ダンケルクのレビュー・感想・評価
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「1.43:1」のIMAX画面比率による圧倒的な絵力、映画館で味わってほしい体感型映画
日本公開時、日帰りで109シネマズ大阪エキスポシティに見にいったときにも感銘をうけましたが、都内でIMAXの「1.43:1」バージョンが見ることができるのは本当に嬉しいことです。
降伏をうながすビラが空からヒラヒラと舞い落ちてくるファーストカットから、この画面比率ならではの効果に「おっ」と思わせるものがあって、大スケールの映像美に魅せられます。全体的にセリフは少なく、厳しい状況下での撤退戦を、淡々と「絵力ありまくりの画面」で語るタイプの作品です。
チクタクと秒針が進む追いたてられるような音楽で緊張感をあおり、座っている椅子がブルブルと震えるような戦闘音が時折ズガーンとくる音響も最高で、IMAX版を3回見た「ゼロ・グラビティ」と同じ、映画館の映像と音響でしか味わえない魅力がとても大きい“体感型映画”です。
苦しい戦時体験とカタルシスのバランス
クリストファー・ノーランは、戦争についてのイデオロギーは極力排し、観客に戦場を体感させることに主眼を置いた。英雄賛美も戦争反対の大きな声も手垢がつきすぎてしまった現代で戦争を語ることの困難さがこの映画には溢れている。
暗くどぎついことの連続である浜のシーンで、人は戦場の苦しさを嫌というほど体感するだろう。しかし、観客に与える苦しみは「サウルの息子」ほど徹底されず、救助の民間船のエピソードでは、希望やヒロイズムが謳われる。
戦場を体感させたい、しかし苦しみを強いるだけの鑑賞体験では観てもらえない。ノーランはそのジレンマに向き合った。
机上の空論を振りかざすことをやめ、生々しい戦場に向き合わなくてはならない。しかし、映画としてのカタルシスなくして、多くの人に訴える力があるのかどうか。
非常に難しいバランス感覚だが、見事にこの困難な戦時体験映画を商業映画として成り立たせ大ヒットに導いたノーランの手腕は見事だ。
言われたくないだろうけれどぜひ大阪IMAXレーザーで。
正直、普通の映画館で観た時はピンとこなかったが、フィルムにこだわりIMAXを推奨するノーランが可能な限りIMAX70mmで撮ったのだから、ノーランが本来想定しているであろう1.43:1のアスペクト比で観てみようと、唯一1.43:1で上映している大阪エキスポシティのIMAXレーザーに行ってみた。
結論を言うと、別物、まったくの別物だ。フィルム時代のIMAXを知る人は、デジタルIMAXであの時の衝撃を味わえず歯痒い思いをしたことがあると思うが、デジタル上映とはいえフィルムのIMAXの持っていた広大な空間の広がりを、三度目のIMAXレーザーで初めて感じた。
大仰に思えた音響もこの巨大なスケールだとピタリとハマる。ストーリー的な不満は解消されたわけではないが、IMAXレーザーの「ダンケルク」、観られるうちにぜひ一度とお勧めしたい。最安だと東京からだと深夜バスで平日片道約3000円。その価値はあると思います。
戦争映画に「時間」の概念を絡ませた異色作
もぬけの殻となったダンケルクの市街地を抜け、海岸線がスクリーンいっぱいに広がった瞬間、これまでに感じたことのない映像の深遠さが胸を貫いた。そしてここから陸・海・空の3つのタイムラインを駆使したダンケルクの撤退作戦が展開するなんて誰が予測しえただろう。
さすがノーラン作品には「時間」という概念が密接に関わってくる。『インセプション』と同じく3つの異なった時間の尺度を展開させる手法には舌を巻くばかり。その結果、各々のテリトリーが交錯する「点」にて運命がスパークするわけだが、この語り口はもはや戦争アクションを超えた、緻密なるサスペンスの域と言えるだろう。
ちなみに、本作ではトム・ハーディが操縦する戦闘機内に響く無線音声の中でマイケル・ケインのカメオ出演がある。かつてケインが『空軍大戦略』で空を滑空していた映画史を押さえておくと、ノーランの密かなこだわりをさらに深く咀嚼することができるはずだ。
ラスト20分のカタルシスも映画のリアリズム!
