素晴らしき日曜日
劇場公開日:1947年6月25日
劇場公開日:1947年6月25日
ポール・ニューマンさん、緒形拳さん……08年亡くなった映画人たち
2008年12月26日貧しさとは。愛とは。生きるとは。いろいろ考えさせられる作品。戦後間もない時代の作品なので、当時の観客が観た時に感じたものとは違うかもしれませんが、私なりにレビューを。
ある日曜日、雄造と昌子は街でデートをするのですが、貧しさ故、なかなか思うように楽しめません。雄造はネガティブで卑屈な性格で、デート中もウジウジといじけてしまいます。反対に昌子はポジティブで貧しくてもデートを楽しもうとします。この昌子の笑顔の破壊力よ!柔らかい口調も相まって、観ているだけで癒やされます。雄造!いじけてないで頑張れ!昌子を悲しませるな!雄造と昌子の対比を見せつけられ苛立ちを覚えます。おいおい、大丈夫か、この二人…。
雄造もなんとかデートを盛り上げようとするものの、上手くいきません。キャバレーで貧富の差を感じたり、ダフ屋のせいで交響楽のコンサートを観れなかったり…。この辺りは時代背景を知っているともっと面白く感じたかも。段々と昌子の表情も曇っていき、事態は悪化していきます。
何をやってもうまくいかない二人。見てると本当に辛くなります。実は雄造も良いところはあって、珈琲店を開業する夢があります。皆お金を儲けるために闇市で稼いでいる中、闇屋にならずに頑張っているのは夢があるからでしょうか。でもそのせいで社会から取り残されてしまっているように見えて、どうにも胸が苦しくなります。
終盤の「二人きり」のコンサート。本当に切なくなります。2人が最後に見せた僅かな希望に涙が溢れます。本当に幸せになって欲しいですね、この二人には…。
貧しくも夢や希望を捨てずに生きていこうとする二人を描きつつ、社会のあり方に疑問を呈すような作品。二人が踏み出した一歩は小さなものだったかもしれませんが、とても力強いメッセージが込められています。というか、この映画、本当にたった一日の「日曜日」の出来事だったんですね。つ、辛すぎる…(泣)
・戦後の凄惨さは映像などでしか分からないけど、2人の境遇はインフラなど恵まれている現代と比べてみても惨めさなどは感情的には大差ないように思えて、貧富の差は人間社会の常なのだと切なくなった。
・最初から金がない日曜日なんてと暗い彼氏にそれでもいいじゃんと明るく振る舞う彼女の痛々しさがずっと続くけれど、日常の大半がこの繰り返しだと思ったのと、とにかく2人が普通の人すぎて、それを映画にしてどうするのかなくらいに途中くらいまで思ったけれど、クライマックスの観客に訴えかける音楽堂とラストで彼女を見送るシーンを観て、ようやく気づいたのが、これを日曜日の映画館で観ていたら、あぁ明日も頑張ろう、日曜日にまた彼女と会うため、とか希望を抱いて貰いたいっていう事だったんだと。映画の世界と現実とがクロスした感覚がしてとても良かった。音楽堂のシーンを観てプリキュアはこれを参考にしたのかなと思った。
・あからさまなダフ屋、喫茶店でメニューにない料金に驚いたのと引いたけど、戦後すぐってもっとエグそうだからまだ優しい方なのかなと思った。
・2人がパン屋を始めようって言って希望を抱いていた。あの時にインボイス制度があったら、2人はパン屋始めてたのかなとか思った。
名状し難い。最後まで見るのが非常に辛かった。とは言え作品自体が悪いわけではない。二人芝居もカメラ目線も見所なんだけど。
焼け跡の残る戦後直ぐの東京
しかし扱われるテーマは現代的だ
この恋人達の物語は21世紀の現代に移し変えてもそのまま成立するのだ
むしろ30年前、40年前よりも現実味が増しているのだ
そんな昔の方が、
今日よりも明日
明日よりも明後日はきっと良くなる
そんな希望を持てたはずだ
しかし本作の時代と現代は似ている
今日よりも明日
明日よりも明後日はきっと良くなる
とは決して言い切れないのだ
21世紀の貧乏な恋人達は拍手を求めるのだろうか
私達は拍手するのだろうか
終戦の混乱期の日本より、21世紀の日本は人の心は荒んでいるのかも知れない
非正規、ワーキングプアなる言葉は普通になってどこにでもある話になってしまっている
その上、もしかしたら恋人もつくれず、日曜日も孤独に過ごしているのかもしれないのだ
それが21世紀の素晴らしき日曜日なのかも知れない
冒頭で貧乏の挙げ句、路上の吸殻を拾って吸おうとしてしまい彼女に叱られていた男は、日曜日彼女と過ごしたことで、彼は貧すれば鈍すの状態から心の豊かさを取り戻すことができたのだ
ラストシーンでは駅のホームに落ちておる吸殻をを見ても拾いかけても自ら止めることができるようになっていたのだ
一人きりの日曜日でそのような、心の変化の物語は起こるのだろうか?
21世紀の素晴らしき日曜日とは?
そんな物語は存在するのだろうか?