コラム:細野真宏の試写室日記 - 第11回

2018年8月15日更新

細野真宏の試写室日記

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)

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第11回 「銀魂2」。まさか本当に福田雄一監督作品がメジャーになる日が来るとは!

2018年8月14日@ワーナー試写室

今年の夏休み映画は、想定通りかなり景気の良い状態になっていますが、やはり気になり続けていたのは、「銀魂2 掟は破るためにこそある」です。

「銀魂2」の本編でも軽いノリで出てくるように、何と言っても「2017年の実写邦画でNo.1の成績を記録した作品」ですからね。

とは言え、前作「銀魂」の興行収入は38.4億円です。

今年でいえば、「劇場版 コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」はおそらく興行収入90億円は行きそうな雰囲気がありますし、社会現象化してくれると100億円台も夢ではないと思います。

万引き家族」はすでに43億円を突破していて、奇跡的な展開を想像すると、9月にアカデミー賞の日本代表に選ばれ、さらにアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、「おくりびと」のように受賞!といったことも考えられなくはないので、まだまだ伸びていく余地はあります。

画像1

こういう背景を考えると、「銀魂2」の最大のライバルは、やはり「銀魂」でしょうか。

まず、そもそも私は「銀魂」という作品は、昨年の映画で初めて見たので、「銀魂」ファンに比べれば全然「銀魂」の面白さをわかっていないレベルだと思います。

だから、昨年に「銀魂」を見た時に「これが今年の邦画No.1になるんだろうな」とは想像もしていませんでした。

何を思っていたのかと言うと、福田雄一監督初のメジャー作品を見て、「やっぱりメジャー作品になっても福田監督作品のテイストは良い意味で変わらないな」と嬉しく思っていました。

初めて監督を務めた「大洗にも星はふるなり」(2009年)から、「まだ洗練されてはいないけれど、尖ったユーモアセンスをもった面白い人が出てきたな」と注目していたのです。

その後も「コドモ警察」など、本当にどうでもよかった作品(失礼…)も多く見続けてきましたが、「女子ーズ」は「どうでもよさそうな傑作」でどうしてこれが世間的に全く評価されないのか、と軽く不満も出るようになっていました。

ただ、まさにそれから2作を経て「銀魂」というメジャー作品の監督になり、それが多くの一般の人たちにも受け入れられていたので、ようやく安心した感じなのです。

この流れで注目したいのは、「銀魂」以降の福田雄一監督作品の興行収入です。

斉木楠雄のΨ難」「50回目のファーストキス」は共に興行収入10億円を突破しているのです。

これらは、「銀魂」前に作っていたら、正直10億円は行かなかったと思っています。

つまり、「銀魂」以降、福田監督のファン層が増えてきていると想像できます。

もちろん、ムロツヨシ佐藤二朗といった「福田組」の演技にハマってきた人も少なくないとは思いますが……(笑)。

画像2

さて、「銀魂2」の出来はどうだったのか、というと、とても良いと思います。

私は、個人的には前作のようなユルーいギャグテイストのほうが好きですが、今回は予算も倍増されたからか、かなりアクションシーンにも力が入っています。

唯一の心配は、冒頭で書いたように夏興行は景気が良く、まさに世界最強のアクションシーンのある映画がいくつも公開中なので、「銀魂2」がどれだけ競合作品より興味を奪えるかにかかっているのかもしれません。

そこで、最後にアピールをすると、「コードブルー」にしても、「インクレディブル・ファミリー」も「M:I」も出来はとてもいいですが、コメディー要素はそこまで強くないですよね? つまり、まだ夏興行にはコメディーが少なかったので「銀魂2」で、ちょうどバランス良く全方位的な作品群が映画界に生まれるのではないでしょうか。

そんな「隙間」を捉えてうまくパフォーマンスできたら、「銀魂2」は最大のライバルである前作「銀魂」を超えられそうな気がしますが果たしてどうなるのでしょうか。

ちなみに、たとえ原作が終わっても、この出来であれば「銀魂」は映画でシリーズ化していくと思われます。

筆者紹介

細野真宏のコラム

細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。

発売以来15年連続で完売を記録している『家計ノート2025』(小学館)がバージョンアップし遂に発売! 2025年版では「全世代の年金額を初公開し、老後資金問題」を徹底解説!

Twitter:@masahi_hosono

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