強烈な閉塞感が神経を虐め続ける。容赦ない爆撃から身を守ろうとして砂浜にへばり付く兵士たちは、地上という行場のない牢獄で、はたまた閉じ込められたまま沈没していく船内で、遙か眼下の海原を見下ろすコックピット内で、その身を拘束されたまま時間に弄ばれているかのよう。個人の視点から見れば、戦争とは、戦場とは、なんと全体像がつかめない怪物如き存在であることか!?従来の戦争映画が当たり前のように駆使してきた想像の域を出ないCGI仕様の俯瞰映像を頑なに拒絶して、クリストファー・ノーランが提示する新リアリズム。それが映画的な快感と呼べるかどうかは甚だ疑問だ。しかし、延々と続いた怪物からの逃避行が、やがて達成感に変わるラスト20分のスタルシスは、画面の形状に関係なく、観客の心を強く掴み取って離さない。それもまた、映画のリアリズムだと思うのだ。
可能ならIMAX版を観るのが吉
第二次大戦期の英戦闘機スピットファイアを3機も飛ばすだけでもすごいのに、さらにその操縦席後部にIMAXカメラを設置してコックピットからの視点で写すという、ノーラン監督らしいこだわりの映像を満喫できる。敵機との空中戦や、沈没しかかった船から海に飛び降りる兵士たち、浸水し転覆した船内で溺れそうになる若き兵など、縦幅の長いIMAXの画角を活かした構図もふんだんにある。通常の上映はIMAX版の映像の上下をカットして映すので、大げさに言えば「まったく別の映像体験」。
IMAX版でも、フィルム>レーザー>デジタルという映像品質の差があるのだが、残念ながら「ダンケルク」の日本公開は主要な外国よりも1カ月以上遅れているため、これから外国で観ようと思っても場所がごく限られるはず。IMAXフィルムは日本になく、IMAXレーザーは大阪のみ。厳しい状況だが、それでもIMAX版で観る価値は間違いなくある。
ノーランの闇の深さ
人物に内臓が存在しないことが、ノーラン作品のひとつの特徴だと本作をみて強く思った。
兵士は凄惨な大撤退の最中にあり、いつ殺されてもおかしくない状況にいる。空から敵の戦闘機がやってきて撃たれるかもしれない。陸からナチス兵が港を襲うかもしれない。海から乗っている船が襲撃されて沈没するかもしれない。現にそれらの襲撃は起こっていて、多くの同士が死んでいる。あまりにも悲惨な光景。
しかし皆が綺麗に死んでいる。彼らは最低限の流血で死んでいく。腹を撃たれて腸が飛び出るわけでもなければ、爆破で手足が欠損することもない。港が血の海と化さず、綺麗な浜辺を維持していることが逆説的に本作のグロテクスさを語っている。
もちろんその描き方はノーランのスタイルであって、事実の真偽の問題ではない。しかし私は批判的に捉えたいと思う。所詮はノーランも時制を崩したり、SFに傾倒する単なる技術屋だったと。そこに兵士の実存に迫る語りはないし、大撤退を称揚するだけで国家への批判的な視座はないのかと。
かろうじて内臓があると思わせるのは、苺ジャムの食パンによってだ。ボトルに入った水を飲んだり、紅茶が出てきたりと飲む行為はいくつか確認できるが、食べる行為はジャムパンのみではないだろうか。それぐらい食べることに焦点が当てられない。
思えば『TENET』において主人公が武器商人にはじめて会う場面は会食の場ではあるが、彼は席に座り食事をする前に会食の場から出て行ってしまうし、『インターステラー』は宇宙の話だから(!)もちろん食べることは登場しない。このようにノーラン作品では「人物は食べないこと」で一貫されている。ノーランもきっと食に興味がないんだと思う。
