幼少期、独りで寝室にいるのが怖くてリビングにいる母や父の様子を見に行って「早く寝なさい!」と注意をされたものだ。振り返ると、独りが怖かったのも確かだが、暗闇が非常に怖かった思い出がある。闇は、本当に異質な存在だ。普段見慣れている自室でも、電気を消して真っ暗にするとどこか視線を感じるような不安感に襲われる。そんな誰しもが感じる暗闇への恐怖を描いたのが本作だ。放題の「インプラント」だとエイリアンものだと思ってしまうが、本作はエイリアンでも歯医者でも無い、真っ当なオカルトホラーだ。
過去に暗闇への恐怖を抱いていた経験を持つ若者に、ある人物の死を皮切りに再び恐怖が襲い来るというストーリー。冒頭のクローゼットに引きづりこまれる少年等、描写はそれぞれクオリティが高い。冒頭で心を鷲掴みにされた印象だ。
暗闇に対して異常なほど恐怖を感じている人(本編では自殺者もいる)は精神的な病が疑われるだろう。本編でも精神科の診療に訪れるシーンもある為、自己の幻覚と現実が不条理にやって来るようなマインドスリラー的恐怖を期待したが、何とまさかのクリーチャー出現!格好良く言うと、「暗闇の住人」とでも言えるだろうが、何か肩透かしな印象が拭えない。一応過去の経験と繋がっており、ただのモンスター・パニックでは終わらせていないが、正体など詳しいところはよく分からず、「いる」と分かってしまえばそんなに怖くないのが難点か。特にパッとする作品では無い。
「ヒッチャー」の監督がメガホンを取ったのだが、暗闇という部分へ的を絞ったのは良いと思う。非常にテーマが良かった。作品全体的に考えてみると、結局は娯楽的なクリーチャーに収まり、少々残念だ。一度鑑賞すれば良いだろう。