わが青春に悔なし

劇場公開日:

解説・あらすじ

戦前の京大・滝川事件と戦中のゾルゲ・スパイ事件のふたつをモチーフに、ひとりの女性の反戦活動を描いたドラマ。“永遠の処女”原節子が芯の強いヒロインを好演。大学教授の一人娘・幸枝は学生たちのマドンナだった。野毛と糸川も幸枝に思いを寄せるライバルだが、野毛は反戦運動に身を投じ、糸川は取り締まる側の検事にと正反対の道を選ぶ。幸枝は信念を持って行動する野毛に惹かれ結婚するが……。ファシズムの吹き荒れる時代、自ら信じる道を強く生きる女性の姿を謳い上げたドラマ。

1946年製作/110分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1946年10月29日

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映画レビュー

4.5「どう生きるべきか?」という不滅の問いに、原節子の顔が答える

2025年5月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

戦後第一作として制作された本作は、黒澤明が一貫して問い続けたテーマ、「人はいかに生きるべきか?」への一つの答えを提示している。1930年代の日本、思想弾圧の嵐が吹き荒れるなか、主人公・幸枝(原節子)は、時代に翻弄されながらも、自己の生き方を模索し、そして選び取っていく。

前半は、政治的理想や自由主義、ファシズムへの抵抗といった社会思想的テーマが前景化し、どこか観念的で抽象度が高く、感情移入しづらい構成になっている。しかし、中盤以降、夫・野毛(藤田進)が国家によってスパイとされ命を落とし、その家族も連座的に社会から排斥されると、物語は一気に観念から現実へと移行する。

農村に身を置き、家族を支えることを選んだ幸枝の姿に、かつての『一番美しく』の自己犠牲的なヒロイン像が重なるが、ここでは国家のためではなく、「人としての尊厳」を守るために働く姿が描かれている。その変化が本作の核心であり、黒澤が戦後において求めた(GHQの思想統制の影響があるにせよ)新しい生の指針でもある。

特筆すべきは、原節子の鬼気迫る演技だ。苦悩と孤独をそのまま写し取ったかのようなクローズアップの連続は、言葉を超えて観客の内面に訴えかける。黒澤が信じた「顔の力」が、この映画では思想そのものを語る媒体となっている。原節子の顔は、怒り、悲しみ、信念、愛情、そして生の意志をすべて刻みつけており、観る者はその一つ一つに心を打たれる。

また、物語の舞台が都市から農村へと移行する構造は、『七人の侍』へとつながる予兆を感じさせる。田んぼや土に人間の生活の基盤を見出す視線は、やがて黒澤映画が繰り返し描く「大地とともに生きる人間」像へと結実していく。

繰り返し出てくる「省みて悔いのない生活」という言葉が意味するのは、「正しいことをしたから悔いがない」ではなく、どんなに辛く苦しい現実であっても、自らの信念に従い、懸命に生きたことそのものに悔いがない、という生の覚悟なのだろう。

86点

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neonrg

4.5タイトルなし

2023年7月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

原節子がいい。
蔑視の視線を写すシーンとかいい。
省みて悔いのない生活。
敗戦直後といえばしょうがないかも。でも、ちょっとベタすぎか。

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えみり

5.0もし、次の戦争があるなら、それから…

2023年5月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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777

4.0原節子が素晴らしい

2020年10月26日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

GHQ検閲下で作られた作品。ゾルゲ事件を基に作られているが、当のアメリカではこの映画の公開のすぐ後に「赤狩り」が始まる…プロパガンダなんてろくでもないね。

しかしやはり黒澤映画。
ダイナミックな演出。ストレートな表現。ポイントはちゃんとおさえていて映画として申し分ない面白さ。

そして原節子。黒澤映画に出演したときの彼女にはいつも驚かされる。前半の良い家柄のご令嬢から後半の百姓まで、同一人物とは思えない役の入り込み。
自我に目覚め、生きることを噛み締める女性像を好演。

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柴左近

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