本作が公開された当時、私は独りで映画館に通うということをかなり頻繁にしており、特にどんな映画なのかは考えずに「とりあえず見てみよう」という気持ちで見てみたうちの一作である。
冒頭、いきなり18禁のような描写で始まりドキッとさせられるが、それも見終わってみれば独特の後味を演出するための重要なエッセンスとなっており、冒頭からラストまで見逃すことが出来ない。
私が何より驚いたのは、なんと映画の上映中ではなかった。
エンドロールが流れ切り、場内にうっすらと照明が点灯して「さあ帰るか」と思ったその時のことである。
本作を私と同時に鑑賞していた若い女性たちのすすり泣きがそちこちから聞こえたのだ。
当時、30代だった男の私にはわからない何かが本作には鮮やかに描かれており、若い女性たちのハートを射抜いていたのだ。私は映画そのものを直接鑑賞したことよりも、その若い女性たちの悲しみの感情、涙に感動させられ、しばし呆然となったのであった。
ひとりの頼りがいのある男性が、死を避けられない病に罹患していることを知り、パートナーを残して旅立たねばならないと知った際、自らの死後も彼女に力を与えようとして生前に書き溜めた手紙を母に託して、本人は既にこの世の人ではないにもかかわらず妻を励まし続けようとする本作のストーリーは、間違いなく感動的なものであるが、この映画を見たことによって私が知った女性目線で想う「愛の在り方」は、その後の私の人生観に大きなプラスの影響をもたらした。本作によって結婚が叶ったと言っても過言ではない。
多くの若い女性に、また男性諸氏にも観てもらいたい名作中の名作である。