学校III

劇場公開日:

解説

東京の下町にある職業訓練校に通い始めたひとりの中年女性を中心に、人生の再出発をかけてそこに集った人々の心の触れ合いを描いたヒューマン・ドラマ。監督は「虹をつかむ男南国奮斗篇」の山田洋次。脚本は、山田監督自身による原作と鶴島緋沙子の『トミーの夕陽』を基に、「釣りバカ日誌10」の朝間義隆と山田監督が共同執筆。撮影を「てなもんや商社」の長沼六男が担当している。主演は「GONIN2」の大竹しのぶと「あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE」の小林稔侍。日本テレビ放送網開局45年記念作品。キネマ旬報日本映画ベスト6位。

1998年製作/133分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1998年10月17日

ストーリー

10年程前に夫を過労死で亡くして以来、小島紗和子は自閉症の息子・トミーとふたり暮らしをしている。ところがある日突然、彼女はそれまで勤めていた事務所を不況の影響で解雇されてしまう。一方、大手証券会社の部長だった高野周吉も会社からのリストラ勧告に憤慨し、自ら辞職。半年後、ふたりはある教室で机を並べていた。そこは、リストラされたサラリーマンや倒産した町工場の社長、経営に失敗した喫茶店のマスターなど、様々な人が人生の再出発をかけて、ボイラー技師の資格を取る為に集まった都立の職業訓練校であった。共に学んでいくうち、次第に仲間意識が芽生え始める紗和子たち。しかし、高野だけは周りに馴染めずにいた。彼には、大手の会社で何人もの部下を使ってきた誇りがあり、また失業による家族との別居という問題があったのだ。だがある日、高野は教科書を忘れて帰った紗和子のために、家までそれを届けてくれ、彼の意外な優しさを知る紗和子。それから彼女は、遅刻の多い高野にモーニングコールをかけたり、夏休みには友人たちと一緒に海水浴へ誘ったりと、彼と親しくなっていく。ある日、トミーが交通事故に遭い入院する。看病と学業の両立の難しさから退校を考える紗和子だが、高野は励まし、力になる。やがてトミーも退院し、いよいよ試験の日がやってくる。結果は全員合格だった。卒業式の日、紗和子は高野とふたりきりでお祝いをしようとするが、高野は式に現れなかった。高野の妻が事業の失敗から自殺を図って、入院していたのだ。彼にほのかな想いを抱いていた紗和子は、それを自分の胸にそっと封じ込める。月日はめぐり、ビルの管理会社に就職した紗和子は、充実した日々を送っていた。しかしある日、乳がんを発症してしまう。手術に臨む彼女を、かつてのクラスメイトが見舞いに来る。そこには高野の姿もあった。彼の励ましに勇気づけられた紗和子は、手術室へ入っていくのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第22回 日本アカデミー賞(1999年)

ノミネート

作品賞  
監督賞 山田洋次
脚本賞 山田洋次 朝間義隆
主演女優賞 大竹しのぶ
助演女優賞 余貴美子
新人俳優賞 黒田勇樹
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映画レビュー

3.0感想が難しい

2024年2月21日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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すなぎも

4.5職業訓練校

2023年12月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

笑える

知的

そこにも友情が生まれ
かけがえのない出会いがある

職を失った中年男女が集う局
厳しい現実に負けるなと励ます
人生再出発への応援歌

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ほんのり

4.0社会で育てる

2021年3月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

シングルマザーで働きながら子供を育てるのは大変なのに、息子に障害があると更に大変です。日本では子供の事は全て親、特に母親の責任になるという特殊な社会なので、子供を持つハードルが上がりますよね。私は独身ですが、シングルマザーの大変さが想像できます。

山田洋次監督は常に社会の片隅にいる人、さわこやトミーの様な人をクローズアップする監督です。確かに、違いはあれどこの二人に似たような親子は少なくないはず。長引く不況や東日本大震災で、生活に困っている人は本作公開時よりも更に増えたはず。こういう人達を自己責任と突き放すのではなく、社会で何とかできないのか?と問われた気がします。

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ミカ

5.0本作学校Ⅲと1991年の作品息子は表裏一体なのかもしれません

2020年4月16日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

本作は1998年公開です
そして息子は1991年公開です
バブル最高の株価をつけたのは1991年早春の事でした
息子のラストシーンはその年の早春です

一方、本作学校Ⅲが公開された1998年はバブル崩壊が遂に大崩壊に至った年です
前年の1997年には一流の大企業であった山一証券や、北海道を代表していた北海道拓殖銀行が経営破綻し、1998年には日本長期信用銀行までが国有化されるに至っています

つまり息子はバブル絶頂期に至る日本の良い時代の人生を扱っています
そして本作学校Ⅲではバブル崩壊後の人生とは何かを扱っているのだと思います

リストラ、過労死、シングルマザー、自閉症児、不況下の就職の困難さなどなど
超重い事柄がてんこ盛りに登場します
冒頭から解雇通告シーン二連発の先制攻撃を食らってしまい、それだけでたじろいでしまいます
それらはバブル崩壊を象徴してこの時代の人生を象徴しているのです
誰しもどれかの不幸に該当して転げ落ちていく日本の姿を象徴しているのです

懸命にバブル崩壊を乗り越えて、安定した生活をつかもうと登場人物の全員が苦闘しています
観ていて胃が痛むほどです

特に小林稔侍が演じるリストラされた元大企業の部長の姿は日本の姿そのものです
プライドが高いまま、職業訓練校にスーツで現れ作業服を着るのが屈辱のなです
なんで俺が掃除なんかしなければならないのかと怒っているのです
伝手を頼って再就職を試みるも居留守まで使われる哀れなシーンはこれでもかと迫ってくるものがあります

大竹しのぶはそれらすべてのしわ寄せが寄せられた存在です
それでも明るく懸命にいきています

この二人が自然と片寄せあって生き延びよう
辛い心を慰めあいたいと互いに引き合ってしまうことは当たり前のことです

その中年の淡い恋愛も別れとなり、さらなる不幸に突き進みます

バブル崩壊の痛手はそれからも続いて、失われた30年とも言われています
アベノミクスとオリンピック景気でそれも終わること微かな希望が見えた時、このコロナショックです
正に大竹しのぶか手術室に入るシーンが現在です

本作はバブル崩壊の実象を活写して、その先の日本の運命まで見通した名作だと思います

彼女を見舞いにくるのは学校のクラスメート達
みな団塊の世代です
彼女は団塊の世代の下の世代です
その世代は団塊世代のつけを払い、散らかした後始末をし、むちゃくちゃになった物事の辻褄をなんとか合わせて来た世代です

そしてその下はもう自閉症児の世代なのかも知れないのです

団塊世代はそれぞれ顔を示しあい病院から散会していきます
元部長だった男だけが手術室の待合いベンチでその自閉症児と手術が終わるのを待っているのです
それがバブル崩壊後の日本の姿なのです

紛れもない名作です
大竹しのぶの演技の凄さは筆舌に尽くせません
号泣しました

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