国宝

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劇場公開日:

解説・あらすじ

李相日監督が「悪人」「怒り」に続いて吉田修一の小説を映画化。任侠の家に生まれながら、歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げた男の激動の人生を描いた人間ドラマ。

任侠の一門に生まれた喜久雄は15歳の時に抗争で父を亡くし、天涯孤独となってしまう。喜久雄の天性の才能を見抜いた上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎は彼を引き取り、喜久雄は思いがけず歌舞伎の世界へ飛び込むことに。喜久雄は半二郎の跡取り息子・俊介と兄弟のように育てられ、親友として、ライバルとして互いに高めあい、芸に青春を捧げていく。そんなある日、事故で入院した半二郎が自身の代役に俊介ではなく喜久雄を指名したことから、2人の運命は大きく揺るがされる。

主人公・喜久雄を吉沢亮、喜久雄の生涯のライバルとなる俊介を横浜流星、喜久雄を引き取る歌舞伎役者・半二郎を渡辺謙、半二郎の妻・幸子を寺島しのぶ、喜久雄の恋人・春江を高畑充希が演じた。脚本を「サマー・ウォーズ」の奥寺佐渡子、撮影をカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作「アデル、ブルーは熱い色」を手がけたソフィアン・エル・ファニ、美術を「キル・ビル」の種田陽平が担当した。2025年・第78回カンヌ国際映画祭の監督週間部門出品。

2025年製作/175分/PG12/日本
配給:東宝
劇場公開日:2025年6月6日

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(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

映画レビュー

4.0濁流に飲まれたかのような気持ちで映画館を後にした。

2025年6月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

歌舞伎に疎い私でも、別の仕事と並行して、1年半でここまで歌舞伎役者を見事に演じ切った喜久雄演じる吉沢亮と、俊介演じる横浜流星が尋常ではない努力をされたのは誰が見ても感じ取れる。
型は違えど、きっとこの2人も演じることに取り憑かれた人たちなんだろう。彼ら2人がいたから、この作品がここまでの完成度と説得力がある作品になったことは間違いない。

そして彼らの幼少期を演じたのが、新人アカデミー賞を受賞した『怪物』の黒川想也くんと、『ぼくのお日さま』の越山敬達くんという、これまた胸熱な2人なもんだから、誇張無しに喜久雄と俊介の幼少期からずーーーっと隙がなく素晴らしい。
黒川くんの女型なんて、あの歳でなんであの色気を出せるのか、昔話で人間を化かす妖怪ってこんな感じなんだろうなとさえ思えた。
なのに練習シーンで見せた、上半身のあの筋肉質で引き締まった男らしい身体に驚く。彼の日本アカデミー賞でのスピーチでも感動したけど、今後がとても楽しみな役者さんだ。

さらには田中泯さん演じる万菊。滲み出る『人間国宝』の凄みと気品で、田中泯さん自身は歌舞伎役者では無いのに、もう何十年も歌舞伎の世界に身を投じていた人物にしか見えなかった。招く手の所作まで、細部に至る全てが美しかった。

そう、この作品は3時間ずっと美しいのだ。

それは李監督がいつも作品で見せてくれる、人間の美しさなんだろう。もちろん吉沢亮と横浜流星という外見の美しさもあるけれど、単純に外見の美しさというわけではなく、醜く足掻く姿も美しく、汗と涙でぐちゃぐちゃな姿も美しく、そういう壮絶な人生が放つ、常人では放てない美しさが始終作品から放たれていた。

喜久雄の人生を3時間で描くため、若干物足りないところもあったし、あのキャラはその後どうなったの?とか、ここはもう少し丁寧に見せて欲しかったなーという箇所も無かったわけではないけれど、これでもだいぶカットしたんだろうなと思う。
演目で彼らの心情や想いを語らせる、生き方をダブらせるという手法は、歌舞伎の演目を知っていないと少し難しい。

私は『曽根崎心中』しかあらすじがわからなかったので、鑑賞後に他の演目を調べたところ、思わず「そういうことかー」と声が出た。これを知った上でもう一度あの歌舞伎のシーンが見たい。

極道一家の息子に生まれ、歌舞伎の世界に入る喜久雄と、歌舞伎一家のサラブレッドの俊介。
芸をいくら磨いても、血縁という強固な絆とお守りには勝てないと思う喜久雄と、その血によって苦しむ俊介。2人の立場の違う無いものねだりの若者が、芸を極めるために、もがき苦しみ、執着し、追い求める様の熱料は凄まじく、芸を極める以外の全てを捨てた者が辿り着く先が『国宝』なのかと思うと、畏怖感に震えた。

実際歌舞伎の世界で生きている人たちから見たら、この作品はどう映るんだろう。実際の人間国宝の方々からの感想を聞きたくなった。

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共感した! 57件)
AZU

5.0俳優・吉沢亮の代表作、ここに誕生。魂が震える、芸の一代記!

