コラム:映画.comシネマStyle - 第27回
2022年2月18日更新
ゲーム原作のおすすめ映画5選 「アンチャーテッド」公開記念
毎週テーマにそったおすすめ映画をご紹介する【映画.comシネマStyle】。
「スパイダーマン」シリーズのトム・ホランド主演で、トレジャーハンターのネイサン・ドレイクが伝説の秘宝や古代都市の謎に挑む人気アクションアドベンチャーゲームを映画化する「アンチャーテッド」が、2月18日から公開中です。そこで今週は、人気ゲームが原作となった、編集部のおすすめ映画5本をご紹介します。
▽「バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」(2021年/107分/ヨハネス・ロバーツ監督)
極めて野心的な新・絶望体験――新たな世界線、新たな試みで新たな物語を紡ぐ
ミラ・ジョボビッチ主演の実写映画シリーズも大ヒットを記録したカプコンの人気ゲーム「バイオハザード」を、新たなキャスト&スタッフで映画化。
【あらすじ】
製薬大手アンブレラ社の拠点がある街「ラクーンシティ」の孤児院で生まれ育ったクレア・レッドフィールド(カヤ・スコデラーリオ)は、アンブレラ社がある事故を起こしたことで、街に異変が起きていると警告する不可解なメッセージを受け取り、ラクーンシティへ戻ってきた。ラクーン市警(R.P.D)の兄クリス(ロビー・アメル)とともに、住民たちの変わり果てた姿を目の当たりにしたクレアは、アンブレラ社が秘密裏に人体実験を行ってきたことを知る――。
ジョボビッチ主演の過去シリーズが、なんとなくゲームシリーズを下敷きにしていたのに対し、本作「バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」は、“がっつりゲームに寄せている”ため、ファンは大変嬉しいところでしょう。
物語や設定は、ゲームの「1」「2」を再現。時代は1998年、舞台はラクーンシティ、洋館と市街地でのパニックを並行して描き出しています。
見どころは何と言っても、ゲームファンならば「そんなところまで!」と驚くようなシーンが多数登場する点。例えば洋館では、ある人物がバーのグランドピアノでベートーベンの「月光」を弾く場面があるほか、ラクーン警察ではタンクローリーの横転もあります。
そしてリサ・トレヴァーにまつわるエピソードは……これ以上説明するのは野暮なので、あとは自分で目撃してください。正直に言うと、けっこう賛否が分かれる作品であることは確か。でも僕はかなり楽しめたし、ストレスが吹き飛ぶ爽快感も味わえました。なかなかいいですよ、ぜひ見てみてください。
▽「名探偵ピカチュウ」(2019年/97分/ロブ・レターマン監督)
胸キュン要素てんこ盛り、現実にいそうなポケモンたちに心奪われる
世界的人気を誇る日本発のゲーム「ポケットモンスター」シリーズの「名探偵ピカチュウ」を、ハリウッドで実写映画化。「デッドプール」シリーズのライアン・レイノルズが、名探偵ピカチュウの声を担当しています。
【あらすじ】
かつてはポケモンが大好きだった青年ティム(ジャスティス・スミス)は、ポケモンにまつわる事件の捜査へ向かった父ハリーが家に戻らなかったことをきっかけに、ポケモンを遠ざけるように。ある日、ハリーの同僚・ヨシダ警部(渡辺謙)から、ハリーが事故で亡くなったと知らされる。父の荷物を整理するため、人間とポケモンが共存する街ライムシティへ向かったティムは、自分にしか聞こえない人間の言葉を話す“名探偵ピカチュウ”と出会う。かつてハリーの相棒だったという名探偵ピカチュウは、記憶を失っていたが、ハリーはまだ生きていると確信していた。
本作が大ヒットした理由のひとつは、やはりポケモンたちの愛らしさ! ライムシティの風景と自然になじむ佇まいが、「本当に現実にいるのでは……?」と思わせてくれます。なかでも、ともに事件を追うティムとルーシー(キャスリン・ニュートン)のパートナー、ピカチュウとコダックが、抱きしめたくなるほどのかわいさなのです。
