モンパルナスの灯
劇場公開日:2022年12月2日
解説
夭逝の画家モディリアーニの悲劇的な晩年を、「穴」などの名匠ジャック・ベッケルが映画化した伝記ドラマ。
第1次世界大戦後のパリ、モンパルナス。売れないイタリア人画家モディリアーニは画商ズボロフスキーの友情に支えられながらも、貧困と病苦を酒で紛らわす日々を送っていた。ある日、モディリアーニは画学生ジャンヌと出会い恋に落ちるが、彼女の父親によって2人の仲は引き裂かれてしまう。病を悪化させたモディリアーニはズボロフスキーの勧めもありニースで療養することになり、ジャンヌは家族を捨てて彼と一緒に暮らし始める。ジャンヌの愛情と励ましを受け、自身の人生と芸術に前向きに取り組もうとするモディリアーニだったが……。
「花咲ける騎士道」のジェラール・フィリップが主演を務め、ジャンヌを「甘い生活」のアヌーク・エーメ、画商ズボロフスキーを「冒険者たち」のリノ・バンチュラが演じた。
1958年製作/108分/フランス
原題:Les amants de Montparnasse (Montparnasse 19)
配給:セテラ・インターナショナル
日本初公開:1958年9月30日
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ラストが辛かった
ジャンヌもこのあと、後を追ってるんだよね…
2022年12月5日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
20世紀初頭の絵画は写真の普及により写実的表現に価値を見出せなくなったことから、心象風景を絵に反映することで差別化を図ろうとしたと聞いたことがある。
モジリアーニの独特な肖像画もその一つなのだろう。つまり何とかして自分の付加価値を売り込みたかったはず。
なのになぜ盛況な個展に嫌気が刺し、商標に使うと言った富豪の話を蹴ったのか。低俗な商業主義に迎合したくないということなのか。でもアートは多くの人に楽しまれてなんぼ。特に個性的な表現が共感を得るには、YouTube同様、より多くの人の目に触れる必要があると思うのだが。ジャンヌがラストシーンで語った「彼は報酬より励ましが欲しかったのです」と言う言葉も、だったら励ましを得る機会を増やすべきでは、と思ってしまう。結局自己の評価を確認することなく生涯を終え、愛する人までも悲惨な末路を迎えることとなった。
絵描きを生業にする以上、自分の精神の吐露が多くの(でなくても)他者の共感を得ることは無上の喜びではないかと思うのだが…「自身の苦悩を絞り出している」と言うセリフもあり、それをベタベタとイジられたくない、というのが答なのかもしれない。何か因果な仕事ではあるなぁ。
2022年6月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
1958年公開
アメリカ・フランス合作
モンパルナスとは、ご存知の通りパリのセーヌ川左岸14区の繁華街のこと
フランス国鉄と地下鉄の駅があり、主要な大通りの交差点でにぎやかなところです
100年ほど昔、そのモンパルナスに「エコール・ド・パリ」と呼ばれた芸術家たちが大勢住んでいた街として有名です
本作はその中の一人、伝説的な天才画家アメディオ・モディリアーニの最後の日々を描いています
字幕ではモジリアニと表記されます
西洋美術好きなら、その名前はピカソ、ゴッホ、モネ、セザンヌに並ぶほどの著名画家です
作品のほとんどは肖像画です
長く引きのばされた首
その上のうりざね型の顔
簡潔な線で表現された表情
アーモンド形の眼が左右非対称に描かれていて、その瞳は塗りつぶされていることが多いです
それがモディリアーニの作品の特徴です
冒頭のテロップにあるように、今では世界中の美術館が彼の作品を熱望する最高峰の画家一人とされています
数年前に彼の絵が172億円という史上最高額で取引されているぐらいです
しかし生前の彼は全く評価されず、極貧の中失意の内になくなったのです
原題は「モンパルナスの恋人たち(モンパルナス19)」
19とは、おそらく1919年を指しているのでしょう
本作は、実際の1917年3月のヒロインと出会いから、1920年1月の主人公の死までの3年間の出来事を描いていますが、どうも1919年3月から1920年1月の1年間に物語を凝縮しているようです
それで(モンパルナス19)なのでしょう
このように、本作は若干脚色が過ぎるところが有り実際と違うことも多いです
生前モディリアーニと親しく交際していた人物からは、彼はこんな低俗な人物ではなかったと非難しています
とはいえ、彼の伝説の大体のところは伝わるかと思います
彼はユダヤ系イタリア人
パリに住むようになったのは1906年、22歳の時でした
その頃のパリは、「花の都パリ」と呼ばれるようになった最も繁栄した華やかな時代でした
1900年のパリ万博から、1914年の第一次世界大戦勃発までの期間