だから本作の演出部で消え物担当になった人はかわいそうだと思う。あのノーラン作品の制作に携わり、消え物を担当する一役を買われたのに準備したのは「ジャムパン」のみ。きっと脚本を読み込んで、当時兵士が何を食べていたか調べ、リストを作成していたと思う。そしていざ演出部の会議でリストをみせたらノーランにジャムパンだけでいいと言われてしまうという…
上述のことはもちろん妄想よりのフィクションではある。それでも、もし本作にジャムパンがなければ、彼らがイメージではなく、内臓を持ち合わせたひとりの人間であることは想像/創造されない。それはかなり誇張表現ではあるが、重要なディティールであることは間違いない。
本作はノーラン作品において、史実を扱い戦争/歴史を描く作品だから、『オッペンハイマー』における歴史的側面に着目する上で重要な作品である。私は本作をみて正直、ノーランに政治的な態度は期待できないと思ってしまった。だが『オッペンハイマー』をみて思った。『オッペンハイマー』は『ダンケルク』から確実に進歩しているし、ノーランの政治的な態度はそんなに単純ではないと。そして闇が深いし、生生しい。
美しい風景が
第二次世界大戦に大きな影響を与えた事柄を時系列が絡み合って描かれていて、全体の結果は知っていたけど場所や個々の出来事を知ることができたとても面白い映画でした。
美しき海岸、美しい街並み、美しい海が逆に戦争の不条理、虚しさ、残酷さを引き立てていて空恐ろしくなったが、人の責任感、温かさの描写もあって深みのある内容でした。リバイバルがあれば劇場で観たい映画です。
誰もが主人公
防波堤、海、空とあらゆる角度から
storyが進む
リアルな臨場感あふれる作りに
音楽も大きく関わっている
常に音楽がその場面に応じた音が
心情を表す様に鳴り響いている
空からの映像が素晴らしくて
空の青さと海の青さのコントラストが
美しくて戦争映画なのにと思ってしまうほど
兵士の
人間模様も生きるか生き残れるかの
選択に選択させられる緊張感と
死と向き合いながらの緊迫感
…生きて母国に帰る!
兵士の誰もが強い意思あって
そこから脱落してしまう兵も沢山
兵士たちの生きるための闘い
この兵士たち全員が主人公
どこまでも
諦めない覚悟が皆にある
運よく奇跡的に帰国できた
撤退してきた兵士は
住民からの温かい言葉が掛けられ
また国を守るため新たな戦いに出る
遊覧小型船の船長は
海をことをよく知っていて
人の命を一番としている
……心惹かれる
…戦争を
淡々と描くことで
誰に対しても
客観的に観ることができる
ノーラン監督の史実物としての作品。
上手く作られています
映像とサウンドデザインが素晴らしいノーラン印の秀作
クリストファー・ノーラン監督作品には珍しく104分の尺が観やすくてイイ
フランスのダンケルクという地でドイツ軍の進軍・砲撃によって海岸線に追い詰められた英仏軍が史上最大の脱出作戦を敢行する様をひたすら描き続けるストーリー展開、いわゆるドンパチのバトルシーンで構成される戦争映画とはちょっと毛色が違います
クレジットも出てきますが、陸での1週間・海での1日・空での1時間の出来事を描いている事を理解しないといけません
それを更に細切れにしてクロスカッティングしているため、その大前提を理解していないと終始何やってるのか全然解らず大混乱が生じると思いますが、それだけ理解できれば基本シンプルな話なので映像とサウンドに集中できるかと思います
ほとんどが攻撃&逃げまどう戦争シーンで構成される本作ですが、よくある戦争ものみたいに身体の一部が吹っ飛んだり、無差別に銃が乱射されて兵士が撃たれまくり、血がドバドバ出る描写は全く無く、ただひたすら淡々とやるだけなので、とても観やすいとは思います
これは映画館で観たかった…!!
全編通して、臨場感えぐい!!主観の映像が多くて、登場人物と一緒に戦場を体験する映画!
