海軍特別年少兵

劇場公開日:

解説

太平洋戦争末期海軍史上最年少の少年兵たちが、祖国の防人として、祖国のためと信じ、疑うこともなく、また疑うこともゆるされず、殉死していった。その少年たちの魂を描く。脚本は「あゝ声なき友」の鈴木尚之、監督も同作の今井正、撮影は「出所祝い」の岡崎宏三がそれぞれ担当。

1972年製作/127分/日本
原題:Eternal Cause
配給:東宝
劇場公開日:1972年8月12日

ストーリー

太平洋戦争末期の昭和二十年二月、米軍は硫黄島に怒濤の如く押し寄せた。戦闘は壮絶を極め、日本軍守備隊の二万三千余のほとんどが壊滅した。その中に三千八百名にのぼる少年達が含まれていた。彼等は、「海軍特別年少兵」と呼ばれた。日本全土が戦意昂揚にわき上る昭和十八年六月、彼等少年達は武山海兵団に入団した。年令、わずか十四歳であった。海兵団での生活は想像を絶する程厳しい規律、肉体の限界を越す訓練、いかなる私情もさしはさむ余地のない生活がつづいた。その中にあって教官の吉永中尉は、ただ一人「愛の教育」を説いており対照的に「力の教育」を信じて疑うことのなかった工藤上曹とは常に対立していた。入団以来二ヵ月ぶりに少年達に肉親との面会が許された。しかし面会をせず、工藤を相手に激しい銃剣術にうちこむ二人の少年がいた。橋本治と宮本平太である。人前で肉親に会うことに抵抗とためらいを感じそれに耐えていたのである。治の姉ぎんは娼婦でいわば日陰者、平太の父吾市も非国民のそしりを受ける社会主義者であった。昭和十九年彼等年少兵は野外演習を行ない、期待に応えて成果をあげた。ところが最終日に林拓二が天皇から授かっているとされている帯剣を紛失してしまった。工藤の努力で帯剣を見つけた時には既に遅く、責任を感じ絶望した拓二は自殺してしまった。工藤はたった一本の帯剣が少年の命を奪ってしまうような軍隊に絶望し自ら志願して前戦へと転属していった。そのころ脱走兵と駈け落ちしたぎんが逮捕された。今まで社会の底辺をはいずりまわり生きて来た者同志がはじめて心から触れ合い、新しい生活を目ざそうとしたのであった。昭和十九年九月三十日年少兵達に出動の命が下った。硫黄島守備隊として赴いた彼等に米軍は容赦ない砲弾をあびせた。再会した工藤上曹や吉永中尉は少年達を救おうと努力したが失敗に終った。壮絶な肉弾戦がくりかえされ、死んでいった少年達。又そうするしか道がないと教えこまれ、自から死を選んだ少年達。それは歴史の一コマとしてみるには余りにも重大な出来事であった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5追い詰められた国体と教育で洗脳された少年たちの残酷な付合

2020年10月20日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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Gustav

4.5年少兵達が浮かばれる為に

2020年10月6日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

エヴァンゲリオンの子供達が14歳である理由は、本作の子供達が14歳で海兵団に入隊するからではないでしょうか?
自分にはそうとしか思えません
庵野秀明監督は他作品で沖縄決戦のオマージュを入れているくらいですから

本作の今井正監督はご存知の通り共産党員です
ですから本人の思想信条が当然本作に反映されています

こんな子供達まで戦争に駆り立てた戦前、戦中の軍国主義国家を非難する事がテーマです
その演出力は高く見応えはあります
それ故に、簡単にその様に洗脳されるかも知れません

とはいえ本作から既に50年近くもの年月が経ちました
21世紀の視点から本作を観ると一体どう感じるものなのでしょうか?

