺れ動く女優の姿を描く。「新選組」の撮影真っただ中の京都撮影所。人気俳優の倉岡銀四郎は、ライバル俳優の橘が自分より目立っていることが気に入らない。さらに、最大の見せ場である「池田屋の階段落ち」が、危険であることを理由に中止になろうとしていた。そんな中、恋人の女優・小夏の妊娠を知った銀四郎は、スキャンダルを避けるため、子分である大部屋俳優・ヤスに彼女を押し付ける。銀四郎を慕うヤスは、小夏と結婚して自分の子として育てることを誓うが……。銀四郎役とヤス役にはつか作品の舞台に多く出演する風間杜夫と平田満が抜擢され、2人の出世作となった。小夏役に松坂慶子。

1982年製作/107分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1982年10月9日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第6回 日本アカデミー賞(1983年)

受賞

作品賞  
監督賞 深作欣二
脚本賞 つかこうへい
主演男優賞 平田満
主演女優賞 松坂慶子
助演男優賞 風間杜夫
音楽賞 甲斐正人

ノミネート

新人俳優賞 平田満
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映画評論

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(C)1982 松竹株式会社

映画レビュー

4.5何度観ても、のめり込む中毒性 日本映画界にとってかけがえのない財産

2020年10月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

往年の松竹・蒲田をタイトルにしておきながら、舞台となるのは東映・太秦撮影所。
今では特別なことではないが、当時、メジャー映画会社の撮影所で他社作品を撮影するのは、前代未聞の珍事だったという。その辺の入り組んだ事情はさて置き、とにもかくにも何度観ても前のめりになってしまうほどの中毒性がある、味わい深い深作欣二監督作である。
愛すべきツッコミどころは数え切れないほどあるが、それを補って余りある役者陣の熱演。
銀ちゃん、ヤス、小夏……誰も彼もが愛すべきキャラクター。そして39段の階段落ちのシーンからの、ニヤリとさせられるエンディングまで、とにかく素晴らしい。
邦画洋画問わず、その後も撮影所を舞台にした作品は幾度も誕生しているが、やはり原点というべき「蒲田行進曲」は日本映画界にとって欠かすことのできない財産といえるのではないだろうか。

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大塚史貴

4.5つかのディフォルメ感満載の世界を、深作監督が更にパワーアップして…

2025年5月16日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

「蒲田行進曲」については、
映画と舞台鑑賞に加え、
その戯曲や小説版も読んだが、
この物語、本来は小夏とヤスの物語。
しかし、紀伊國屋ホールでの
風間杜夫が大人気で、
「銀ちゃんのこと」と改題の上、
風間杜夫銀ちゃん中心に
再上演されたように記憶している。

運転手付で乗る車との意味で、
「キャデラックに免許がいるか!」
(舞台ではベンツだったと記憶しているが、
映画ではビジュアル的にキャデラックに
代えたのかも知れない)や、
「餅をつくたような性格」とか
「センスがセンスすぎて、
他のセンスと釣り合わねえんじゃないか」
等のつか節が満載だった一方、
映画としてのオリジナル性が
遺憾なく発揮された
千葉・真田・志穂美が加わった
ヤスの危険な役のシーンは抱腹絶倒だった。

また、舞台での寺田屋の階段は
セットを組むのではなく、
単にシマシマ状に照射したライトの中で
ヤスが転がっていただけの記憶だが、
これもデフォルメの効かせ過ぎたかのような
この映画での長大な階段には
大変驚かされるばかり。

つか作品での登場人物は、切なく、また、
行き過ぎた人情感の持ち主ではあるものの、
ある意味、真剣で大真面目に生きる人間像が
印象的だ。
この映画でも、舞台モードを
そのまま持ち込んだかのような、
あるいは舞台以上にディフォルメ感満載で、
銀ちゃんの性格設定も更に傍若無人で、
ヤスの自虐性にも関わらず、
そこに漂う哀愁に何故か何の違和感もなく
大笑いの中でつかの世界に引き込まれた。
そして、
その銀ちゃんに翻弄されながらも、
“銀ちゃんのこと”ではなく、
ちゃんと“小夏とヤスの物語”になっている
二人の揺れる想いに涙腺が緩みっぱなしに。

小夏とヤスの結婚式の場面と
大人数の保険の受取人の設定には
若干抵抗感があったものの、
映画賛歌へ昇華させたラストシーンも含め、
全編に渡って、深作監督の演出と
つか自身による脚本とが
見事に融合している作品のように感じる。

一般の舞台劇と比較しても
特にデフォルメ満載のつかの世界を、
更にパワーアップして映像の世界に
持ち込んでも違和感なく演出出来る
深作監督の技量!
この作品は「仁義なき戦い」と並ぶ
彼の代表作ではないだろうか。

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共感した! 5件)
KENZO一級建築士事務所

3.0『太秦行進曲』なのでは?!

