伊嵜充則、「夢」出演時の黒澤明監督との驚きのエピソードを披露【第38回東京国際映画祭】
2025年11月1日 16:20

第38回東京国際映画祭で11月1日、黒澤明監督の「夢」が上映され、全8エピソードの中の「第2話/桃畑」に主演した伊嵜充則によるトークが行なわれた。司会を黒澤監督の甥でミュージシャン、エッセイストの島敏光が務め、さらに観客として来場していた出演者のひとりである鈴木美恵も飛び入りで登壇し、会場は大きな盛り上がりを見せた。
黒澤監督自身が見た夢を題材に8話で構成された本作。「桃畑」は、少年が雛祭りの日に桃の精霊に出会うさまを描いており、その少年を当時10代だった伊嵜(※当時の表記は伊崎充則)が演じている。

映画を見たばかりの観客の拍手に迎えられた伊嵜は「もう少年ではないですが…(笑)。48歳になりました」と照れくさそうに挨拶。当時、伊嵜は「劇団ひまわり」に所属して子役として活動していたが、母親に勧められて黒澤作品のオーディションに参加した。「(オーディションで黒澤監督に)会う前に、劇団から『最近見た夢の作文』という宿題を出されまして、僕が書いたのは本当に見た夢で、運動会のかけっこで1位になった夢でした。僕は足が速くなかったんですけど、実際にその夢を見た後、一等賞を獲りました。作文を黒澤監督の前で読んだら監督が『この子だ』と言って、出ることになりました」と振り返った。
当時、伊嵜は黒澤監督の存在を知らず、オーディションでも真ん中に座っていたカメラマンの小泉堯史を黒澤だと勘違いしていたそうで「『先生が到着です』と大きくて、サングラスをかけたデニムの帽子のサンタクロースみたいな人が入ってきたんです。みんなが作文を読むのをニコニコして聴いていました」と初対面の時の思い出を明かした。

撮影でも「叱られたことは全くなかった」という伊嵜。本作のあとには、黒澤監督の「八月の狂詩曲」にも出演したが「優しかったです。毎日のようにごはん会があって、枝豆を食べてビールをギューッと飲んでいるイメージです」と語る。撮影以外でも、忘年会や新年会などで黒澤監督の家を訪問する機会もあったそうで、その時のエピソードとして「地べたに座って遊んでいたら、いつものデニムの帽子が掛けてあったので、それを取って被って遊んでいたんですが、(一緒にいた)吉岡秀隆さんが「わぁっ!』と言い出して…。帽子が掛けてあったのがオスカー像だったんです(笑)。(オスカー像を)地べたに置いときますか(苦笑)?」と驚きのエピソードを明かし、会場は笑いに包まれる。
また、成城のスタジオで撮影中に目の当たりにしたエピソードとして「(現場に)外国人が入ってきたんです。黒い帽子にサングラス、黒い革ジャンにブルーデニムで、強烈に印象に残ったのが(香水の)香りでした。黒澤監督と談笑して、写真を撮ったんですが、僕はその人の(膝の)上に座らされて…ジョージ・ルーカスでした(笑)。(当時は)知らなかったんです。サインをもらっておけばよかった」とワールドワイドなエピソードで会場を盛り上げた。

本作で桃の精を演じた建みさととは、その後、20年の時を経て「仮面ライダーオーズ/OOO」で再共演を果たしており「夫婦役をやりました。桃の精と結婚しました(笑)。感慨深かったです。『黒澤監督がご存命だったら報告したいね』という話をして、(黒澤組のスクリプターを長く務めた)野上照代さんに報告しました」と明かした。
この日の客席には、本作で伊嵜の姉役を演じ、「八月の狂詩曲」でも共演している鈴木美恵が来場しており、トークの途中で鈴木も急遽、登壇。鈴木は感極まり「グッときてしまいました。感動しました」と思わず涙を見せる。改めて大きなスクリーンで本作を鑑賞し「監督のことを思い出し、人間ということ――自分は赤い血の流れた人間なんだっていうことを思い起こさせてもらいました。本当に黒澤監督に感謝したいです」と思いを口にした。

伊嵜も改めて「黒澤監督と出会えたことは、役者人生で一番嬉しいことだなと思います。先輩俳優からも『伊嵜は黒澤監督の作品に出られて本当にうらやましい』と言われます」としみじみと語っていた。
第38回東京国際映画祭は11月5日まで開催。
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