飼育(1961)

解説・あらすじ

昭和二十年の初夏。米国の爆撃機が山中に墜落、脱出した黒人兵は猟の罠にかかり村人に捕らえられ、そして黒人兵の“飼育”が始まる。しかし村は疎開者を抱え、地主との間にも悶着が絶えない。トラブルの原因はあの黒人兵だ……村人のイライラは黒人兵に向けられ、あろうことか彼を殺してしまう……。大江健三郎の同名小説を田村孟が脚色、松竹を退社した大島渚が監督した社会ドラマの異色作。

1961年製作/105分/日本

スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0 原作への評価 この映画、何を騒いでいるの?

2025年12月20日
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鑑賞方法:VOD
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チネチッタ

4.5 タイトルなし

2025年1月13日
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大江健三郎さんは
うちの実家に寄られたことがあって、
僕は在宅していなかったのでお顔を拝見出来なくて残念でしたが、
母に言わせると「ぜんぜん喋れないお方」で、講演会でもぜんぜん喋れなくて
講演会は大失敗。非難轟々だったそうです。

繊細すぎて、自分で書いた作品で自身を殺してしまう。自傷してしまう作家さんなのかも知れません。

息子さんは作曲家で、いいCDを出しておられますよね。
息子さんのお名前が「光ひかり」さんなので、慰められます。

・ ・

この映画化については、
大江の原作と、大島渚の映画ではだいぶん焦点の当て所が違うのだけれど、
原作では、村の少年が語る俘虜と自分の一夏。
映画では、その少年と俘虜をめぐる村人の物語としての、阿鼻叫喚の展開。

「和を以て貴しとなす」の「ムラ社会」でも、一旦部外者がやって来ると均衡が崩れる。
そしてここまで半狂乱になり、
そして我に返って隠蔽を図ろうとする繰り返し。
この日本人のメンタリティ。
大島渚が最も嫌ったであろう日本人の実相をえぐっている。

「福田村」、そしてこの「飼育村」。これはわが町の事なのだ。

・ ・

【メモ】
長く巷に伝えられてきたのは「敗戦後、BC級戦犯がたくさんGHQによって処刑をされたが、「処刑されたのは実は日本籍を強要された韓国人軍属だけだった」という風聞だったが、それは違った。
新潟の直江津など、日本各地の捕虜収容所での連合軍捕虜に対する処遇によって、相当数の当地採用の日本人職員も死刑判決を受け、処刑をされていた事実。
町内会の人たちは、身内ゆえ、そして顔見知りゆえ、以来 暗い過去に口をつぐんでいるしかなかった事・・
それをラジオの特集で先般聞いたばかり。
みんな沈黙していたので、事実が大っぴらには外部に漏れて行かなかったのです。

戦争には綺麗事はない。
戦争の暗部には、目も耳も本当に塞ぎたくなる。
ナチの敗戦後、それまでずっと悪の権化=ヒトラーに虐げられてきたポーランドの市民が、国内に残っていたドイツ人たちを襲って家族もろとも惨殺した事実とか
起こりうべき結果だけれど、聞きたくはなかった戦争の本当の姿。

・ ・

だからわが国日本でも、
国内外で我々がやらかした罪について、自己免責するまやかしは駄目なのだ。
それを稀釈して自らを放免するような作用のある、何か創られた「片方の美談」は、一切語っては駄目なのだ。

「飼育」は、
わが町長野県での話。
お国から「飼育」されていたのは、まぎれもない自分たちだったのだと、
その事に気づかないといけない。

遺体に土をかける村人の手と、
無かった事にする村人の手打ちと。
この我々の手。この下手人の手。二つの手を重ねて撮るグロテスクさは撮影の技だ。

たとえそれが身内であったとしても、この汚れた手を赦しちゃいけない。
隠してはいけないのだ。

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きりん

4.0 ただただ怖ろしい。

2024年10月31日
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鑑賞方法:VOD

怖い

原作既読。……ほとんど覚えていませんが。

観終えた後「あれ?こんなに濃い内容だったかしら?」と思い本棚に手を伸ばしたわけですが、ページ数の少なさにびっくり。原作をヒントに物語を広げていった映画のようですね。

冒頭からホラーのような演出で始まり、終始重苦しい雰囲気で展開していくストーリーは、浅ましさ、愚かさ、醜さ、嫉妬、虚栄、憎しみ等、人間の嫌な部分だけを切り取ったかのようで狂気すら感じさせます。

音楽が恐怖を煽り、役者の迫真の演技が緊張感を生み出しております。ただし、方言がきついため、セリフはほとんど聞き取れませんでした。なので正確にレビュー出来ないので星4です。すみません。

後味は非常に悪いです。鬱エンドと言って差し支えないでしょう。まぁ、大江作品は大体後味悪いし、そこは原作通りといったところ。

終戦間際のお話ですし、本作製作当時の時代背景も全く知らないので、社会風刺があったのかは分かりませんが、とにかく村社会の暗部を抉るような作品でした。

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吹雪まんじゅう

4.5 敵国の黒人兵の存在が、「ムラ」社会に混乱をもたらす人間の暗部。

2023年10月18日
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鑑賞方法:VOD

 1961年(昭和36年)、戦後16年目に公開されたモノクロ映画。

 1958年(昭和33年)に芥川賞を受賞した大江健三郎の同名小説の映画化。
「太平洋戦争の末期、米軍機が山中に墜落し、黒人兵士が村人に捕らえられる。村に巻き起こる混乱を捕虜のせいにして収拾しようとする村人たちの姿に、戦時下の庶民の心の暗部を浮かび上がらせる。」(広島市映像文化ライブラリーフライヤーより引用)

田舎の山奥に暮らす人々が鬼畜米英の黒人兵を捕まえたところから物語が始まる。捕虜の対応は定められており適切に対応しなければならない。そこで暮らす多くの農民たちは自らも生きるのが精一杯の中、敵国の兵隊に食事を与え、世話すること自体大問題。
「ムラ」の組織としての町内会長、負傷した軍人の町役人がそこを仕切る。黒人兵は縛られたままにもかかわらず、その兵士がそこにいることで、村人たちにさまざまな葛藤や怒りがほとばしっていく。

「ムラ」を構成するのは、本家であり裕福な町内会長とそこで働く人たち、多くの貧しい農民、町役人、疎開で身を寄せる家族、親戚の娘、何でも興味を示す男の子たち、徴兵を拒否する男、息子を戦争にやった家族。

異質なものが、ムラに来たらどうなるのか。直接は黒人兵とは全く関係のない、ドロドロとした上下関係、女性関係などがむき出しになることの恐ろしさ。そしてそれを止めようとするのは誰なのか。また、ケリを付けるのは?良識のある人もいるが、多数の人は、暴力的価値観で物事を見ている。
何事も隠蔽の道を選んでしまう日本の社会の闇の部分を見た。

それにしてもこの時代の役者の迫力の演技に圧倒される。

広島市映像文化ライブラリー「生誕100年・三國連太郎特集」。

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MJoe