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ピアニストを目指す主人公の少年が田舎に転校、少年カイに出会う。
その学校の音楽教師は元天才ピアニストで、事故で夢立たれた人だった。
この先生が現役時代特注したピアノが経緯あって森に捨てられていた。
主人公も先生もその音を出すことは出来ないのに、カイにはそれが出来た。
先生はその才能を知り、カイを自分のもとで育ててコンクールに出す。
主人公も優れたピアノ教師を探していたが、この先生に断られていた。
が、嫉妬する自分に気付きながらもカイの才能を理解し後押しする。
こうしてコンクール当日、既に全国的に有名な主人公は高い演奏力を披露。
一方カイは最初は緊張もあって単に技術が高いだけの演奏をしていたが、
途中で開き直って森にいる時の気持ちで自分独自のオリジナル演奏をする。
観衆はその素質に酔いしれたが、結果は落選。
コンクールという枠には評価基準があり、採点しようがないのだった。
カイに日本は狭すぎる、と世界的にピアニストに育てることを教師は心に誓う。
やがて主人公は都会の学校へ再び転校することになりカイと別れる。
互いに言葉は多くないが、認め合った者同士の爽やかな別れだった。
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いつもながらおれは単純な感動ものよりも、
能力ある奴がその力を発揮して人を助けたり感動させるシーンに弱い。
カイという少年はまさしく型破りな天才で、少年時代のおれに近い。
主人公は真面目で周囲の期待に応えざるを得ない秀才、今のおれに近い。
そんなことを感じるのはきっと私だけはないだろう。
誰でも生きていく中でがんじがらめになり、年齢と共に後者になりがち。
でも音楽という、感性が全ての世界では特に、前者のままの方が有利だろう。
そのためには親が水商売のカイのように、自由奔放な教育の方が良い。
主人公は親から「さん」付けで呼ばれたり、重圧につぶされそうな毎日。
そして本人もカイにはかなわないと自覚しており、どこか物悲しい。
コンクールを通して主人公は、人を感動させる演奏がしたいと感じる。
それに対する先生の一言「君はもっと自分の演奏を好きになった方が良い」。
うーん、身につまされるねえ。
社会のルールや義務に縛られて、自分の思うように生きるのって難しい。
たとえ子供でも、親が有名ピアニストなら同じように感じるだろう。
元前者で今後者のおれは、主人公の嫉妬心もよく理解できる。
だから主人公よ、自分に負けずに立派なピアニストになってくれよ!