特に、重油にまみれたまた海に投げ出され、波の上は炎、波の中に入れば溺れ死というシーン…!すごい画だった
内容としては、祖国のために働くお仕事映画もしくは、祖国への帰還劇!ラストシーンのナレーションと映像が、また深い味わいになっている気がする。
フランス兵だから、ドイツ兵だから、や階級によって、船から追い出される、船に載せて貰えない、というのは海上戦ならではだし、ミリタリー映画らしい緊張感があった。
印象に残ったのは、ファーストカットの、ヒラヒラと舞い落ちるビラと街並みと後ろ姿の美しさ!「これはただのミリタリー映画ではないな!?」という期待感!
あと、ダンケルクから帰還する大型船、ダンケルクへ向かう小型船がすれ違うシーンもよかった
あと、もうダメか…ってとこで、小型船が次々と向かってくるシーン!
ミリタリー映画ながら画がめちゃ美しかったな〜!
時間のギミックで遊ぶ感じも、ノーランらしさも全開だったな〜!
時間も100分ちょいと、かなり短い尺なので疲れすぎず、体感型のエンタメ映画として大変楽しめました!
「生への執着」に絞った、戦争ドラマのない戦争映画。
◯作品全体
自分の頭の中にある戦争映画とは、少し違う感覚の映画だった。
映画において戦争ドラマは登場人物が気の合う・合わないを抜きにして、軍隊の規律によって強制的に同じ空間いるのが常だ。その中で衝突したり、理解しあったりすることでドラマが生まれるわけだが、本作にはそうした戦争ドラマコミュニティはほぼ存在しない。
陸を舞台にしたトミーの物語は、一貫して生き残るための脱出口を探し続ける。そこに生身のドイツ兵は描かれず、立ちはだかるのは砲弾と階級や部隊に縛られたイギリス兵だ。後にフランス兵だとわかるギブソンとは長く時間を共にするが、会話らしい会話を一切していないのが興味深い。それによって兵士同士のドラマではなく、生き残ることへの泥臭い執着に焦点が絞られていた。
そして陸から溢れる生存への執着に呼応するように、空からは生存への脱出口を作り出す姿が描かれる。計器が壊れても戦う姿は陸の兵士とは対比的だが、墜落してしまえば生き残るためにもがかなければならないのは陸の兵士と同様だ。
それぞれがもがき、生き残ることで、イギリスという国家も生き残る。この部分は海での物語で遊覧船の船長が「国が滅べば帰る場所はなくなる」と話していたが、ミクロな視点でもマクロな視点でも「生き残るために」に一貫していた作品だった。
生き残るため最善を尽くすことに、多くの言葉はいらない。「ドラマ」よりも「執着」を描いた本作は、戦争映画でありながら戦争ドラマを描かない独特な作品だった。
◯カメラワークとか
・ポジフィルムっぽいグラデーションのかかった空、海の青が印象的だった。
・序盤で街を抜けて海岸にやってきたトミーのカットが良かった。奥に色彩豊かな街があって、手前には鈍色のコンテナが並ぶ。色のコントラストがかっこいい。
序盤はかっこいいレイアウトが多かったけど、後半はアクションが多くて撮り方も普通のアクション映画だったのが少し残念。ラストの燃料が切れた戦闘機のシーンも綺麗ではあったけれど、ちょっとフィクション臭さが強かった。
◯その他
・セリフがほとんどないっていう試みは面白いんだけど、序盤でトミーたちが担架を運ぶシーンで乗り遅れそうなのに「どいてくれ!待ってくれ!」とか言わないの意味わかんないし、ギブソンはフランス人だから喋らないっていう意味付けみたいなものをトミーにも与えてやって良かったんじゃないかなって思った。
怖いけど何か心動かされる
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第二次大戦で英仏連合軍がドイツに攻められ、軍の10万人が孤立する。
