今は無き銀座並木座で観て以来、
何十年ぶりかでDVD鑑賞。
黒澤明作品は「続 姿三四郎」以外は
全て観ているが、正直なところ、
この作品への評価は高くなく、と言うか、
他のかなりの作品が名作過ぎるからだが、
この時点まで再鑑賞することは無かった。
しかし、よくまぁこんなに重々しい題材を
映画化したものだな、との驚きが先に来る。
そしてまた何という重々しい展開の連続
だろうか。きっと黒澤明で無かったら、
鑑賞途中でさじを投げていたのではないか。
それを最後まで観客を引き付けるのは
黒澤監督の力量以外の
何ものでもないのだろう。
話は、梅毒に罹った医師が、許婚を捨て、
悪人をも治療しようとする等、まさに聖人
のような生き様を見せるが
「静かなる決闘」とは、
そんな聖人としての生き方を強いた
「“神との”静かなる決闘」と言うこと
なのだろうか。
いずれにしても、
観ているのは辛い重苦しい作品だ。
僅かに看護婦の成長と
それが主人公との距離を縮めつつある展開に
希望が見えなくもないが、
仮にそうだとしても、息も詰まるような
聖人としての生き方に、俗人の私には、
尊敬の念を抱きつつも同情は禁じ得ない
辛いヒューマニズムストーリーだ。
黒澤映画の素晴らしさは、
エンターテイメント性の中にも
ほとばしるヒューマニズムだ。
この映画はエンターテイメント性を
抑えた分だけ、黒澤作品の中ではワクワク感
を得られない作品ではある。
因みに私の黒澤作品ベスト3は、
・七人の侍
・蜘蛛巣城
・赤ひげ
です。