30年程前にアテネフランセ文化センターでこの作品を観たのですがオープニングのギター弾き語り(曲もいい)シーン以外どんなストーリーだったか思い出せません。今回見直したのですが始まりがS・ポーター「大列車強盗」の焼き直しでないか!?あぁ、これから襲撃犯を追いつめていくのか・・・どことなくJ・フォード「捜索者」を想起しましたが見事に裏切られました。
えぇっ、こんなんあり!?
で、誰が裏切り者なんだよ!?
この作品はH・ホークスの遺作なのに評論家が選ぶ70年代映画ベストには除外される始末。ホークスの「赤い河」や「リオ・ブラボー」は絶賛するのでしょうが、これはスルー・・・。同時代に作られた西部劇はS・ペキンパー「ワイルド・バンチ」にJ・ロイヒル「明日に向かって撃て」、ヨーロッパの方ではS・レオーネ「ウェスタン」。メジャー映画が衰退するなかでニューシネマが台頭する時代の渦に巻き込まれた感があります。
脚本のリイ・ブラケットは後に「スター・ウォーズ(SW)」にも参加されます。それを知るとSWてスペース・オペラだ、SFXだというより西部劇をベースにしてますよね。宇宙に無理やり設定で酒場・・・そこに海賊ハン・ソロ。西部劇で背景となる南北戦争に北軍と南軍は帝国軍と反乱軍に置き換えられます。若者を導き出す指導者マクナリー大佐(J・ウェイン)はオビワン・ケノービですね。Xウィングは騎兵隊でもあります。
J・ウェインは西部劇のヒーロー像を生涯演じ続けました。たまに「静かなる男」や「史上最大の作戦」に「マックQ」などの現代劇もありますが、やはりデュークという愛称で西部劇に出演した作品に名作が多いです。
彼はスーパーマンやM・モンローのようにアメリカ🇺🇸のアイコンとなりました。
しかしJ・R・ゴダールは、そんな彼をタカ派の象徴として嫌っておりました。そもそも初期のゴダールは反帝国主義をモットーに映画を撮っておられましたしね。今では死語となっているアジ(アジテーション-扇動)映画てやつですか?
S・キューブリック「フルメタル・ジャケット」でジョーカーが“まるでJ・ウェインのようだ”と鬼教官を揶揄するシーンがあるように、あまりいい意味で使われない場合もあります。
しかし、ヒーロー像を一生演じ続けたウェインは歌舞伎役者のように芸道を極めた清さがあります。
ホークスは活動屋として生涯を終えたように思えます。スクリューボールコメディやハードボイルド、西部劇、SFなどジャンルにとらわれずに映画は面白ければそれでええんや、という精神はマキノ省三と似ていますね。彼は日本映画の父と呼ばれ映画には「スジ、ヌケ、動作」が重要だと説きました。
(スジは脚本、ヌケは撮影)
ホークスの映画は夜のシーンでもヌケが良く、脚本は一流どころを揃えております。
遺作となった「リオ・ロボ」は活動屋最後にふさわしい作品に仕上がってると思います。