「アウトレイジ」VS「孤狼の血」の結末は? : 細野真宏の試写室日記

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コラム:細野真宏の試写室日記 - 第5回

2018年5月8日更新

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)

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第5回 「アウトレイジ」VS「孤狼の血」の結末は?

2018年4月23日@東映試写室

GWが明けても「名探偵コナン ゼロの執行人」がハリウッド大作や邦画実写大作を押しのけて期待通りの好調を記録していて、日本の映画業界におけるアニメーション映画の重要性が色濃くなってきています。
中でも注目しておくべき点は、邦画の実写が少し不調気味なことです。

これは、いわゆる「スイーツ系映画」といわれる「学生の恋愛映画」があまりにも多く企画され、良作もある一方で、一昔前の韓流ブーム時代に公開されていたような「・・・・・・・」な作品も増えてしまったのが原因にあります。
そこで、邦画の実写も変わらないといけないのですが、まさにそんな戦いに挑もうとしているのが今週末公開の「孤狼の血」なのです。

画像1 (C)2018「孤狼の血」製作委員会

この映画はいろんな意味で興味深い面があります。

まずは「東映」のジレンマとしてあるのが、「仮面ライダー」「戦隊もの」シリーズや「プリキュア」などは毎年安定した収益源となっている一方で、「実写映画」がそこまで安定的にヒットできていないことです。

ただ、東映が作る「テレビドラマ」は好調を続けていて、地上波の連続ドラマの視聴率が1桁台が当たり前になりつつある今、東映の作り出す刑事もの作品は、今クールでは「特捜9」「警視庁・捜査一課長」は軒並み2桁を続ける快進撃を繰り広げていたり、「相棒」「科捜研の女」などの定番ヒットコンテンツもあります。

ところが、肝心の「実写映画」となると、なぜか結果が出ない、という状況からなかなか抜け出せていません。

これは、日本の「少子高齢化」という人口構成の変化もあって「テレビドラマを見ている層」と「映画館に映画を見に行く層」にズレが出てきていることも大きな構造としてあるのです。

ただ、突破口は無くはないのだと思います。

一つは、今まさに大ヒットしている「名探偵コナン ゼロの執行人」は、映画「相棒」の理想形とも言えます。

つまり、「相棒」の骨太な構造を保ちながらも、コナンのようなスカッとした作りにすれば、「相棒」も再び映画で大ヒットが期待できるのです。

画像2 (C)2017「相棒 劇場版IV」パートナーズ

もう一つは、「原点回帰」というべき、「クリエイター集団としての東映の威信をかけたような本格的な作品」を作ることだと思います。

そもそも東映は、1956年の警察映画「警視庁物語」シリーズから、1973年の「仁義なき戦い」から始まった実録やくざ映画での実績があって今のテレビドラマの好調を作り出せている面もあるわけです。

まさに、今回の「孤狼の血」は、そんな東映だからこそ作れた作品だと思います。

とは言え、2つだけ心配もあります。

1つ目は、当時と時代が変わって「コンプライアンス」などが叫ばれる時代の中で、いわゆる「任侠もの」が果たしてどこまで今の世の中に響くのか? ということです。

ただ、そんなに心配しなくてもいいのかもしれないのは、北野武監督の功績があります。2010年に「アウトレイジ」が公開され、公開規模が155館程度でありながら興行収入は7.5億円を記録しました。

この映画を見たときは正直、「え、こんな世界を思いっきり描いて大丈夫なの?」と個人的には心配をしてしまったのですが、杞憂だったようです。

そして、続編の「アウトレイジ ビヨンド」(2012)はかなり出来が良くなって純粋に面白い作品にまで進化してくれました。出来が良かったので口コミの効果もあり興行収入は14.5億円を記録し、その勢いで「アウトレイジ 最終章」(2017)は興行収入が15.9億円と右肩上がりで幕を閉じました。

画像3 (C)2017「アウトレイジ 最終章」製作委員会

ちなみに、「アウトレイジ」と「孤狼の血」は、どちらが出来が良く、面白いのか、というと、私は総合的には「孤狼の血」の方が良いように思えます。(「アウトレイジ ビヨンド」については非常によく出来ていましたが)

この2作品の大きな違いは、「アウトレイジ」は「やくざの組織」をメインに描いた映画で、「孤狼の血」は「警察官」をメインに描いた映画、ということでしょうか。

とは言え、「孤狼の血」の主役である警察官の役所広司は、半分「やくざ」のような感じですが(笑)。

もう一つの心配は、監督が白石和彌だということです。世間で注目されるきっかけとなった「凶悪」(2013)が象徴しているように、普通の監督と少しだけ感性が変わっていて、少しエグいシーンを好む傾向があります。

ただ、本作は「凶悪」などと比べると、白石監督にしては映像は随分と抑えられているようには思いますが、さて世間の反応は・・・?(笑)。

孤狼の血」は脚本がドラマ版の「相棒」も手掛ける池上純哉なので、「アウトレイジ」ほどには人間関係が入り組んでいなく作品の世界に入りやすいと思います。

続編ができるとしたら、きっと松坂桃李がメインになると思われますが、「娼年」などでこれまでの殻を打ち壊そうとしている松坂桃李がぶっ壊れる役柄も見てみたいので、興行収入10億円は突破してほしいと期待しています。

[筆者紹介]

細野真宏

 細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

 首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。

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