浮雲

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説・あらすじ

名匠・成瀬巳喜男が林芙美子の同名小説を映画化し、日本映画を代表する1作として語り継がれる名作メロドラマ。戦後の荒廃した日本を舞台に、腐れ縁の男女の愛の顛末を描く。戦時下の昭和18年。タイピストとしてインドシナへ渡った幸田ゆき子は、技師の富岡兼吾と出会う。富岡には日本に残してきた妻がいたが、2人は恋に落ちる。終戦後、富岡はゆき子に妻との離婚を約束して日本へ戻る。しかし遅れて帰国したゆき子が東京の富岡の家を訪ねると、富岡はいまだに妻と暮らしていた。そんな富岡に失望したゆき子は別れを決意するが、結局離れることはできず、2人は不倫の関係をずるずると続けていく。ヒロイン・ゆき子を高峰秀子、相手役の富岡を森雅之がそれぞれ好演。

1955年製作/124分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1955年1月15日

スタッフ・キャスト

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映画評論

映画レビュー

5.0麻薬映画

2025年2月15日
PCから投稿

中毒性のある作品です。
あきれ果てたバカ男とバカ女の腐れ縁のお話ですが、男と女なんて所詮こんなものっていう刹那的な底なし沼感が「俺に撮れないシャシン」と小津親分に言わしめた傑作です。
唯一無比の倦怠感と投げやり感を描き出した剛腕演出と、それに完璧に応えた森、デコ両先輩の圧倒的な演技力、好きな人には麻薬です。
二人のバカっぷりに腹立たしさを感じるような感想も、一方では正常です。

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越後屋

男と言う生き物の狡さ

2025年1月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 僕がこれまで観た高峰さんの映画と云うのは、『二十四の瞳』や『喜びも悲しみも幾年月』、『カルメン故郷へ帰る』、『名もなく貧しく美しく』と云った比較的前向きな映画ばかりです。木下恵介、松山善三と云った監督のカラーなのでしょう。

 でも、高峰さんを支えたもう一人の監督・成瀬巳喜男さんとの組み合わせの作品を観るのは実は今回が初めてでした。デジタル・リマスタリングによって60年前の作品がスクリーンに復活です。林芙美子さんの小説の映画化作品で、僕は原作を読んだことがありませんでしたが、それまで僕が抱いていた高峰さんのイメージと林芙美子さんの『放浪記』のイメージから勝手に「前向きに生きる女の一代記」と思い込んでいました。

 ところが、全く違っていました。前向きな姿勢も未来への明るさも何もない陰々滅々具合に腰を抜かしました。

 戦争前後の混沌とした世相を時代背景に、妻が居ながら次々と女を乗り替える不実な男と、何度も裏切られながらも結局はその男を追ってしまう女のお話です。と書くと甚だしく古臭い話に思えますよね。「妻とは別れるから」なんて言う男の言い訳は、おそらくこの時代でだって使い古された台詞だったに違いありません。

 でも、お話が進んで行くと何だか段々身につまされて来るのです。ここに描かれるているのは「不実な男」なのではなく「男と言う生き物の不実」である事に徐々に気付かされて来るのです。

 「都合の悪いことは暫く見えない振りをして、女にそこを突かれると少し面倒くさそうな視線を向け、更に責められると『どうせ僕は弱くてバカな男です』と言う看板を押し立てて謝るでもなく開き直るでもなくコソコソと逃げて行く」なんて云うのは男女の世界では様々に形を変えながらも常に見られる構図ではないでしょうか。

 作品で描かれるのは浮気だ妊娠だと云った生々しい世界ですが、その奥に黒々と広がる「男としてのいい加減さ」と云う普遍性を責められている気がして僕は段々息苦しくなってしまいました。

 き、きつい、きつい映画だぁ~。60年も前に、ここまでを見据えてフィルムに残されていたのだということに改めて驚きました。

 この日、もう一つまずかったのは、これを妻と観た事でした。映画館を出てから、彼女から

 「もしかして、自分はあの男とは違うと思っている訳ではないでしょうね」

と、メガトン級の一言が放たれました。

 「い、いや、僕は浮気なんてしたことないし・・」

と言いかけて、ここはひとまず黙っておいた方が得策と、またまた「男のずるさ」を発揮して俯いて歩き続けたのでした。

    2017/3/8 鑑賞

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La Strada

4.5高峰秀子が話す知らない日本語…「きぶっせ」、「足だまり」

2024年12月31日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

単純

1955(昭和30)年公開、東宝。

【監督】:成瀬巳喜男
【脚本】:水木洋子
【原作】:林芙美子

原作は、放浪の作家、と呼ばれ47歳の若さで急逝した林芙美子が亡くなる直前に上梓した。

水木洋子は、今井正監督の『ひめゆりの塔』、
成瀬巳喜男監督の『おかあさん』、『あにいもうと』
などの脚本も手掛け、菊池寛賞の戦後第1回目を受賞。
本作は、菊池寛賞受賞後の作品。

主な配役
【幸田ゆき子】:高峰秀子
【富岡兼吾】:森雅之
【おせい】:岡田茉莉子
【伊庭杉夫】:山形勲
【富岡の妻・邦子】:中北千枝子
【向井清吉】:加東大介

1.ちょっとだけ?共感共鳴しちゃうオトナの恋の話
◆別れたほうが良いのは分かってるのに、別れられない
◆大キライだけど、やっぱり好き
◆ケンカしても、しばらくすると会いたくなる、

富岡(森雅之)にどんなにひどい扱いをされても、
磁石のように吸い寄せられていくゆき子(高峰秀子)。
そんな男女の絶望的な恋愛?物語。

2.高峰秀子はやはりスゴイ女優さんだ!
Wikipediaによると、
松田優作と吉永小百合による再映画化も企画されたが、
吉永小百合が、「大先輩・高峰秀子の代表作を再演なんてできない」と断ったためお蔵入りになったらしい。

撮影時31歳の高峰秀子は、22歳からのゆき子を演じた。
『張込み』は3年後。
30歳前半で、あの陰影と色気を含んだ演技がなぜできるのかわからない。

すごい、としか言えない。
それくらい、作品と登場人物に感情移入してしまう。

高峰秀子は、突き抜けた美形というわけではない。
顔だけで言えば、私は酒井和歌子さんがタイプだ。
だが、その声、スタイル、風情、全体があわさってひとつの芸術作品だ。

3.戦後間もない昭和の空気感
公開が昭和30年だから、戦後10年しかたっていない。
わたしにすら分からない言葉も出てくる。

◆足だまり…足を止める場所、根拠地
◆きぶっせ…気塞い(きぶさい)、気詰まりなようす
◆エーテル…アリストテレスが提唱した、天体を構成する「第五元素」

4.まとめ
脚本・構成の良し悪しを言う気はない。

高峰秀子、イングリッド・バーグマン、
あの時代の、あの女優だけが醸し出す陰影。
退廃美。

☆4.5

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Haihai

3.5願いかなって

2024年9月27日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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りか