それを美しい時代という意味の「ベル・エポック」と呼びます
パリには新進気鋭の才能ある芸術家が世界各国から続々と集まってくるようになります
彼等の多くは19世紀後半に活躍した印象派の画家達が多く住んでいたセーヌ川右岸18区の憧れのモンマルトルに住み着きます
モンマルトルに有名な通称「洗濯船」というボロアパートがありました
セーヌ川に浮かぶ洗濯船のようなバラックだったそうです
そこにはピカソをはじめ将来大物になっていった芸術家、文学者、俳優、画商達が大勢住むようになりました
モディリアーニもそこに出入りして彼等との交流を持っていました
ピカソ、キスリング、コクトー、サンドラル、ジャコブ、バクストなどの将来大物になっていく人達が、モディリアーニに自画像を描いてもらっています
しかしモンマルトルも、印象派の芸術家の街として有名となり次第に観光地化してきて、高級住宅も増えて家賃が高騰してくるようになりました
それで、貧乏芸術家の彼等は1914年頃から、セーヌ川左岸14区のモンパルナスに次第に拠点を移すようになりました
その彼等のことを指して「エコール・ド・パリ」というのです
パリ派ぐらいの意味です
印象派のような芸術運動を共有する流派と異なり、お互いの交流はあってもそれぞれは一匹狼な集団です
その貧乏芸術家の面々が現代につづく芸術の革新を推進していくことになるのです
大繁栄した「ベル・エポック」は第一次世界大戦で一旦終ります
しかし戦争が終わると今度は、翌1919年から大恐慌が始まる1929年の10年も間つづくことになる「狂乱の時代」が始まりまったのです
いわば戦後景気のバブル時代です
ボヘミアンなエコール・ド・パリの面々は、この時代にモンパルナスで昼はアトリエ、夜はカフェやダンスホールで大いに活躍します
モディリアーニはその中でも、「モンパルナスの貴公子」と呼ばれ、芸術家仲間だけでなく、女性達に特に人気者でした
しかし本作に描かれた物語によって彼は伝説の画家になったのです
本作はここから始まります
序盤に登場する女性はベアトリス・ヘイスティングスです
モディリアーニは彼女をモデルにして幾つかの絵を描いています
イギリス人美術ジャーナリスト
パリには3年前の1914年に来ました
目的はロンドンの雑誌に「パリの印象」というコラムの記事を書くことでした
彼女はモンパルナスにたむろする芸術家達を取材しているうちに、モディリアーニと知り合い、男女の仲になりました
ジャンヌ・エビュテルヌ
本作のヒロインです
モディリアーニは彼女の肖像画を何枚も描いています
彼女がモディリアーニに出会ったのは19歳
モディリアーニは33歳
14歳差の恋愛でした
内縁の妻となりますが、実際には死ぬ前にモディリアーニは婚姻届を故国のイタリアに郵送していました
しかし、当時の郵送事情の事で数ヶ月を要して役所に届いた時には既に彼は故人となっており、結局彼女は内縁の妻のままでした
本作では子供は出来ていませんが、実際にはニース滞在中に娘を出産しています
そして本作では夫の死を知らぬままエンドマークを迎えますが、史実の結末はこの続きがあります
モリジアーニの死を知り、その2日後彼女は実家のメゾンの5階から身を投げ死んでしまうのです
しかも彼女は身重でした
両親に先立たれた一人娘は伯母の養女となったそうです
ジャンヌを演じたアヌーク・エメは、とんでもなく美しいです
ちょっとオードリー・ヘップバーンに似ています
ローマの休日は1953年ですから、彼女の方が似ているわけですね
レオポルド・ズボロフスキー
主人公の後援者でかつ友人として登場します
本作には登場しないモディリアーニの後援者でポール・ギュームという画商と、この人物で一人のキャラクターを合成して描かれています
実際にはモンパルナスのモディリアーニと同じ安アパートに住む貧しい画商です
モリジアーニは、彼の肖像画はもちろん、彼の妻アンナ(ハンカ・ズボロフスカ)の肖像画も描いています
もちろんギョームの肖像画もあります
本作の役者はこの二人の肖像画のそれぞれの特徴を合成して演じているようです
ドームとはモンパルナスの交差点の角にあるカフェの名前
1897年にオープンした老舗カフェ「ル・ドーム・モンパルナス(Le Dôme Montparnasse)」のこと
今では超有名な観光名所です
当時はジャン・コクトーや、藤田嗣治、モディリアーニ、ピカソなどのエコール・ド・パリの画家や芸術家たちが集うカフェでした
劇中、ジャンヌがキスリング展でモリジアーニを見かけて一目惚れしたといいます
モイズ・キスリングも、エコール・ド・パリの画家です
モディリアーニの特に親しい友人でした
もちろんモディリアーニは彼の肖像画を描いています
というか、いくつかの「ルネ・キスリング夫人の肖像画」のほうが有名ですね
モディリアーニがニースへ転地療養していると
ジャンヌがそこに現れてひしと抱き合うシーンがロマンチックです
実際は、ズボロフスキーの手助けは同じでも、二人揃ってニースに転地しているそうです