公開時には、渋い表情を浮かべるピカチュウ、通称“しわしわピカチュウ”も話題に。しわしわ顔、森のなかを駆けずり回った後のちょっと汚れた感じ、コーヒー中毒でおっさんのような性格。もともと限界突破レベルでかわいいピカチュウに、誰もが胸キュンしてしまう要素が「これでもか!」とばかりに詰め込まれているため、もう最強なんです。
そして冒頭から、人間とポケモンが手を取り合って暮らす街・ライムシティの世界観に引き込まれてしまいます。人間の隣には当たり前のようにポケモンがいて(強面のヨシダ警部の隣にも!)、ポケモンがそれぞれの特性を生かして働いていたりもする(ゼニガメが消火活動に駆り出されている……)。ポケモンど真ん中世代の筆者にとっては、何度も夢想した世界が鮮やかに広がっていました。公開時に劇場を出たあと、ポケモンのいない現実に虚無感がこみ上げてきたので、先にぬいぐるみを準備しておくのも手だと思います。
キャラクターと世界観の素晴らしさはもちろん、冒険や謎解きも最後まで楽しめますし、人間とポケモン、父と子のエピソードに、気付けば涙してしまうはず。ポケモンが大好きな子どもたちだけではなく、大人たちも楽しめる、強度のある物語に仕上がっています。エンドロールもゲーム愛に溢れているので、お見逃しなく!
【インタビュー】ライアン・レイノルズ、“魂がピカチュウに乗り移る”壮絶な体験…「名探偵ピカチュウ」を語る
▽「モータルコンバット」(2021年/110分/R15+/サイモン・マッコイド監督)
真田広之&浅野忠信の雄姿 血しぶき飛び散る“フェイタリティ”を見よ!
世界的人気を誇る対戦型格闘ゲームで、1995年にも一度映画化されている「モータルコンバット」を、新たに実写映画化。
【あらすじ】
胸にドラゴンの形をしたアザを持つ総合格闘技選手コール・ヤング(ルイス・タン)は、自身の生い立ちを知らないまま、金を稼ぐために戦う日々を送っていた。そんなある日、魔界の皇帝シャン・ツン(チン・ハン)がコールを倒すため、最強の刺客サブ・ゼロ(ジョー・タスリム)を送り込む。コールは特殊部隊少佐ジャックス(メッカド・ブルックス)に言われるがまま女戦士ソニア・ブレイド(ジェシカ・マクナミー)と合流し、地球の守護者ライデン(浅野忠信)の寺院へ向かう。そこでコールは、太古より繰り広げられてきた格闘トーナメント「モータルコンバット」の存在と、自分が魔界の敵と戦うために選ばれた戦士であることを知る。
海外版ゲームを一度だけプレイしたことがあります。いまとなってはアナログ感あふれるシンプルな格闘ゲームなのですが、この最新の映画版は、よくぞここまで見ごたえあるエンタメに昇華させることができたなと舌を巻くほどの出来栄え。最新のVFX技術、世界各国から集結した肉体派俳優たちの熱演、格闘大会と家族の物語を軸とした、シンプルながらも胸を熱くするバランスの良い物語展開で、110分があっという間。続編製作が決定したのも納得です。
日本からは国際的に活躍する俳優ふたりが参戦。昨年惜しくも亡くなられた、ハリウッドスターでもあった千葉真一さんから受け継がれたキレッキレのアクションをスコーピオン役の真田広之さんが世界に魅せつけます。ライデンを演じた浅野さんの、手から雷を発し、笠の下から覗く光るレーザー眼というキャラ造形もミステリアスでたまりません。
日本のふたりのみならず、アジア系の人々にはなじみのある描写が数多くあるのも、この映画の面白さのひとつ。そして特筆すべきは、格闘シーンの血しぶき飛び散るゴア描写。うおっ!と声をあげたくなる残酷なシーンも多いので、苦手な方はお気をつけて、お好きな方は存分に楽しんでください。2月25日からNetflixでの配信もスタートします。
▽「ソニック・ザ・ムービー」(2020年/100分/ジェフ・ファウラー監督)
ゲームと同じ爽快感+キャラの愛らしさ=最強!
