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250着以上の“猿”の衣装を担当! Wētā日本人VFXモデラーに聞く「BETTER MAN ベター・マン」CG制作現場のリアル

2025年3月23日 12:00

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「BETTER MAN ベター・マン」3月28日公開
「BETTER MAN ベター・マン」3月28日公開
(C)2024 Better Man AU Pty Ltd. All rights reserved.

グレイテスト・ショーマン」(2017)のマイケル・グレイシー監督の最新作「BETTER MAN ベター・マン」(3月28日公開)は、何と、猿が主人公の異色ミュージカル。その中身は、イギリスの人気ボーイズグループ「テイク・ザット」のメンバーとしてデビューし、グループ脱退後もソロシンガーとしても活躍するロビー・ウィリアムスを猿に見立て、波乱の半生を描く実録映画だ。第97回アカデミー賞で視覚効果賞の候補になった本作で、猿そのものの精密なビジュアルもさることながら、そのボディに張り付くカジュアルウェアの数々はCGとは思えないほど味わいがある。

VFXシニアモデラー宮澤芳里さん
VFXシニアモデラー宮澤芳里さん

そこで、劇中の衣装を担当したVFXスタジオ、Wētā FX所属のVFXシニアモデラー宮澤芳里さんに、Wētāが本社を構えるニュージーランドの首都ウエリントンと東京を繋いで話を聞いた。(取材・文/清藤秀人)

画像3(C)2024 Better Man AU Pty Ltd. All rights reserved.
――まず、CGの猿にCGの衣装を着せていくVFXモデラーとしての仕事の工程から伺ってよろしいでしょうか。
宮澤さん:まず初めに、猿のボディを作ってくれる人がいます。Wetaでは「猿の惑星」シリーズをはじめ、これまでに猿のキャラクターを何作か作っているのですが、それがまず私のところに来たら、専用のソフトウェアを使って猿の体に合うようにドレープをつけて服のパターンを作ります。そのパターンを基にCGで服の厚みや凹み、飾りなどをプラスし、完成したらスーパーバイザーに見せます。そして、許可が下りたら、次はテクスチャー部門で色付けされ、最後はルックデベロプメント部門でマテリアル感がプラスされて、完成です。私はそのような工程の中でモデリングのパートを受け持っています。
画像4(C)2024 Better Man AU Pty Ltd. All rights reserved.
――今回は、特に服がロビーのボディにピッタリしていて不自然さが皆無でした。それは宮澤さんの手腕と捉えて良いでしょうか。
宮澤さん:ボディには製作者がいるのですが、それに合った服を作る際には細かい点に気をつける必要があります。例えば、ロビーは首が太くて胸板が厚い割に肩幅が狭いので、普通のシャツのパターンを着せると首が絞まりすぎるし、肩は足りないし、胸はキツくなってしまいます。それらを全部調整して、自然に見えるようにしていくのが大事です。私はそういった作業を長年続けてきたので、何がおかしいのかすぐわかるというのはあると思います。
画像5(C)2024 Better Man AU Pty Ltd. All rights reserved.
――モデリングの工程を紹介した映像を拝見しましたが、下着から着せていくところにびっくりしました。人間の俳優でも衣装デザイナーが下着まで用意することはなさそうに思いますが。
宮澤さん:下着を作ったのは初めてかもしれません(笑)。普段着はわかりませんが、下着も含めて劇中でロビーが着るステージ衣装はすべてロビー・ウィリアムス本人が着ていた物です。プロダクションの方から届いた写真やスキャンデータをもとにモデリングしていきました。
画像6(C)2024 Better Man AU Pty Ltd. All rights reserved.
――250種類とも言われているロビーの衣装の中でも、デニムのフィット感が特に秀逸ですね。
宮澤さん:腰回りのフィット感を表現するのも大変ですが、デニムに関していえば、テクスチャーだったり、クリエーチャーと呼ばれる服を動かすスタッフもいたり、全員で協力して初めていいものができあがります。なので、私のモデリングだけでは絶対に終わらないんです。相互作用なので、こちらが変なものを出すと、その先にいるスタッフもいい絵が動かせなくなります。
画像7(C)2024 Better Man AU Pty Ltd. All rights reserved.
――宮澤さんはこれまで「アリータ バトル・エンジェル」(19)、「アバター」2作(09、22)、そして「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」(17)、同「VOLUME 3」(23)と、数々の話題作にモデラーとして、またビジュアルエフェクツアーティストとして関わって来られました。その宮澤さんにとって、今回の「BETTER MAN ベター・マン」は新境地と捉えて良さそうな気もします。
宮澤さん:そうですね。まず、今回は過去作と比較して服の量が多かったというのがあります。長いことこの仕事をしていて、工程の途中で何につまずき、どうすればつまずかないかがだいたいわかるようになってきたので、その経験を基に量をこなせたのだと感じます。実は、「アリータ」の時は服がキャラクターになかなかフィットせず、苦労しました。そういった経験がいま役立っているんだと思います。
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――VFXモデラーとしての道筋が定まったのはいつ頃ですか。
宮澤さん:Wētāがまだ小さかった頃は、300人とか400人しかスタッフがいなくて、モデラーという仕事も特化されていなかったのですが、「ホビット 思いがけない冒険」(12)あたりからパターン作りのためのソフトウェアを使うようになり、それをきっかけに専門職を設けようということになりました。その辺から、作品に衣装が必要な場合はモデリングを頼まれるようになりましたね。
――お話を伺っていると、宮澤さんご自身がかなり服飾に精通されているようにお見受けします。
宮澤さん:小さい頃、服を作るのが好きだったんです。ミシンが初めてうちに届いた時、持って来てくれた人が使い方を説明してくれるのを母と一緒に聞いていた記憶があります。それをきっかけにミシンが好きになったし、母がたくさん服を作っていたので、今思うと、母が服のパターンを教えてくれたのかなと感じます。
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――ということは、今のお仕事は天職ということでしょうか。
宮澤さん:そうだったのかなと思います。物を作るのが好きだからこの仕事を始めたのですが、使うのはコンピュータではあるけれど、基本的に服が好きなことに気づきました。この間、日本に帰った時に、昔作った服を見る機会がありました。母が取っておいてくれたんですね。パジャマとか。そんな時、そういえば自分は服が好きだったんだなと、改めて思いました。
――Wētāに入られて20年と伺っています。今、振り返ってどんな時間でしたか。
宮澤:Wētāがあるウエリントンは凄く住みやすい街で、家から仕事場も近いし、子供の学校も近いし、スーパーマーケットも側にあるし、息抜きには海もある。子供を迎えに行った後も、やり残した仕事をしに会社に行くこともできます。バランスがとりやすかったからこそ、この20年間、やり続けられたんだと思います。

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