1918年のことでした
少年の絵を描くシーンがありますが、この頃は「農家の少年」の絵などがいろいろ残されています
ウェイル画廊
本作では実際とは時系列が異なります
GalerieBerthe Weillで開催された唯一の個展は1917年のことです
実際でもショーウインドーに飾られた裸婦の絵で人だかりが出来てしまい、それを見咎めた警察が猥褻物陳列を理由に即日閉鎖されてしまいました
本作でもこのエピソードは描かれれますが、警察は、ショーウインドーの裸婦の絵を片付けただでら直ぐに引き上げます
ショーウインドーに展示されているのは、
「白い枕に横たわる裸婦」
入り口の右手にあるポスターもまた有名です
画商モレルは架空の人物です
モレルは架空の人物であり、当時の彼への無理解を象徴させた存在だと思います
ウェイル画廊での個展で不愉快なモレルにズボロフスキーが彫刻を思わず投げつけるシーンがあります
あの彫刻もモディリアーニの作品
彼はもともと彫刻家を目指していたのです
ギョームや未亡人となったズボロフスキー夫人はコレクションしていたモディリアーニの作品で後に大金を手にしていますが、モレルのようなあくどい画商では決してなかったのです
二人ともモディリアーが肖像画を贈っていますし、二人の持つ作品の数々がモディリアーニの再評価の導火線となっていったのです
モレルとは全く違います
彼と会話をする中年女性はこの画廊の超有名な女主人ベルテ・ウェイルです
彼女の画廊は第二次世界大戦が始まった1939年まで続きました
彼女の画廊からはモリディアーニだけでなく、ピカソなど著名な芸術家が数多く巣立っていきましたが、彼女もまたモレルとは大違いで、巨万の富を得ることもなく人生を終えています
ピカソが、モリジアーニの死んだ年の1920年に描いた「ベルテ・ウェイルの肖像画」はフランスの国宝になっています
劇中、モリディアーニの絵をアメリカの富豪を見せに行くシーンがあります
富豪はセザンヌを買ったとぞんざいな手つきで彼に見せます
セザンヌはモディリアーニに衝撃を与えた彼が尊敬する画家です
モリディアーニの絵を良いと言ってはくれますが、自社製品の宣伝キャラクターに使いたいとかいいまふ
このような製薬会社の富豪の芸術に対する無理解ぶりに呆れてモディリアーニは「ゴッホは絵は苦悩から生まれると言った」と言います
ゴッホもセザンヌも活躍した時代はモディリアーニの時代より30年以上前のことですが、すでに大芸術家と評価は定まっていました
この富豪はアメリカの美術収集家バーンズをイメージしているようですがひどく悪く描いています
実際はまるで違い、バーンズは多くの才能ある画家の才能を発掘しコレクションしていた美術愛好家です
自社製品の広告に使うなんてことはありません
バーンズコレクションは世界有数のもので美術館が作られています
30年ほど前に東京国立西洋美術館でコレクション展が開催され107万人もの来場者があったぐらいです
モリディアーニも世界的に再評価されたのも、ギョームが持っていた彼の作品が、このバーンズのコレクションに加わってから、世界中の美術館から注目されるようになったのです
モリジアーニは同時代の日本にも影響を強く与えています
彼の絵の価値を見抜いた日本人の画商が彼の絵を買い日本に持ち帰って展覧会で披露して大反響を巻き起こしていたのです
それがベルデ・ウェイルの画廊のショーウインドーに飾った裸婦のシリーズの中の一枚
「髪をほどいた横たわる裸婦」
数奇な流転をへて日本に死蔵されたままの伝説の絵画でした
その作品が2022年2月に開館した大阪中之島美術館で4月より開催中のモリジアーニ展の目玉として展示されています
国内外から集めたモディリアーニ作品約40点
しかも世界初公開・日本初公開作品も含まれているのです!
自分も早速、展示会を観覧してきました
本作を先に観ていれば、より彼の絵画の理解を深められることと思います
7月18日までとのことお見逃しなく
東京を含めて巡回展は無いようです
お早めに
2021年7月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
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画家を描いた映画はついていけないことが多い。その破天荒だったり、狂気だったりについていけないのだ。
今作のモディリアーニには何とも言えない魅力がある。ジェラール・フィリップの色気。
好きな女性が出来たと言われたら、自分が身を引いてでも応援してしまうのが分かる気がする。
ミッドナイト・イン・パリ同様、雨が好きになる映画でもあった。パリの石畳と雨。ジャンヌとのシーンは印象的。
画商のモレールはまるでモディリアーニの死を心待ちにしているかのようだ。生きている間は売れない、運がないからだといい、まだ夫の死を知らないジャンヌから絵を買い占めてゆく。
ジェラール・フィリップという俳優の魅力を再確認させてくれる映画だった。