余命半年と宣告されたラッパーが国家戦略特区へ 高橋伴明監督「安楽死特区」1月23日公開
2025年8月19日 08:00

在宅医として2500人以上の看取りを経験してきた医師で作家の長尾和宏による小説(ブックマン社刊)を高橋伴明監督が映画化する「安楽死特区」が、2026年1月23日に公開される。毎熊克哉と大西礼芳が出演し、近未来の日本政府が承認する安楽死の要件を満たしてもなお、葛藤する人々の心情をリアルに描く。
25年6月、イギリス議会下院は、終末期の成人の「死を選ぶ権利」を認める歴史的な法案を可決した。オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、ポルトガル、ニュージーランド、カナダなどですでに合法化されているが、イギリスで事実上「安楽死」が合法化されれば、日本の世論にも大きな影響を及ぼす可能性が示唆されている。
映画「安楽死特区」は、近未来の日本で「安楽死法案」が可決され、国家主導で導入された制度のもと、人間の尊厳、生と死、そして愛を問う衝撃の社会派ドラマである。「痛くない死に方」(2020)、「夜明けまでバス停で」(2022)など、死生観と社会問題に真摯に向き合ってきた高橋監督と、「野獣死すべし」(1980)、「一度も撃ってません」(2020)などを手掛けた丸山昇一の脚本により、現代日本が抱える矛盾と倫理を、鋭く、かつ情感豊かに描き出す。
主人公のカップルは、回復の見込みがない難病を患い、余命半年と宣告されたラッパー・酒匂章太郎と、彼のパートナーでジャーナリストの藤岡歩。安楽死に反対のふたりは、特区の実態を内部から告発することを目的に、国家戦略特区「安楽死特区」への入居を決意するが、入居者たちの多様な境遇と苦悩、そして医師たちとの対話を通じて、心に微細な変化が訪れる。
章太郎役を務めるのは、「桐島です」(2025)の毎熊克哉。パートナー・歩役には「夜明けまでバス停で」の大西礼芳。特区の実態を告発するために突き進む歩が、章太郎の心境の変化に直面する様は、観る者の心も激しく揺さぶる。
最期のときを迎える患者と、その選択を支える医師、そして愛する者――それぞれの視点が織りなす群像劇である本作は、章太郎と歩の関係を軸に、制度と人間、理想と現実の狭間で揺れ動く人々の姿を描き、見る者一人ひとりに、生と死の根源を見つめさせる静かで重い問いを投げかける。
1月23日から新宿ピカデリーほかにて公開。
■監督:高橋伴明
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