2025年5月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

楽しい

単純

 つかこうへい原作の舞台作品を映画化。

 新興勢力の角川事務所と大手の松竹が共同製作、舞台は東映京都撮影所と、何だかカオス気味。映画産業が斜陽化するなか、約10年前の大映ショックの余波が窺える作品。

 ロケの多くが撮影所のある京都(主に太秦近辺)で行われており、京都在住者としては見慣れた風景満載。タイトルに偽りあるのでは?!

 つかの舞台作品の常連だった平田満と風間杜夫は本作で知名度が上がり一気にブレイク。監督役の蟹江敬三は悪役中心の役柄がこの頃を境に変化。いろんな人の運命をいい意味で変えた作品だと思う。

 映画とTVの双方で頭角を現していた松坂慶子はさすがの演技力。

 ここまで名前を挙げた俳優は平田を除き、みな東京のご出身。別に京都で撮影しなくても、という気がする。

 ほかにも千葉真一や志穂美悦子、今や国際スターの真田広之が客演。若手時代の石丸謙二郎や萩原流行、当時は無名だった福本清三の姿も。

 舞台も小説版も拝見していないので憶測にすぎないかも知れないが、つかは断片的な映画界の知識だけでプロットを構築したのではという気が。
 そのせいか、銀ちゃんのモデルが中村錦之助(萬屋錦之介 錦ちゃんと呼ばれていた)という説が一部の媒体に見られる。
 冒頭でツブシ(日中にナイトシーンを撮影すること)が登場することも撮影は15時終了が原則だった中村を連想させるが、その理由は家族揃って夕食を迎えたいという彼の意向を汲んだゆえ。
 家庭的で子煩悩として知られた中村よりも、取り巻き引き連れて無茶をしでかすエピソードは東映時代の若山富三郎の方が近いかも。

 個人的には、物語の余韻を阻害するラストシーンは余計だった気がする。

 BS松竹東急にて観賞。

 自前の素晴らしい作品を抱えているんだし、金の掛かる東宝特撮シリーズとか野球中継なんてやらなくていいから、番組編成組み直して放送終了も考え直して!!
 ゴジラなんかBS12トゥエルビに任せといてギララやって。

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TRINITY:The Righthanded Devil

5.0知らない間にこんな映画が!

2025年4月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館

泣ける

笑える

幸せ

やっと映画館で見ることができたので、色々と確認できました!題字は見てすぐ分かる和田誠さん、劇伴は聞いてすぐわかる桑田佳祐の作詞作曲、歌うのは聞いてすぐわかる中村雅俊。妻・小夏の為に稼がなくては!の大部屋ヤス(平田満)のアクションシーンでは、志穂美悦子も連獅子姿の真田広之も千葉真一も確認!皆シャープで若くてかっこいい!

いろんな役者さんの台詞をほぼ暗記していた自分にびっくりした。音が一部消されて気になっていた台詞の確認もできた。ヤスのアパートから銀ちゃん(風間杜夫)が居なくなってから、小夏(松坂慶子)がヤスをなじる。前後関係から「あんた、○ク○なんじゃないの!?」と思っていたが「あんた、○○ガ○なんじゃないの?!」だった。

大部屋さんは名前を呼んでもらえない。みんな「大部屋さん」だ。ヤスは階段落ちをすると言ってから初めて名前で呼んでもらい、楽屋を与えられ役作りもさせてもらう。「勤皇の志士」も「新撰組」もよくドラマ化されるけれどなぜそこまで好まれるのだろう。「侍タイムスリッパー」も同様だ。

いずれにしても「蒲田行進曲」を映画館で見ることができて本当に幸せだった。ロビーには銀ちゃんが着ていた最初のギンギラギンのスーツの実物が飾ってあった。ヤスの大部屋仲間の萩原流行、監督役の蟹江敬三、松坂慶子のメイク・衣装変遷と色んな泣き方。全部よかった。沢山笑って泣いた。(2025.04.11.)
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面白い映画だよ!と妹が教えてくれて見たらはまってしまい、何度も何度も見ました。「戸籍は屁よりも劣るのか!」と小夏にあたるヤス、階段落ち後の「銀ちゃん、かっこいいー」のヤス=平田満の台詞と表情は、何度聞いても見ても笑って泣いてしまいます。つかこうへいの脚本と深作欣二監督による最高の映画だと思います。松坂慶子のケバい化粧も、風間杜夫の目張りバッチリ過ぎの映画メーク、あまりにわかりやすく気合いタップリでした。この映画で熊本の人吉という町を知りました。それもとても嬉しく思いました。清川虹子の演技と目にやられました。テーマ音楽も大好きです。時代劇が元気だった昔、銀幕のスターが居た時代、知らないのにひとときの夢を見させてくれました。

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talisman