飼育(1961)

解説

昭和二十年の初夏。米国の爆撃機が山中に墜落、脱出した黒人兵は猟の罠にかかり村人に捕らえられ、そして黒人兵の“飼育”が始まる。しかし村は疎開者を抱え、地主との間にも悶着が絶えない。トラブルの原因はあの黒人兵だ……村人のイライラは黒人兵に向けられ、あろうことか彼を殺してしまう……。大江健三郎の同名小説を田村孟が脚色、松竹を退社した大島渚が監督した社会ドラマの異色作。

1961年製作/105分/日本

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映画レビュー

3.0大江健三郎さんを偲んで

2023年3月25日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

大江健三郎さん
2023年3月3日老衰のため88歳で他界
芥川賞受賞作家
ノーベル文学賞受賞作家
そのためか権威に弱い人たちは大江健三郎を高く評価しない奴を馬鹿だと断定するわけだが彼らもまた大江健三郎の良さをきちんと理解できていないだろう
権威を否定する大江健三郎が左翼界隈には権威になっている皮肉
反戦主義はいいが皇室制度廃止論者故に保守派からは大いに反感を買った
日本的な左翼が大嫌いな僕だが皇室制度存続を支持しているわけではないので保守でもないんだけどね
中共から日本の良識と称賛されるのも複雑な思い
外人がいくら褒めても決して喜べるものでは無い
とりあえず村上春樹の『1973年のピンボール』のタイトルの元ネタになった『万延元年のフットボール』読破再挑戦しますか
改めて合掌

原作未読
原作は『静かな生活』の大江健三郎
監督は『愛のコリーダ』『戦場のメリークリスマス』『御法度』の大島渚
脚本は『瀬戸内少年野球団』の田村孟

昭和二十年初夏大東亜戦争末期の長野県のとある村
日本の農村に米軍機が墜落しパイロットは無事脱出に成功したが猪の罠にかかり足を負傷してしまう
村人に捕獲され村でしばらく「飼育」されることに
村人たちからすればほんの短期間だと思っていたのに憲兵の文書による命令でそれは半年以上になりそう
農村とはいえ食糧に余裕などさほどなく鬼畜米英の余所者は厄介者でしかない
それでも子供たちは興味本位で近づき優しかった
だが村人のストレスは頂点に達して一正が黒人兵を殺してしまう
戦争は終わり進駐軍にバレるのを恐れた村人は無かったことにしようと目論む

まず一正を演じた三国の髪型があまりにも変だ
髪型に気を取られたがよく見たらちょび髭だ
原作に忠実なのか三国のアイデアなのかそれは定かではない
ただ鷹野一正こそが俳優三国連太郎の本領発揮であり『釣りバカ日誌』でお馴染みのスーさんは全くの紛い物である

黒んぼ
完全な差別用語でありテレビの生放送で出演者が失言したら代行して局アナが謝罪する案件
最近の東京発のメディアではなかなか見聞きする言葉ではないがそれでもまだまだ混じりっけ無し純度100%の生きている日本語だ

昭和初期の農村風景の描写がとてもリアルだ
とは言っても自分の生まれるずっと前だし親でさえ生まれる前の話でこの空気感は想像でしかない

何かといえば誰かのせいにしたがるものだ
それは多くの場合的外れだったりする
とはいえあの時代なら殺すかもしれない
黒だろうが白だろうが黄色だろうがヘチマだろうが鬼畜米英なら殺すだろう

大人を見つめる子役の皆さんの表情が良い

棺桶を埋めるシーンと終盤の火のシーン好き

映画で使用された鷹野家の家は近藤春菜の母方の祖父が住んでいた古民家らしい
「豚小屋じゃねーよ」って言いそう

ちなみに俳優浜村純はあの浜村淳とは全くの別人である

配役
地主の鷹野一正に三國連太郎
一正の妻の鷹野かつに沢村貞子
一正の長男の嫁に中村雅子
疎開してきた一正の姪の幹子に大島瑛子
鷹野家の百姓番頭の秋さんに浜村純
百姓の塚田伝松に山茶花究
伝松の妻の塚田ますに岸輝子
伝松の息子の妻の塚田幸子に三原葉子
百姓の小久保余一に加藤嘉
余一の息子の小久保次郎に石堂淑朗
疎開してきた石井弘子に小山明子
役場で書記をしている義足で跋扈の男に戸浦六宏
巡査に小松方正
操縦していた米軍爆撃機が墜落し捕虜になった黒人兵にヒュー・ハード

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野川新栄

4.0 大江健三郎でも大島渚の世界でも無く、脚本の田村孟が描くザ日本の村社会

2021年6月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

日本のムラ社会の嫌らしさ、汚なさ、理不全性を容赦無く描き出した社会的なメッセージ性有する問題作と思えた。後年の田村孟脚本の作品群と重なる部分が大とも感じた。

舞台は戦争末期。生捕した黒人パイロットを村民達、実際には子供達が世話している。ムラにはいざこざが絶えないが、それもこれも全てクロンボのせいにして、殺すことに決めてしまう。子供達は救おうとするが、本家の長である三国連太郎に結局殺されてしまう。

敗戦後、脱走兵も帰って来たが、争いの中で死んでしまう。黒人兵殺しは、脱走兵がやったことにすると、皆で示し合わせる。全てのやばいことは無かったことにしようとする村落社会の住民達の有り様が、今も根強く存在する、ザ、日本社会。この映画での唯一の救いは、子供達がそんな大人を怒りの目で見てたことなのだが。

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Kazu Ann

3.0大江文学の絶妙な映画館

2015年4月22日
iPhoneアプリから投稿

人間の本質をえぐる大江文学の名作を、大島渚監督がしっかりと映画化。この時期の大島作品はどれもそうですが問題提起の手法が当時はさぞ若いインテリ層に受けたんだろうなと感じました。「ジョニーは戦場へ行った」のように戦闘のない戦争映画の名作ともとれます。

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あおおおん
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