コラム:編集長コラム 映画は当たってナンボ - 第20回
2008年10月23日更新
第20回:シャイア・ラブーフとジェラルド・バトラーの動員力は?
東京国際映画祭が幕を開けた。オープニングセレモニーは麻生首相も参加して、なかなかの盛り上がりを見せたようだ。だが、出品作のラインナップを見る限り、内容的には今年も今ひとつというのが正直な感想。例年、東京国際映画祭が始まると、東京地区の劇場映画の興収がやや落ちると言われているが、今年に限ってはあまり影響はないだろう。
さて、この週末は「スターパワー」という観点から2本のハリウッド映画の成績に注目してみた。まずはシャイア・ラブーフ主演の「イーグル・アイ」。駅貼りの広告では、シャイアよりも製作総指揮のスティーブン・スピルバーグの方が大きな文字になっていたのには苦笑させられたが、シャイアは昨年の「トランスフォーマー」(興収40億円)そして今年の「インディ・ジョーンズ4」(興収47億円)に続き、スピルバーグ作品では早くも3度目の主演(あるいは主演級)にして、一枚看板を背負った格好だ。
その「イーグル・アイ」、日本でのオープニング成績は、公開2日間で動員19万2500人、興収2億4900万円で、ランキングでは2位。どうにか興収10億円は超えそうなスタートである。全米では9月に公開され、オープニング週末は1位を記録、累計では8000万ドル(約80億円)ほど稼いでいる。現在も続映中で、最終的には1億ドル近辺までたどり着きそうだ。
全米の成績からすると、日本でも15~20億円ぐらいの興収が欲しいところだが、さすがにそこまでは難しそう。この手の大型アクションの主演を張るには、シャイアはまだまだ軽い印象だ。少なくとも日本ではそう見える。
それとは逆に、来日キャンペーンなどで独特の存在感を放っていたのが「P.S.アイラヴユー」のジェラルド・バトラー。バトラーは正統派二枚目俳優の部類に入るが、04年の「オペラ座の怪人」は仮面姿で42億円、06年の「300」はムキムキ姿で15.6億円を稼いでおり、実績は十分。今回はラブストーリー、しかも素顔でコスチュームもナシということで、どんな成績を叩き出すのか注目していた。
しかし「P.S.アイラヴユー」のオープニング成績は、2日間で動員10万7600人、興収1億4700万円。ランキングでは「イーグル・アイ」に続く第3位で、最終的には興収5~7億円あたりが妥当な線だ。全米での興収は5300万ドルぐらいあったので、正直、物足りない。こちらも15億円ぐらいは売り上げて欲しかった。
いま、日本でもっとも動員力の高いハリウッドスターはウィル・スミス、続いてジョニー・デップ、トム・クルーズといったところだが、レオナルド・ディカプリオやブラッド・ピットあたりの、それに次ぐグループにだいぶ陰りが見えている。
例えば、ディカプリオの場合、マット・デイモンやマーク・ウォールバーグらと共演した「ディパーテッド」が興収15億円、ジェニファー・コネリーと共演の「ブラッド・ダイアモンド」が10億円。ブラピの場合は「バベル」が20億円、「オーシャンズ13」は32億円だが、これらは彼の主演作ではない。そして、今年タイトルロールを張った「ジェシー・ジェームズの暗殺」は興収1億円にも届いていない。
今回の、シャイア・ラブーフとジェラルド・バトラーの成績は、いずれもやや物足りないものではある。しかし、ディカプリオやブラピなどと、実はそれほど大きな差はないということも分かった。
もちろん、作品の内容や出来にも左右されて当たり前ではあるが、出ればコンスタントに20億円、30億円というような動員力のあるスターが、もう何人か欲しいところである。
さて、この週末には、小品ながら「ブーリン家の姉妹」に注目してみたい。今度は女優部門である。ナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンの共演が話題のこの作品、2人のスターパワーや如何に。(eiga.com編集長・駒井尚文)
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi