コラム:細野真宏の試写室日記 - 第47回

細野真宏の試写室日記

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)

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第47回「ターミネーター ニュー・フェイト」。ようやく正統な続編の登場で、28年間という時間の審判はどう下る?

2019年11月1日@FOX試写室

今から35年前の1984年にアメリカで公開され、俳優アーノルド・シュワルツェネッガーを一躍スターダムに押し上げたジェームズ・キャメロン監督の最初の大ヒット作「ターミネーター」。

この「ターミネーター」の製作費は、わずか640万ドルだったので、世界興行収入が7800万ドルを突破したのは異例な大ヒットでした。

そして、1991年公開のジェームズ・キャメロン監督の「ターミネーター2」は製作費も1億200万ドルと大幅にアップし、世界興行収入で5億2000万ドルを突破し、アカデミー賞では「視覚効果賞」「メイクアップ賞」「音響賞」などを見事に受賞し、名実ともに「名作」となりました。

ただ、「ターミネーター2」以降は、権利関係等の問題で、「ターミネーター」には欠かせないはずの生みの親のジェームズ・キャメロン監督が関係のない形で制作されていたのです。

具体的に映画では2003年に「ターミネーター3」、2009年に「ターミネーター4」、2015年に「ターミネーター:新起動 ジェニシス」が作られてきました。さすがに「ターミネーター3」はそれまでのイメージによる期待があって、興行収入は日本で82億円を記録しました。

ところが、「ターミネーター4」の日本の興行収入は33億2000万円と大幅に下がり、世界興行収入も同様に下がり、大赤字になってしまい制作会社が破産するなど、「制作権」が宙に浮いて競売にかけられるまでになったのです。そして、続く「ターミネーター:新起動 ジェニシス」では、日本の興行収入は27億4000万円となりました。

ちなみに、「ターミネーター3」はRotten Tomatoesでは、批評家の評価69%、一般層の評価46%、「ターミネーター4」は批評家の評価33%、一般層の評価54%、「ターミネーター:新起動 ジェニシス」は批評家の評価27%、一般層の評価53%となっていて、 私の個人的な評価は、批評家票とほぼ一致します。

簡単な私のイメージでは、「ターミネーター3」までは何とか自分を納得させられましたが、それ以降は、だんだん何を見ているのか分からなくなってきた感がありました。

さて、そんな紆余曲折がありながら、ようやく「ターミネーター2」から28年経った今年、生みの親であるジェームズ・キャメロンの下での「ターミネーター」が復活します!

その名も「ターミネーター ニュー・フェイト」。Rotten Tomatoesでは、批評家の評価70%、一般層の評価84%(すべて2019年11月6日時点)となっていて、これまでの続編とは比較にならないほど一般層の評価も高いことが分かります。

確かに実際に私が見てみても、文字通りの“正統な続編”と言えます。

ターミネーター」の象徴的な主役はアーノルド・シュワルツェネッガーではありますが、本来の主役は、人類滅亡の未来を変えるために奮闘し続けるリンダ・ハミルトン扮するサラ・コナーでもあります。

この2人が、その後を“ありのままの姿”で演じているわけです。

本作「ターミネーター ニュー・フェイト」を見て改めて実感したのは、名作の続編を制作する難易度です。

なぜなら、1984年の「ターミネーター」での人工知能「スカイネット」が指揮する機械軍、という設定は近未来感がありましたが、現在の社会ではAI(人工知能)が目に見える形で急速に進化し続けているため、よりリアリティーが求められますし、完璧とさえ思えた「ターミネーター2」から、さらに映像世界は進化し続けているので、それに慣れた今の観客に納得させる映像を見せる必要があったりするからです。

同様に、「ターミネーター2」でのT-1000という敵方のターミネーター(人類の歴史を終わらせるもの)は、未だに未来型の恐ろしい敵でしたが、それ以上の敵も構築する必要があります。

本作「ターミネーター ニュー・フェイト」ではジェームズ・キャメロンは製作・ストーリーで関わり、監督はジェームズ・キャメロン自身が選んだ、大ヒット作「デッドプール」のティム・ミラーが務めています。

そして、このコンビは、リアリティーのある「スーパーソルジャー」や、T-1000を超える「REV-9」を構築するなど、これらの難題を超えるミッションに成功したと思います!

あとは、28年間の紆余曲折の間に離れていったりした観客がどのように反応してくれるのか、にかかっています。

先週末に公開されたアメリカでは、アメリカの配給元の見通しを少し下回ったようです。

ただ、日本では「ターミネーター2」が地上波で10回以上もプライムタイムで繰り返し放送され人気を博し続けてきているので、リアルタイムで知らない人でも「ターミネーター2」の完成度や面白さは十分に実感しているはずですし、その映画史に残る「ターミネーター2」の“本当の続編”であるのなら興味を抱く人は多いと思います。

そのため、まずはこれまでの続編のラインであった興行収入30億円には到達してほしいところですが、果たして日本では28年間という時間を経て観客の「審判」はどう下るのか、公開日の11月8日(金)から注目です!

なお、今はジェームズ・キャメロン監督は「アバター」の続編の制作に追われているので仕方ないですが、個人的には、今後の「ジェームズ・キャメロン監督作としての続編」の実現にも期待したいところです。

本作「ターミネーター ニュー・フェイト」は、確実に「ターミネーター2」の“正統な続編”と言えますが、強いて言えば、ジェームズ・キャメロン監督自らが作っていれば、恐らく(過去の「ターミネーター」から「ターミネーター2」への変貌のような)さらに大きく想像を超えた作品になったと思うからです。その意味からも、何とか次の続編が作られる条件はクリアしたいところですが、その点からも本作の興行収入には注目したいと思っています。

筆者紹介

細野真宏のコラム

細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

 首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。
 10年連続完売を記録し続けている『家計ノート2020』が遂に完成し、「老後に2000万円が必要って本当?」も詳しく解説!