セガの人気ゲーム「ソニック」シリーズをハリウッドで実写化した作品。主人公ソニックの声を「スター・ウォーズ フォースの覚醒」でBB-8の声を担当したベン・シュワルツさんが務め、日本語吹き替え版では中川大志さんが担当しています。
【あらすじ】
宇宙最速で走るパワーを持つ青いハリネズミのソニック(声:シュワルツ)が、ひょんなことから出会った保安官トム(ジェームズ・マースデン)の相棒となり、ソニックのスーパーパワーを狙うドクター・ロボトニック(ジム・キャリー)の野望を阻止するために大冒険を繰り広げる。
ソニックが走るシーンの疾走感&爽快感が最高なだけでなく、魅力あふれるキャラクターにも心を奪われました。ゲームではクールなイメージのソニックでしたが、本作では“孤独だった”という要素がプラスされ、思わず心のなかでソニックを抱きしめたくなるようなシーンも。鑑賞後には「ソニック、これからも幸せでいてね」と願わずにいられない多幸感に包まれます。
敵となるロボトニックを演じたキャリーさんは、まさに“怪演”という言葉がぴったり。「マスク」の頃を彷彿とさせる顔芸のほか、生き生きと謎のダンスも披露しています。やっぱりジム・キャリーはこうでなくっちゃ。今年の夏には続編「ソニック・ザ・ムービー ソニック vs ナックルズ」の公開も控えているので、お楽しみに。
【インタビュー】中川大志の飽くなき探求心 ソニック役への強い思い「声優の勉強をする場ではない」
▽「サイレントヒル」(2006年/126分/クリストフ・ガンズ監督)
ラジオのノイズに、懐中電灯の明かりで浮かび上がる赤黒い世界。自分では動かすことのできないゲームの恐怖がここに。
1999年にコナミが発売したホラーアドベンチャー「SILENT HILL(サイレントヒル)」。リメイクを含め9タイトルが製作され、全世界で累計860万本以上を記録し大ヒット、いまなお世界中にファンがいるゲームです。本作は、ゲームの1作目をベースにオリジナルストーリーで実写映画化。ゲームシリーズの音楽を担当している山岡晃が製作総指揮として携わっています。
【あらすじ】
シルバ夫妻は、娘のシャロン(ジョデル・フェルランド)の夢遊病と「サイレントヒル……」という呻き声に悩まされていた。母のローズ(ラダ・ミッチェル)は、アメリカ・ウエストバージニアにサイレントヒルという街があることを探り当て、シャロンを連れてその街に向かうが、サイレントヒルは地下火災がいまなお続く廃墟となっていた。閉鎖された街に無理やり向かったローズだったが、少女が車の前に現れ事故を起こしてしまう。頭を打ったローズは気を失うが、目を覚ますと隣に乗っていたはずのシャロンがいなくなっており、灰が降り注ぐサイレントヒルの街で探し回るのだが……。
車の事故の後、灰が降り注ぐ真っ白な街のなかで突然聞こえるサイレン、そして下りる帳。もうこの時点で、この後に待つ恐怖に体が強張ってしまいます。真っ暗のなか、懐中電灯ひとつで建物内を進むローズと一緒に、動く“なにか”におびえながら進んでいくと、現れる異形の者ども。もうローズとともに叫びだしそうになります。
ゲームでも“なにか”が近づくと起こるラジオのノイズ音は、映画でも恐怖への入り口として不気味さを強調しています。しかし、ゲームとは違いコントロールすることができないローズは、こちらの覚悟を待たずしてどんどん進んでいってしまう……。「ちょっと待ってくれー」と思いつつも、サイレントヒルの秘密が徐々に見えてくると、どんどん前のめりに見入ってしまいます。ただ怖いだけではない、その先のストーリーの深さに、見終わった後は思わずゲームの購入画面を開いていました。
ゲーム「サイレントヒル3」をもとにした続編映画「サイレントヒル リベレーション3D」も製作されているので、いま一度サイレントヒルに足を踏み入れたい方は是非。