劇場公開日 2008年6月7日

ザ・マジックアワー : 映画評論・批評

2008年6月3日更新

2008年6月7日より日劇3ほかにてロードショー

名作旧作へのオマージュがテンコ盛りのエネルギッシュな作品

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ホテルの内幕を描いた「THE 有頂天ホテル」から2年、三谷幸喜監督・脚本の新作は、架空の港町を舞台に、売れない俳優が映画撮影のためとだまされて、ギャングの抗争に巻き込まれていくコンゲーム風のコメディだ。主要キャストだけで10人、ゲスト俳優を入れると16人にもなる群像ドラマで、テンポのいい演出と予想外の展開で最後までハラハラさせる。売れっ子の佐藤浩市が売れない俳優、妻夫木聡がギャングの子分、という意外なキャスティング。ことに実力派の佐藤がわざとヘタに演じる主人公のおおげさな芝居が見もので、ナイフをなめながら西田敏行の前ですごむシーンは笑えた。

これは映画についての映画でもあって、小学生の時から映画マニアの三谷は、名作旧作のオマージュをテンコ盛りにしている。劇中映画として登場するのは、「カサブランカ」をパクッた「暗黒街の用心棒」、故市川崑監督の「黒い十人の女」をもらった「黒い101人の女」では、生前の市川監督の演出ぶりが見られる。深津絵里が三日月に乗って歌うのはウッディ・アレン監督の「ギター弾きの恋」で、曲はショーン・ペンがサマンサ・モートンに歌った「アイム・フォーエバー・ブローイング・バブルス」など、まだまだある。ネタ元が渋いというかマニアックで、観客はどのくらいわかるのだろうという疑問もある。そんな心配はあってもビリー・ワイルダーを敬愛する三谷監督は、2時間16分をしっかり楽しませる。エネルギッシュで映画愛にあふれた作品に仕上がっている。

おかむら良

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