国は本土決戦に向けて救援軍を出さず、民間に救出を依頼した。
大きく分けて次の3つの群像劇から成る。
英国陸軍の8人組が脱出船に乗るも撃沈され、オランダ商人の船を奪う。
しかしうち1人が実は仏兵と分かり、重量オーバーのため下船させようとする。
そんな折に乱軍になってみんな何とか助かる。
依頼を受けた遊覧船の船長が命がけでダンケルクに向かう。
で不時着したパイロット2人を助け、さらにダンケルクで大勢救出。
しかし事故で乗組員一人が命を落とす。他にも民間船が集まり大救出劇に。
戦闘機3台が救出作戦の援護に向かうが2人が撃墜され海に不時着。
彼らは上記で救われる。そして残り1人が敵戦闘機を撃墜。
これにより救出作戦は一定の成功を得る。
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やはり戦争は怖いなって思うなあ。色んな狂気が生まれる。
劇場で見たんで、銃弾の音が正直怖かったわ。
みんな助かってって、祈るような気持ちになってしまう。
しかし敵は戦闘機が出るだけで、陸軍も近くにいるはずなのに姿を見せない。
一体どこに敵がいて、どうやってそれから逃れたのかよう分からんかった。
あと日本みたいに生きて帰った兵が叩かれることなく、
よく生きて帰って来たって国民に歓迎されるのが象徴的、これが嫁の感想。
予備知識が必要
説明を極限まで省いた、ダンケルクでの救出劇を描いた作品。ある程度の予備知識を持って鑑賞した方がわかりやすい。
同じ時間軸でいろんな角度から話が進む。似たような兵士が出てきて(顔が汚れてるからか)区別がつかず少し混乱。
動員された民間船が犠牲を払いながらも、兵士への敬意を持って使命を果たすのに胸打たれた。
ゴジラ-1.0でオマージュとなってる場面ありとのことで鑑賞。
3つの視点の臨場感と生死の境
砂浜1週間、救助に向かう船1日、空軍1時間を平行して描きながら、最後に時間軸が交わって合わさるという手法。無駄なセリフや説明を極力省いた映像、カットでシチュエーションや心情を描く。砂浜には、救助を待つ40万人の兵士。相手の攻撃に対しては無防備で、怯えていて戦う意
欲は低い姿で描かれる。船の視点は、民間人が様々な船を持ち寄って徒手空拳で救助に向かう感じ。途中、兵士を拾うが、メンタルやられていて暴力振って、そのとばっちりで弟が亡くなるも、一言も責めない。戦争のせいでそうなった理解していても、ちょっと不自然?父が早く関われば、何とかなったのでは? 船の視点は、兵士を第一に考える、何でも助けてあげたいという心情か。空の視点では、限られた燃料、壊れた燃料計に関わらず、自分のことは後回しにして、メッサーシュミットや相手の爆撃機を撃墜していく英雄的な扱い。実際、最後はエンジンが止まった後も良い仕事をする。
兵士を乗せた掃海艇(砂浜から脱出した脱出した兵士含む)が爆撃されるところで、3つの時間軸が交わる。あのシーンをそれぞれの視点から見ると、こういうドラマが進行していたのかっていう面白さ、物語の交わる感じがあった。神の視点で見れば、こんな感じなのかもしれない。
自分は、満潮を待つ船のシーンが印象に残った。船の横腹に穴が空き、敵の射撃訓練?と騒ぎつつ、穴から浸水。穴を塞ごうとした兵士は銃弾に倒れる。船から出れば人がいることがばれる。そのままいても浸水して沈没。エンジンを動かすが、人がいることがばれるわけでハチの巣へ。上官がいずに、助かろうとしている場面では、合理的な判断ができずに、「お前が先に行け」という、なすり合いになるっていうのがリアルだった。
また、戦場における生死の境は、数十センチ。ちょっとずれていれば砲弾や銃弾の餌食になっていたって描き方も、戦場を雄弁に語っていた。
