浮雲

ALLTIME BEST

劇場公開日:1955年1月15日

解説・あらすじ

名匠・成瀬巳喜男が林芙美子の同名小説を映画化し、日本映画を代表する1作として語り継がれる名作メロドラマ。戦後の荒廃した日本を舞台に、腐れ縁の男女の愛の顛末を描く。戦時下の昭和18年。タイピストとしてインドシナへ渡った幸田ゆき子は、技師の富岡兼吾と出会う。富岡には日本に残してきた妻がいたが、2人は恋に落ちる。終戦後、富岡はゆき子に妻との離婚を約束して日本へ戻る。しかし遅れて帰国したゆき子が東京の富岡の家を訪ねると、富岡はいまだに妻と暮らしていた。そんな富岡に失望したゆき子は別れを決意するが、結局離れることはできず、2人は不倫の関係をずるずると続けていく。ヒロイン・ゆき子を高峰秀子、相手役の富岡を森雅之がそれぞれ好演。

1955年製作/124分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1955年1月15日

スタッフ・キャスト

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映画評論

映画レビュー

3.5 【”零落。そして、花の命はみじかくて、苦しきことのみ多かりき。”今作は、戦中戦後の許されぬ男女の関係性の変遷を陰隠滅滅と描いた作品である。只管に男女の不可思議な愛の形を描いた作品でもある。】

2025年9月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

知的

ー 昭和の名匠と謳われる成瀬巳喜男監督は、その作品の”遣る瀬無い内容”により、”ヤルセナキオ”と呼ばれたそうであるが、今作を観ると正にその言葉を実感するのである。-

■戦時中、インドシナで妻帯者である富岡(森雅之)と出会い、愛しあった若く美しく才気煥発なゆき子(高峰秀子)。
 終戦したら、妻と別れるという富岡の言葉を信じ、彼のもとを訪れたゆき子だったが、富岡はウジウジとはっきりとした態度を見せなかった。
 途方に暮れたゆき子は外国人の愛人となり、富岡のもとを去る。
 それでも、腐れ縁の二人は、一緒に伊香保温泉に行ったりするのである。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・林芙美子による原作も相当に陰隠滅滅としているが、今作もそれ以上である。と共に、時折、妻には不貞を詰られ、ゆき子にも煮え切らない態度を取り続ける富岡をぶん殴りたくなる映画である。

・今作を観ていると、富岡とゆき子は、いわゆる腐れ縁という関係で、二人は戦中にインドシネであってから、敗戦した日本で零落した姿で会っても、その関係を続けるのである。
 そこには、倫理観というモノは存在しない。

・二人と関係する伊香保温泉の主人も、妻を絞殺したという記事が新聞に載るし、”もう、どんだけ陰隠滅滅としているのだ!”と、夜中に鑑賞中に叫びたくなるのだが、何故か見てしまうのである。

・ゆき子を演じた高峰秀子さんは、ご存じの通り昭和の名女優であるが、今作は零落したパンパンをはすっぱな演技で見せている。
 そして、彼女は富岡に裏切られながらも、只管に彼について行くのである。

<富岡の妻は病死し、そして、ゆき子も胸に病を抱え、二人は旅に出るのだが、雨が月に35日振るという屋久島に宿を取るのである。
 富岡が居ない時に、ゆき子は一人息を引き取り、その亡骸を抱きしめて富岡は号泣するのである。
 ゆき子の死に顔のアップの後に縦書きで出るテロップが、マア凄いのである。
 ”花の命はみじかくて、苦しきことのみ多かりき。”
 今作は、戦中戦後の許されぬ男女の関係性の変遷を陰隠滅滅と描いた作品なのであり、只管に男女の不可思議な愛の形を描いた作品でもある。>

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NOBU

3.5 内容はどうでも

2025年9月1日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

単純

ストーリーは浮気男の話で何とも言えないが、昭和の建物、服装、舗装されていない道、木製の電柱、電話、電報、店、看板、車、全てが貴重でその佇まいや雰囲気を感じられるだけで観る価値のある映画です。

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まるりん

3.0 クズ男と引きずり女のやるせない人生劇場

2025年8月31日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

驚く

複雑な男女の心情を視線と表情、そしてランプやロウソクの薄明かり陰影で表現する見事な俳優陣!主演の二人だけでなく岡田茉莉子さん加東大介さん山形勲さんというキャスティングが抜群に素晴らしく、他の役者さんだったら流石の成瀬監督でも、ただの泥沼恋愛映画になったかもしれません。
公開当時この脚本は相当刺激的だったでしょうねっ。

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映爺

3.0 切れない縁

2025年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

 1943年、日本が進駐していたフランス領インドシナ(仏印)。タイピストのゆき子は、農林省技師富岡と出会い、彼には内地に妻がいたが二人は親密になる。終戦後、ゆき子が東京の富岡を訪ねると、彼は離婚しておらず、失望。別れを決意するも、二人はずるずると。
 お互いに別れようとするも、切れない縁。そして、まるでどこかに転落していくような展開。もし切れていたら、別な明るい未来があったかも、そう思わずにはいられませんでした。その微妙な機微を、二人の役者が絶妙に演じていました。

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sironabe