「罪人たち」あらすじ・概要・評論まとめ ~マイケル・B・ジョーダン×ライアン・クーグラー5度目タッグは全米大ヒット異色ホラー~【おすすめの注目映画】
2025年6月19日 10:00

近日公開または上映中の最新作の中から映画.com編集部が選りすぐった作品を、毎週3作品ご紹介!
本記事では、映画「罪人たち」(2025年6月20日公開)の概要とあらすじ、評論をお届けします。

「ブラックパンサー」「クリード チャンプを継ぐ男」のライアン・クーグラー監督が、これまでの長編作品でも数多くタッグを組んできたマイケル・B・ジョーダンを主演に迎えて描いたサバイバルスリラー。
1930年代、信仰深い人々が暮らすアメリカ南部の田舎町。双子の兄弟スモークとスタックは、かつての故郷であるこの地で一獲千金を狙い、当時禁止されていた酒や音楽を振る舞うダンスホールを開店する。オープン初日の夜、欲望が渦巻く宴に多くの客が熱狂するが、招かれざる者たちの出現により事態は一変。ダンスホールは理不尽な絶望に飲み込まれ、人知を超えた者たちの狂乱の夜が幕を開ける。
主人公の双子をジョーダンが1人2役で演じ、「バンブルビー」のヘイリー・スタインフェルド、「フェラーリ」のジャック・オコンネル、「ザ・ファイブ・ブラッズ」のデルロイ・リンドーが共演。クーグラー監督が脚本・製作も務め、スタッフにも美術デザイナーのハンナ・ビークラー、作曲家のルドウィグ・ゴランソン、衣装デザイナーのルース・ E・カーターら「ブラックパンサー」のチームが再結集した。

1930年代の南部ミシシッピを舞台に、様々なジャンルを横断する異色のアクション・ホラーだ。4月に全米公開されるや2週連続の首位を記録、すでに全世界興収3億5720万ドルを売り上げ、2020年代のオリジナル作品としてはダントツのトップだ。評価も高く、米サイトRotten Tomatoでは批評家97%、観客96%のハイスコアを叩き出している。
シカゴで荒稼ぎをしていた元軍人の双子ギャング、スモークとスタックは、今度は黒人相手の酒場で一発当てようと故郷に戻ってきた。ブルース演奏と温かい食事、様々な酒を出すことで初日から盛況となった店内だったが、そこへレミックと名乗る白人が仲間とやってくる。彼らの正体は吸血鬼で、双子の従兄弟サミーが弾く天才的なギターの音色が彼らを引き寄せてしまったのだ。そして、生き残りをかけた人間とバンパイアの死闘が幕を開ける。

本作は南部ゴシックのジャンルに、ブルースやアイルランド民謡で全編を彩りつつ、アフロ・アメリカンだけでなくネイティブ・アメリカンやアイルランド人、アジア人ら移民や原住民が受けた差別や搾取にも目を配る。大恐慌やジム・クロウ法、KKKやブードゥー信仰といった歴史や文化的コンテクストを踏まえ、弱者が結束して迫り来る吸血鬼たちに立ち向かう姿は、今の米社会にも共鳴するリアルがある。
監督は自身が大ファンであるロバート・ロドリゲス「フロム・ダスク・ティル・ドーン」「パラサイト」をオマージュ、加えてTVシリーズ「ミステリーゾーン」の「蘇ったジェフ」(葬式の最中に生き返った男の話)、「キャンディマン(1992)」、「ドゥ・ザ・ライト・シング」などの小ネタに、十字路伝説(演奏技巧と引き換えに悪魔に魂を売り渡す音楽家)や、ラニアー湖の呪い(黒人が弾圧・追放された土地に作られた人工湖)、デメテル号(吸血鬼を欧州から運んだ難破船)などのナラティブを背景に忍ばせ脚本に詰め込んだ。

クリストファー・ノーラン(ノンクレジット)の助言を得て、映像はIMAXカメラで撮影された。特にハンナ・ビークラー(美術)が作った完璧な酒場セットで、オータム・デュラルド・アーカポー(撮影)の65mmフィルムが長回しで捉えた、アーコモン・ジョーンズ(振付)による異次元の群舞シーンは近年屈指の仕上がりだ。
前半のゆったりしたリズムはむしろ、後半の大殺戮を際立たせる役目と感じた。クレジット後のフッテージもたっぷりで、深く長い余韻を残す。交渉の必要性(吸血鬼は招かれなければ建物に入れない)や宗教観など、様々な示唆に富みながら、エンタメ要素満載の多層的な娯楽ホラー、観客にとって稀有な映画体験になるだろう。
執筆者紹介
本田敬 (ほんだ・けい)
映画.com外部スタッフ。映像宣伝会社エクラン代表。監督は成瀬巳喜男とドゥニ、ビルヌーブ、女優は高峰秀子とブリット・マーリングが好み。落語好きで古典も新作も好きな爆笑派。
関連ニュース






「アイアンハート」原作コミックスから「ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー」、新ドラマへの歩み 新たな伝説を生むキャラを振り返る特別映像
2025年6月18日 17:00
映画.com注目特集をチェック

でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男
【あり得ないほど素晴らしい一作】この映画は心を撃ち抜く。刺すような冷たさと、雷のような感動で。
提供:東映

メガロポリス
【映画の“神”が186億円の自腹で製作した狂気の一作】この映画体験、生涯に一度あるかないか…
提供:ハーク、松竹

なんだこの映画!?
【異常な超高評価】観たくて観たくて仕方なかった“悪魔的超ヒット作”ついに日本上陸!
提供:ワーナー・ブラザース映画

宝島
【あまりにも早すぎる超最速レビュー】すさまじい映画だった――全身で感じる、圧倒的熱量の体験。
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

映画「F1(R) エフワン」
【「トップガン マーヴェリック」を観た人類におくる】あの“体験”を更新する限界突破の超注目作
提供:ワーナー・ブラザース映画

フロントライン
【感情、爆発。】日本を代表する超豪華キャスト。命を救う壮絶な現場。極限の人間ドラマ。魂の渾身作。
提供:ワーナー・ブラザース映画

“生涯ベスト級”の声多数!
「愛しくて涙が止まらない」…笑って泣いて前を向く、最高のエール贈る極上作【1人でも多くの人へ】
提供:KDDI

ネタバレ厳禁映画の“絶品”登場!
【超・超・超・超・異色展開】このカオス、このサプライズの波状攻撃…あまりにも好きすぎた
提供:バンダイナムコフィルムワークス