かっての日本は帝国主義で軍国主義国家だから?
カンボジアの中国共産党の手先となった毛沢東主義者のポル・ポト派は本作よりも年少の子供達を兵士として戦わせことを私達は知っています
キリングフィールドは中国の文化大革命を手本にして、子供達を手先にして起こされたものだと私達は知っています
それも子供達を親から強制的に引き離して教育したのです
そこには罰直主義なぞ生温く感じるほどの世界があったことを私達は知っているのです

共産主義国家も、戦前の大日本帝国以上の全体主義かつ軍国主義の強権独裁国家になりうる
むしろ帝国主義的行動を起こすことを知っています
むしろそうなった国の方が殆どであったことを、私達は知っているのです

共産主義国家が平和勢力だなんて、大笑いする程の嘘ぱちであったことは明らかなのです

21世紀に生きる私達は、本作の今井正監督が提示しようとしたテーマを、このように相対的に観る事ができるのです

そして21世紀の現在、我が国の隣の大陸にある
共産主義国家の大国は、帝国主義的で軍事独裁国家の正体をいよいよ現して来ているではありませんか

香港の自由を求める人の叫びは、本作の三国連太郎が演じた父親とどこが違うのですか?

大日本帝国の亡霊が乗り移っているとしかおもえません

私達が日本人が先の戦争を反省するなら、何をなすべきでしょうか?
それは大日本帝国の亡霊を打ち払うことです
その亡霊が他国で蘇ろうとするなら、亡霊と戦い成仏させてやることです

それこそが、この年少兵達が浮かばれることだと思います
21世紀の日本人がするべき責任の取り方はそれだと思います
その責任を果たしてこそ、年少兵達は浮かばれると思います

海軍特年兵之碑は、東京原宿の東郷神社の鳥居に入る手前にあるといいます
全く知りませんでした
今度近くを通りかかったなら、手を合わせたいと思います

この碑が建立されたのは1971年5月のこと
高松宮殿下妃の御台臨での除幕式が行われたそうです
本作公開は1972年8月
この碑がきっかけで企画されたのかも知れません

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あき240

3.5罰直主義の是非

2020年8月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

小学生の時に観て「何これ特撮シーンも無いしつまらんなあ」と思った覚えがある。ただ恩賜の短剣を無くして自殺してしまうところはかなり衝撃だった。(どこかで見た顔だと思ったら少年時代の中村梅雀さんだったんですね)。いま改めて観ると組織のあり方など考えさせられることが多く、東宝8.15シリーズではむしろ上位評価と言えるかもしれない。罰直主義の是非が議論されるが、人権的なことはともかく、何の基礎も無い寄せ集め集団を一刻も早く使えるチームにするには全体責任と緊張感を与え続けることが最も効率的なのかもしれん。「愛と青春の旅立ち』を見る限りアメリカも同様のようだし(あっちは恋愛オプションがついてるけどね)。ここまで募集年齢を下げたのは戦局悪化の影響もあるだろうが、つい7、80年前には、閉ざされた将来を変えるには戦死リスクなど厭わず軍隊に志願するしか無いほど壮絶な貧富の差があったことに改めて暗澹とした。

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あっきー

4.0東宝8.15シリーズ最後の作品

2020年8月22日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 武山海兵団に入隊してきたのは14歳の少年達。みな純粋で分別のつかない少年兵であったが、座学と厳しい教練を乗り越え、最後には硫黄島への実戦に赴く。

 鬼の工藤(地井武男)教班長と仏の吉永(佐々木勝彦)中尉。教育においても、まだ国民学校の感覚が残ってる少年兵たちにどう接するべきか二人は意見が食い違う。“愛か、力か”と異なる教育方針。しかし鬼であるはずの工藤も彼らが貧しい家庭の者ばかりだと知り、一人の自殺者を出したことで苦悩するという展開。

 各家庭の様子も少ないものの描き出され、親を助けるため、“アカ”と呼ばれる父親の汚名返上に身を捧げる者、姉と二人ほとんど孤児である者、将校・下士官のように裕福じゃない家庭ばかりだ。

 貧乏人は税金ばかり取られ、国からは何もしてもらってない。という言葉に「日本軍がお前らを守っている」という憲兵の言葉。何だ、今の世と変わらないじゃないか!学徒動員と同じく、少年まで駆り出す敗戦濃厚な太平洋戦争末期。国のため、名誉のため、金のためと、とにかく少年達は戦争に向かう。

 戦場でのリアルさは感じられないものの、少年たちが兵士になるしかなかった時代を思うと胸が痛む。工藤は最後に突撃させないように匿おうとするが、少年たちは教え通りに玉砕の道を選ぶのだった。教師2人の思いやり、さらに三国廉太郎と小川真由美の好演が光る。

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kossy
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