居酒屋兆治
劇場公開日:1983年11月12日
解説
函館の街を舞台に小さな居酒屋を営む男と初恋の女とのすれちがう想い、その店に集まる人々の人生模様を描く。山口瞳原作の同名小説の映画化で脚本は「未完の対局」の大野靖子、監督は「駅/STATION」の降旗康男、撮影は、「小説吉田学校」の木村大作がそれぞれ担当。
1983年製作/125分/日本
原題または英題:Love
配給:東宝
劇場公開日:1983年11月12日
ストーリー
兆治こと藤野伝吉(高倉健)は函館の街はずれで、女房の茂子(加藤登紀子)と「兆治」という名の居酒屋を営んでいた。兆治は勤めていた造船所でオイルショックの時、出世と引き換えに同僚社員の首切り役を命じられたことに反発して会社を辞めていた。寡黙で実直ながら気持ちが曲げられず無器用な兆治であったが、店は繁盛しており、兆治の同級生でバッテリーを組んだ無二の親友岩下(田中邦衛)をはじめ、元の会社の同僚有田やその部下の越智、近所の一年先輩で酒癖の悪いタクシー会社経営者河原(伊丹十三)たちが毎晩のように足を運んで賑わっていた。「兆治」の向いの小料理屋「若草」も陽気な峰子(ちあきなおみ)がカラオケで客を集めていた。兆治は肩を壊して野球をあきらめた頃、地元青年会で知り合った年下の恋人さよ(大原麗子)との苦い思い出があった。器量良しのさよに持ち上がった、旧家の牧場主神谷久太郎(左とん平)との縁談に、若く貧しかった兆治はさよの幸せを願って黙って身を引いたのであった。しかしさよは、今でも兆治を想いつづけ、思い余って若い男と駆け落ちをしたこともある。そんなある夜、さよの不注意から神谷牧場が火事に見舞われ、さよは街から姿を消していった。そんな事件も落ち着いた頃、仕込みにかかる兆治の背後にさよが現われ、「あんたが悪いのよ」と言い残して去った。さよの消息もはっきりしないまま、何処か時代に取り残される場末の小さな居酒屋「兆治」とそこに集う市井の人々の哀感こもるエピソードが繰り返されていく……。そんな中、常連客の秋本の妻が死んで、その顛末などで悪口を言う河原に我慢できずに殴った兆治は警察に留置される。なぜか調べはさよとの関係に集中している。警察は兆治とさよの関係から放火事件を疑っていたのだ。釈放されひさびさに店に戻った兆治を茂子と岩下が笑顔で迎えた。店の再開を聞きつけてやって来た峰子からさよをすすき野で見た人が居るとの話を聞く。昔のさよの写真を引き伸ばし、すすき野の繁華街を訪ね回る兆治は造船所時代の後輩で店の客の越智と偶然にあう。越智は兆治にサリーというホステスを知ってるかと聞く。越智はサリーに結婚を申し込んだという。サリーこそ失踪してすすき野のキャバレーホステスに身を落としたさよだった。兆治はさよの部屋を訪ねる。そこには酒で身体を病み、過去も未来も捨てただ死を待つかのようなさよが居た。