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- レイチェル・ワイズの名が付いた映画のフライヤーには必ず”ナイロビの蜂の”という冠が付く。今作では彼女が演じたテッサが、映画に出るシーンは少ないのに。
けれども、彼女が夫イギリス人外交官ジャスティン・クエイル(レイフ・ファインズ)を見るラストシーンでの笑顔は素敵なのである。ー
■ナイロビでスラムの医療施設改善に励んでいた妻テッサをトゥルリア湖で同行したアーノルドと共に何者かに殺された、イギリス人外交官ジャスティン。
彼は、それまで妻の行っている事に関わらずにいたが、その死の真相を調べ始めるようになる。やがて、ジャスティンの上司、英外務省局員バーバード・ペレグリン(ビル・ナイ)と製薬会社スリービーズとの癒着が事件に関わっていた事が明らかになって来る。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・序盤、ジャスティン・クエイルとテッサが恋に落ちるシーンから、身籠ったテッサが死産し、その後惨殺される所から物語は始まる。
何故に、幸せの絶頂の中、身の危険も顧みずにテッサは、何かを調べていたのか。
・それが、ジャスティンが独り名を偽って、調査を始めるシーンからの徐々に明かされて行く事実にドンドン引き込まれて行くのである。
・このサスペンスタッチで真実が明らかになって行く過程が、哀しくも面白いのである。テッサに密かにある文書を見せていた、彼女を愛していたサンディ・ウッドロウ(ダニー・ヒューストン)が、彼女の遺体をジャスティンと共に観た時に、激しく嘔吐をした訳が徐々に分かって来る・・。
・ジャスティンが真相に近づき、ナイロビで新薬”タイプラザ”を現地の民に”与えていた”製薬会社スリービーズの開発者であるロービア博士が、自らが行った事に耐え兼ねて現地の民と暮らしていた場で会い、博士が巨大製薬会社の利益を得るために行っていた事を吐露するシーンは恐ろしい。
・そして、ジャスティンの葬儀で大勢の参列者の前で従弟のハムが読み上げたバーバード・ペレグリンの手紙。それを聞き、葬儀場から逃げ出すペレグリンの姿。
<ラストシーンは、重くて哀しいが美しい。ジャスティンは戻る飛行機の中で、飛行士に”トゥルリア湖で降ろしてくれ。”と頼み、拳銃を腰につけ湖畔の岩に腰掛けるのである。
そして、笑顔のテッサの顔を想い出し、彼女が何故自分には何も言わずに巨大な製薬会社と英国外交官の癒着を調べていたのか。何故に自分はそれに気づかなかったのか・・。”と悔いるジャスティン。
そこに現れた謎の男達。その気配に気づいたジャスティンが振り返ってエンドとなるのである。
今作は、サスペンスメディカルミステリーであり、真の愛とは何かを描いた重い余韻を残す作品でもある。>