ビヨンド・ユートピア 脱北

劇場公開日:

ビヨンド・ユートピア 脱北

解説・あらすじ

脱北を試みる家族の死と隣り合わせの旅に密着したドキュメンタリー。

これまで1000人以上の脱北者を支援してきた韓国のキム・ソンウン牧師は、幼児2人と老婆を含む5人家族の脱北を手伝うことに。キム牧師による指揮の下、各地に身を潜める50人以上のブローカーが連携し、中国、ベトナム、ラオス、タイを経由して亡命先の韓国を目指す、移動距離1万2000キロメートルにもおよぶ決死の脱出作戦が展開される。

撮影は制作陣のほか地下ネットワークの人々によって行われ、一部の詳細は関係者の安全のため伏せられている。世界に北朝鮮の実態と祖国への思いを伝え続ける脱北者の人権活動家イ・ヒョンソをはじめ、数多くの脱北者やその支援者たちも登場。「シティ・オブ・ジョイ 世界を変える真実の声」のマドレーヌ・ギャビンが監督を務めた。2023年サンダンス映画祭にてシークレット作品として上映され、USドキュメンタリー部門の観客賞を受賞。

2023年製作/115分/G/アメリカ
原題または英題:Beyond Utopia
配給:トランスフォーマー
劇場公開日:2024年1月12日

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映画レビュー

5.0緊迫の脱北の一部始終

2024年1月31日
PCから投稿

脱北者にカメラが密着という驚異的な手法で作られたドキュメンタリー映画。作品の中心となるのは、脱北者家族とそれを支援する韓国人の牧師、それにかつて一人で脱北したものの息子を連れてくることができなかった母親だ。本作は、なぜ北朝鮮から脱北する物が後を絶たないのか、その背景を貴重なフッテージとともに明らかにしたうえで、国境を越えて中国入りした後からカメラが密着し家族の逃亡劇を事細かに見せる。中国から東南アジアまで長い道のりを通って韓国までやってこなければならない、中国もラオスなども親北朝鮮の国なので、国境を抜けた後も数多くの危険があるのだ。
緊迫の映像だけでなく、南北の分断の歴史に欧米や日本の戦争がどのように責任があるのかも描き、映画に描かれる人々がなぜ苦しんでいるのかの構造的問題にまで踏み込む内容になっている。大変に優れたドキュメンタリー作品で、一見の価値がある。コロナで脱北が難しくなったという近年の事情も描いていて、これが現在進行形の問題であることを指摘することも忘れていない。

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杉本穂高

4.0題材の衝撃性のみならず人間性が深く描かれた秀作

2024年1月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

生々しい手触りを持った脱北ドキュメンタリーで、自分にとっては相当な衝撃作だった。まずカメラの被写体となるのは韓国で脱北者の支援を行うキム牧師なのだが、ことの深刻さとは裏腹に、牧師はいつも温厚ででっぷりとお腹が出た体型。その佇まいからして癒しがある。そんな矢先、中国国境の山奥で幼児と高齢者を含む5人家族が見つかり、ブローカーからは彼らを支援するか否かの打診が。本作はブローカー数十人や支援者の手を介し、彼らが東南アジア経由の厳しいルートで脱出に挑む姿を記録した作品だ。115分間、無駄なく情報が散りばめられ、北朝鮮の歴史や文化に関する知識まで盛り沢山。加えて特筆すべきは幼児と祖母のリアクションで、つまるところ、国家政策で叩き込まれた思想と外界の現実とがあいまみれ、彼らの中で何かが静かに崩壊していく様子が、最も純粋な表情として伺えるのだ。かくも”ヒューマン”が刻印された一作に成り得ているのが尊い。

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牛津厚信

3.5On the North Korean Refugee Experience

2024年1月18日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

There have been a number of documentaries on life in the Hermit Kingdom, but Beyond Utopia is the first I have seen on its runaways. The film focuses on a Christian priest who buys them from human traffickers in China. They must venture by land to the Thai border where they can then fly to South Korea. As such, its more scathing of the regime than others that tend to humanize with silver linings.

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Dan Knighton

4.5脱出行程の緊迫感もさることながら、本作公開以降の関係者の行く末が気になってしまう一作

2025年5月11日
PCから投稿

脱北を試みる家族に同行した撮影スタッフが収めた映像は、全て現実に起きている、という生々しい緊迫感に満ちていました。

いくつもの国境を越えての移動は、ましてや体力的に不安のある高齢者や幼児を伴っていることを踏まえると、その苦難は確かに想像を絶するものがあります。他方では家族との無事な再会を祈るしかない家族、親族も、吉報をただ待つ時間は無限に長く感じたに違いなく、そのやるせない表情もまた強烈な印象を残します。

ドキュメンタリー映像作家として著名なマドレーヌ・ギャビン監督とはいえ、当局に捕まれば極刑は免れない状況でここまで綿密に脱北者との同行計画を立て、実行したことに驚き。

キム・ソンウン牧師ら脱北者支援ネットワークの人々やその活動も、もちろんある程度の詳細は伏せているとはいえ、映像に収め、公開することにはかなりの危険性が伴うはず。作中でも脱北者が語るように、当局が脱北者の家族、親族に極刑を含めた苛烈な制裁を科すのであれば、こうして世界中に公開となって以降も、彼らは無事に生活を送ることができるんだろうか、と、むしろ公開後について懸念してしまいました。

最高指導者に対する敬慕の念を抱きつつ、しかし故国から脱出せざえるを得ないという脱北者の苦悩は、単に洗脳、とか盲信という一言では片づけることができないような複雑さを感じました。その戸惑いを静かに語る場面もまた、本作のクライマックスの一つととらえて良いのでは。

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yui

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