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【「ミッキー17」評論】原作以上に高密度な“クリーチャーもの”としての構え

2025年3月30日 08:00

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画像1(C)2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

ポン・ジュノが長編商業監督デビューを果たした「ほえる犬は噛まない」(2000)は、彼のフィルモグラフィを俯瞰するうえで的確なガイドを担う。マンション内での小犬失踪をめぐる住民らの喧騒を描いた同作は、笑いと緊張をミックスさせた演出や、コミックスを思わす大胆な画面構成力、なにより時代考証やディテールにこだわった「リアリズム作家」としての自己様式を、キャリア早期に確立させているのが顕著に分かる。

一方でポンは、1990年代末に台頭してきた映画マニア世代監督の中心人物として、SFやスリラーといったジャンルに逡巡なく挑み、韓国映画のルネッサンスに多面的な表情と限りない発展性を与えた。なかでも自国に伝統のない怪獣映画に着手した「グエムル 漢江の怪物」(2006)は、韓国で記録的ヒットを樹立したわりに顧みられる機会が少ないものの、モンスター出現という大状況下でのホームドラマとして、後年に世界市場向けの配信オリジナル「オクジャ okja」(2017)を生み出す鋳型となった。

そんな彼の最新作は、なるほど死んではコピー再生を繰り返し、劣悪な環境で宇宙開拓に従事する主人公ミッキー(ロバート・パティンソン)に、誰もが米アカデミー作品賞を受賞した「パラサイト 半地下の家族」(2019)のブルーカラーファミリーを重ねることだろう。しかしこの「ミッキー17」において監督は、エドワード・アシュトンの原作をよりディストピアに設定し、またクローンの実存やアイデンティティといった主題以上に、“クリーパー”と呼ばれる異生物のサブプロットを強化している。そのため本作はポン・ジュノの「クリーチャー映画」という文脈から切り離すことは困難だ。人類の侵略行為と、入植星の先住生物の生存権をドラマの核心に据え、異生物をメタファーとして社会問題や階級闘争に迫った「グエムル」や「オクジャ」同様、監督の本ジャンルへの強い能動力がフル稼働している。

また怪獣という点において、マーク・ラファロ演じる入植司令官マーシャルもまた、モンスター級の暴君として観る者の心層に鋭い爪痕を残す。メディアを通して大衆を扇動するこの排外主義者は、政権に返り咲いて暴れ放題のトランプ大統領を露悪的にカリカチュアする。思えば「グエムル」も、在韓米軍が多量の毒物を漢江に放流した事件を皮肉ったものだけに、よりワールドワイドに展開される本作で米権力者を冷笑する加工は腑に落ちる。

オスカーを獲て遠い存在になった感のあるポン監督だが、在監者のように扱われるパティンソンの沈んだ衣装は初期作のごとく象徴的で、「ほえる犬」と「グエムル」で安物パーカーやダサジャージを同様に着こなしていたペ・ドゥナが脳裏に浮かぶ。そんなパティンソンの器用な一人二役パフォーマンスも楽しめるが、世界のどこよりも怪獣文化に浴した日本が、ポン・ジュノならではのモンスタームービーの濃度に感応しなくては申し訳が立たない。

(尾﨑一男)

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