2025年6月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

映画『国宝』を観てきました。
言葉を失うほどの余韻に包まれ、今もまだ心が震えています。
これはもう、今年度のアカデミー賞を総なめにしてもおかしくない、圧巻の一本でした👏

『悪人』『怒り』などで知られる李相日監督が、再び吉田修一の小説を映画化。
任侠の家に生まれながら、歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げた男の激動の一代記を描いた人間ドラマです。

まず何より、吉沢亮さんの“女方”役が凄まじい。
演じているというより、「役が宿っている」と表現したほうがしっくりきます。
国宝級イケメンの彼が、顔を白く塗り、己の芸一本で勝負する姿はまさに圧巻。
「歌舞伎」という日本の伝統芸能の世界は、一筋縄ではいかない道のりだったはず。

李監督が、なぜ歌舞伎役者ではなく吉沢亮を主演に選んだのか──
その理由を語るインタビューを読み、「なるほど」と納得しました。
その熱烈なオファーに応えようと、苦しみながらも挑み続けた日々さえも、
“芸の肥やし”となり、この作品を輝かせています。

“国宝”というタイトルにふさわしい生き様と芸が、吉沢さん自身の演技によって命を持ち、
観る者の魂に深く突き刺さる。
まだ上半期ですが、日本アカデミー賞主演男優賞の最有力候補といっても過言ではありません。

そして、昨年『正体』で同賞を受賞した横浜流星さんの存在感も素晴らしかった。
まさに作中のストーリーそのもの──
若手実力派俳優同士の“芸道対決”が、本作の見どころでもあります。

横浜流星から吉沢亮へ──
イケメン俳優から“国宝級”イケメン俳優への夢のバトンタッチは、美しく誠実な“アシスト”。
師匠役の渡辺謙さん、その妻役で歌舞伎をよく知る寺島しのぶさん、重要なヒロインを演じた高畑充希さんなど、脇を固める俳優陣も豪華!
芝居の間合いや声の温度感すべてが、舞台のような緊張感と深みを生み出していました。

さらに、音楽と“無音”の演出がとても効果的。
歌詞のない打楽器の重低音が、歌舞伎という芸に込められた品格と魂を引き立て、
本物の舞台を観ているかのような臨場感を味わえました。

King Gnuの井口理さんによるラストの歌声も、まるで楽器のように物語に溶け込み、
観終わったあとまで美しい余韻を残してくれます。

ふだんなら高額なチケットを払わないと観られないような上質な歌舞伎の演目を、
映画という形で丸ごと堪能させてもらったような贅沢な体験。

じっくりと味わう映画がお好みの方には、特におすすめ🧐“観ておいて損はない”名作です。
映画ファンはもちろん、日本の伝統芸能に関心がある方にもお勧めしたい映画です♪

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ななやお

4.5吉沢亮と横浜流星の贅沢なアンサンブルで魅せる、血筋と才能の残酷な相剋

2025年6月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする 2件)
共感した! 152件)
ニコ

4.5得体の知れない何かを求める人生の至福と過酷さ

2025年6月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

興奮

幸せ

当代の人気役者、吉沢亮と横浜流星が歌舞伎の世界で出会うライバル同士を懸命の演技でなぞっていく。任侠の世界から生来の才能を見込まれて歌舞伎の世界に飛び込んだ喜久雄(吉沢)と、名門の跡取りである俊介(横浜)を通して、才能か?血縁か?という命題に取り組んだ物語は、そんな比較論に収まらず、各々が命懸けで挑む美の探究の果てに、何が見えるかを垣間見せて緞帳を下ろす。出自に関係なく、芸を鍛錬する者だけが目撃する神々しい光の正体は何なのかは、正直よくはわからない。でも、得体の知れない到達点をただただ追い求める人生の至福と過酷さだけは、しっかりと伝わるのだ。

『国宝』は歌舞伎という日本古来のエンタメと、今を生きる若手俳優のトップ2人の献身が結びついて誕生した本当の意味での娯楽映画。読み始めたら止まらない吉田修一の長編小説を3時間弱の映画にまとめ上げた脚本は秀逸で、上映中時計を見ることはない(はずだ)。所作を含めた演技が美しい吉沢と、口跡と見た目で対抗する横浜(白塗りにすると中村七之助そっくり)を囲む脇役の中では、喜久雄の才能を会った瞬間に見抜く伝説の女形、万菊を演じる田中泯の妖艶さに痺れまくった。配役、美術、音楽も含めて、これほど贅沢な時間は年間を通してあまりない気がする。

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清藤秀人