素晴らしき日曜日
劇場公開日:1947年6月25日
解説・あらすじ
雨の日曜日、金もなく戦後の焼跡も生々しい街に出かけた若い恋人たち。楽しいはずのデートはことごとく厳しい現実に遭遇し、みじめな気持ちで落ち込むが、次第に明るい夢をとり戻していく。「わが青春に悔なし」に続く黒澤明監督作品。監督の持つ本質的な優しさ、感性の瑞々しさが素直に表現された印象深い作品である。
1947年製作/108分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1947年6月25日
劇場公開日:1947年6月25日
雨の日曜日、金もなく戦後の焼跡も生々しい街に出かけた若い恋人たち。楽しいはずのデートはことごとく厳しい現実に遭遇し、みじめな気持ちで落ち込むが、次第に明るい夢をとり戻していく。「わが青春に悔なし」に続く黒澤明監督作品。監督の持つ本質的な優しさ、感性の瑞々しさが素直に表現された印象深い作品である。
1947年製作/108分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1947年6月25日
ポール・ニューマンさん、緒形拳さん……08年亡くなった映画人たち
2008年12月26日1947年の東京。戦後の瓦礫と混乱の中、わずか35円しか持たない若いカップル・裕司と昌子の「たった一日」のデートが描かれる。黒澤明が初めて原作・脚本・監督をすべて手がけた本作は外の世界との関係性を音や風景で描き出す"いわゆる"黒澤の演出(アパートの外から聞こえる音楽、舞台のように作り込まれたセット、そして雨や風といった自然の要素)が主人公の心理と見事に連動し、観客をその内面へと引き込んでいく。戦後の混乱と虚無のなかで、それでも人間はどう生きるべきか、どう踏みとどまれるのか、という主題を正面から描いた作品である。
裕司・昌子というカップルに美男美女すぎない俳優を起用した点や、闇屋に堕ちず貧しさのなかで誠実に生きようとする姿勢は、当時の観客との共感を狙った演出ともいえる。鏡に映る「たかり屋」との対比、浮浪児との出会い、自分にとって唯一の光であるはずの昌子に手を出しそうになる試練といったシーンを通して、裕司の内面の揺れと、なんとか「人間でありつづけよう」とする意思が描かれる。
ややもすると大げさすぎるクライマックスの空想のオーケストラの演出は黒澤自身が観客を信じているからこそできるものであり“映画の中のフィクション”と“観客である我々”との境界線が溶けていく瞬間である。ラストの電車のホームで拾いかけたシケモクを踏み潰すシーンはもう一度、現実に対して踏みとどまろう意志を表している。
貧困と孤独で闇に堕ちていきそうな一人の男を通して「人間の弱さ」と「そこからの再生」という黒澤明が繰り返し描いてきたテーマが本作でも描かれている。虚無と失望の中で、それでも明日を信じた二人の、小さな再生の記録。
83点
貧しさとは。愛とは。生きるとは。いろいろ考えさせられる作品。戦後間もない時代の作品なので、当時の観客が観た時に感じたものとは違うかもしれませんが、私なりにレビューを。
ある日曜日、雄造と昌子は街でデートをするのですが、貧しさ故、なかなか思うように楽しめません。雄造はネガティブで卑屈な性格で、デート中もウジウジといじけてしまいます。反対に昌子はポジティブで貧しくてもデートを楽しもうとします。この昌子の笑顔の破壊力よ!柔らかい口調も相まって、観ているだけで癒やされます。雄造!いじけてないで頑張れ!昌子を悲しませるな!雄造と昌子の対比を見せつけられ苛立ちを覚えます。おいおい、大丈夫か、この二人…。
雄造もなんとかデートを盛り上げようとするものの、上手くいきません。キャバレーで貧富の差を感じたり、ダフ屋のせいで交響楽のコンサートを観れなかったり…。この辺りは時代背景を知っているともっと面白く感じたかも。段々と昌子の表情も曇っていき、事態は悪化していきます。
何をやってもうまくいかない二人。見てると本当に辛くなります。実は雄造も良いところはあって、珈琲店を開業する夢があります。皆お金を儲けるために闇市で稼いでいる中、闇屋にならずに頑張っているのは夢があるからでしょうか。でもそのせいで社会から取り残されてしまっているように見えて、どうにも胸が苦しくなります。
終盤の「二人きり」のコンサート。本当に切なくなります。2人が最後に見せた僅かな希望に涙が溢れます。本当に幸せになって欲しいですね、この二人には…。
貧しくも夢や希望を捨てずに生きていこうとする二人を描きつつ、社会のあり方に疑問を呈すような作品。二人が踏み出した一歩は小さなものだったかもしれませんが、とても力強いメッセージが込められています。というか、この映画、本当にたった一日の「日曜日」の出来事だったんですね。つ、辛すぎる…(泣)
・戦後の凄惨さは映像などでしか分からないけど、2人の境遇はインフラなど恵まれている現代と比べてみても惨めさなどは感情的には大差ないように思えて、貧富の差は人間社会の常なのだと切なくなった。
・最初から金がない日曜日なんてと暗い彼氏にそれでもいいじゃんと明るく振る舞う彼女の痛々しさがずっと続くけれど、日常の大半がこの繰り返しだと思ったのと、とにかく2人が普通の人すぎて、それを映画にしてどうするのかなくらいに途中くらいまで思ったけれど、クライマックスの観客に訴えかける音楽堂とラストで彼女を見送るシーンを観て、ようやく気づいたのが、これを日曜日の映画館で観ていたら、あぁ明日も頑張ろう、日曜日にまた彼女と会うため、とか希望を抱いて貰いたいっていう事だったんだと。映画の世界と現実とがクロスした感覚がしてとても良かった。音楽堂のシーンを観てプリキュアはこれを参考にしたのかなと思った。
・あからさまなダフ屋、喫茶店でメニューにない料金に驚いたのと引いたけど、戦後すぐってもっとエグそうだからまだ優しい方なのかなと思った。
・2人がパン屋を始めようって言って希望を抱いていた。あの時にインボイス制度があったら、2人はパン屋始めてたのかなとか思った。