こういう戦地からの脱出劇をリアルに描いたという意味では、恐らく始めてであろうし、3つの視点をリアルかつ丁寧に描いていて、戦場にいるかのような、確かに監督が言う通り体験的な映画であった。
感情が揺さぶられるということよりも、実際の戦場で脱出しようとする際に起こっていることを重層的に描こうとしたという映画か。
ノーラン印戦争映画
ずっと重苦しい空気が流れ続けて、メインキャストたちが果たして無事に救出されるんやろかとずっと不安に駆られながらの2時間弱でした。
時代は第二次大戦、イギリス、フランスの連合軍がドイツ軍によって北フランスにある港町ダンケルクに追い詰められ、時のイギリス首相チャーチルの決断でダンケルクからの救出を試みる兵士の数なんと40万、大型船を着岸させるための桟橋なども空爆を受けてますます追い詰められていく中、軍艦だけでなく民間の船も兵士たちの救出に向かう、というお話。
実際にあった話なので、おおよそのアウトラインは把握できているものの、もちろん救出前に亡くなった兵士も数多くいたわけで、果たして彼らはどっちなのよ、とハラハラの連続。
実際そうなんだろうけど、敵兵の姿はほぼ描かれず。唐突に思いもしない方向から攻撃されるのでこれまたドキドキさせられる。
空からの攻撃にはイギリス軍も迎撃部隊が活躍したりもするけど、やっぱり敵の姿は分からず撃墜しても、あー飛行機落ちていくなーという描写。
描きたいのは敵のある戦いなのではなくて、いかに死と隣り合わせの状況で、死への恐怖で飲み込まれそうになる狂気に抗いながら、それぞれが生き延びたのか、ということなのかな。そういう意味では、ラストはふんふんなるほどね、と落ち着くところに落ち着いた感じになったと思う。戦争映画にしては後味はそんなに悪くない。
少しだけ時系列をいじったノーラン風味は加えられているものの、史実ベースなのでいつもよりは控えめな感じ。
ここがらしさと見るか別にいらんかなぁと見るかで若干評価は変わるかも。私は後者かな。
トータルとしては時間も含めてギュッと凝縮した感じになっているものの、中身は濃いし緊張感半端ないので、これ以上尺長かったら持ちまへん…。
ダンケルク・スピリット‼️
この作品は21世紀に作られた最高の戦争叙事詩だと思います‼️監督は天才クリストファー・ノーラン監督‼️描かれるのは第二次世界大戦で史上最大の撤退作戦と呼ばれる「ダンケルクの戦い」‼️
降伏勧告のビラが兵士に降り注ぐオープニング。ドイツ軍の銃撃を受け、主人公トミーだけが走り逃げて広い海岸に出る鮮やかなシーン。海水に半分浸かりながら救助を待つ兵隊たち、その列に容赦なく浴びせられる爆撃。3機が編隊を組んで大空を滑空するスピットファイア。大海原を同胞の救出に向かう民間船。魚雷を受けて沈没する掃海艇と兵隊たちのパニック描写。重油まみれの海に浮かぶ無数の兵隊たち。夕陽に照らされながら不時着するスピットファイア。浜辺に散乱する無数のヘルメット。スピットファイアを燃やし捕虜となるパイロット、などなど‼️
とにかく一つ一つの構図とフレームが、練りに練られた印象的なモノで、加えて65mmフィルムで撮影されたらしい美しくリアルな映像と、凄まじい音響効果と視覚効果でもたらされる緊張感と臨場感はハンパないです‼️実際にドイツ軍の爆撃から逃げ回り、救助のため船を駆り、スピットファイアで敵機と交戦し、沈没する船で溺れちゃったような臨場感‼️これにノーラン監督一流の時間的サスペンスが加わります‼️これまでも「メメント」では逆行、「インセプション」では夢の階層ごとの時間経過、「インターステラー」では宇宙航行での時間的な歪みといった "時間" を重要な要素として取り入れてきたノーラン監督が究極のタイムスペクタクルとでもいいましょうか。