コラム:編集長コラム 映画は当たってナンボ - 第17回

2008年10月6日更新

編集長コラム 映画は当たってナンボ

第17回:「アイアンマン」首位も、日本では低迷続くアメコミ映画

首位デビューを果たしたが、 最終的には全米には遠く及ばない見込み
首位デビューを果たしたが、 最終的には全米には遠く及ばない見込み

週末の国内映画ランキングでは、「アイアンマン」が首位デビューを果たした。初日・2日の成績は動員16万3200人、興収2億1100万円というもので、最終的には興収12~15億円程度にとどまりそうなレベルである。8月公開の「ダークナイト」が2日間で2億1900万円(先行上映除く)なので、これとほぼ同等の成績。今年の全米市場では、「ダークナイト」が興収5億2400万ドルで年間首位、「アイアンマン」が3億1800万ドルで同じく2位と、今年の稼ぎ頭の2本をアメコミ映画が占めたのだが、日本ではいずれも興収10億円代にとどまりそうな雰囲気である。これは全米の3~4%に過ぎない。

ちなみに、「スパイダーマン」はこれらに比べると、日本でもきっちり仕事をしている。1作目が興収75億円(全米興収4億0370万6300ドル)、2作目が67億円(3億7358万5800ドル)、3作目が71.2億円(3億3563万0300ドル)とそれぞれ日本でも全米の20%前後稼いでいる。だが、同じアメコミとは言え「スパイダーマン」が“等身大のヒーロー”で、ファミリーでも楽しめるのに対し、「ダークナイト」や「アイアンマン」は、“大富豪でしかもヒーロー”であり、どちらかというと大人向け。カブリものをしたヒーロー映画を大人が見るというのは、日本ではちょっと厳しいのかも知れない。

改めて国内ランキングを見てみよう。

1 (初)「アイアンマン」(ソニー)
2 ( 1)「ウォンテッド」(東宝東和)
3 ( 2)「パコと魔法の絵本」(東宝)
4 ( 4)「おくりびと」(松竹)
5 ( 3)「20世紀少年」(東宝)
6 (初)「イキガミ」(東宝)
7 ( 5)「崖の上のポニョ」(東宝)
8 (初)「最後の初恋」(ワーナー)
9 ( 6)「大決戦!超ウルトラ8兄弟」(松竹)
10 ( 7)「ハンコック」(ソニー)
*(全国動員集計)興行通信社提供。カッコ内は前週の順位。

この姿形では、日本では難しいのか
この姿形では、日本では難しいのか

相変わらず東宝作品が10本中4本を占める好調ぶりだが、今週初登場で6位にとどまった「イキガミ」が意外にも不調。公開2日間で興収1億3400万円というのはだいぶ物足りない(それでも興収10億円程度は稼ぐのだが)。これ以外の東宝作品は、「パコ」は順調に推移しているものの、「20世紀少年」が30億円を超えてやや足踏み。また「ポニョ」が9月いっぱいまでで145億円強まで来たが、こちらもペースを落としている。「デトロイト・メタル・シティ」は興収20億円はクリアしたが、トップ10圏外に消えた。

秋になって、ちょっと一息ついた感もある東宝作品群ではあるが、何と今年1~8月の東宝の累計興収は522億円を突破し、歴代最高記録ということである。アメコミヒーローが束になってもかなわない。(eiga.com編集長・駒井尚文)

筆者紹介

駒井尚文のコラム

駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。

Twitter:@komainaofumi

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