描かれる陸海空の攻防の中で、陸:防波堤で救助を待つ兵隊たちの1週間、海:民間船で兵隊救助に向かう人々の1日、空:撤退作戦を支援するため飛び立つパイロットたちの1時間‼️この異なる3つの時間軸をシンクロさせて、3つの視点を切り替えながら描く手法‼️パイロットが見る民間船、民間船の船長が見るスピットファイア、民間船に救助される兵隊を援護するスピットファイア‼️それぞれの進行時間の中でそれぞれの視点から繰り返し描くその手法はまさに天才の仕事ですね‼️美しいシンセサイザーの音色に心洗われる音楽も、崇高的で格調高いと思います‼️この作品で描かれた事は "ダンケルク・スピリット" というイギリス人の誇りとして語り継がれているらしいのですが、ノーラン監督が素晴らしいのは連合国の勝利を描いた一方で、勝利は犠牲なしでは得られないことを明確に表現したことだと思います‼️救助された兵隊たちの一方で、担架で運ばれる兵隊たち‼️陸と海での救助作戦を援護、自らは燃料切れで敵方の捕虜となってしまうパイロット‼️カッコいいぞ、トム・ハーディ‼️まさしく名作ですね‼️
2023年9月10日現在、未だ上映日未定のクリストファー・ノーラン監督最新作「オッペンハイマー」‼️早く観たい‼️被◯国日本だけにいろいろな事情があると思いますが、配給会社の皆様の英断にチョー期待‼️
ダンケルクの名誉ある撤退
ダンケルクの名誉ある撤退(1940年5月26日~6月4日)
ドイツ軍に完全に包囲されたフランスのダンケルク。
その10日間。
英国陸軍2等兵のトミーがドイツ軍に襲撃されて、
たった一人生き残り、ダンケルクの浜にたどり着く。
そこまでの「陸の一週間」
ドーソンなどの民間船が救助に向かう「海の一日」
6月4日のイギリス軍の戦闘機に襲いかかるドイツ戦闘機を
迎撃する「空の1時間」
その「陸・海・空」の戦いががクロスして描かれる。
異様なほどの緊迫感と臨場感そしてラストに従って起こる高揚感。
撤退という後退を描きながら、戦意が高まっていくのは何故だろう。
ケネス・ブラナーのボルトン海軍中佐。
英国戦闘機スピットファイアのパイロットのトム・ハーディ。
その他の大物俳優はほとんど出演していない。
多くは名も無き若き兵士たちだ。
だが、この映画の何が新しいのだろう?
ともかく新鮮なのだ。
ともかくリアルなのだ。
今そこで起きてる戦闘のように、迫ってくる。
多分、カメラだ。
撮影がいい。
目の前、手の届くすぐそこに兵士がいて、戦艦に魚雷がぶつかり火を吹き
海は火の海。
兵隊はゾロゾロと船底から出てきて、船から這い出す。
夜の海に浮かぶ兵士たち。
本当に6月4日の穏やかな海で良かった。
凍えるほど寒くない。
呑まれるほどの高波もない。
不幸中の幸いかな。
ハンス・ジマーの音楽は主張せずに寄り添う。
メロディ・ラインよりオーケストラの低い響きを優先する。
「ダンケルクの救出」
居合わせた40万人の兵士のうち33万五千人が
救出されました。
名誉ある撤退。
民間船に応援を要請したチャーチル及び連合軍の指揮官。
この民間船(貨物線、漁船、遊覧船、救命艇にヨット)
民間船は沖で待つ駆逐艦に兵隊を乗せてピストン輸送。
この撤退作戦を【ダイナモ作戦】と呼ぶ。
ダイナモ・ルーム(ダイナモとは発電機のことで、
ドーバー城地下の海軍の指揮所の一室)
そこにイギリス海軍の中将ラムゼーが作戦を計画し、チャーチル首相に
ダイナモ・ルームで作戦を説明した。
民間船と民間人が救出劇に参加して、大きく貢献したことで
連合軍の士気は大いに盛り上がったのでした。
ダンケルクの戦いを今に伝える映像が素晴らしかったです。
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