【「セブン」評論】不安な90年代を象徴したサイコ・スリラーの代表作
2025年2月14日 22:00

ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、グウィネス・パルトロウを迎え、デビッド・フィンチャーが手がけた長編第2作。全米で4週連続の首位を記録、3,300万ドル(51億円)の製作費に対し、全世界で3億2,824万ドル(500億円・全て2025年2月時点の為替レートで換算)の興収を上げている。サイコ・スリラーの傑作として高い人気を保持し、このたびIMAXによるリバイバル公開となった。
雨が降り続く架空の都市。新任刑事ミルズは退職間近のベテラン刑事サマセットと共に、キリスト教の7つの大罪に沿って犯行を続ける猟奇殺人犯を追う。やがて事件はミルズの妻トレーシーを巻き込み、思いがけない方向へと進んでいく。
カイル・クーパーによる冒頭のタイトル・バックから目を見張る。ナイン・インチ・ネイルズ「Closer」を挿入歌に、写真家ジョエル=P・ウィトキン(幼少期に目撃した交通事故で、被害者の遺体を見たことが創作の原点と語る)のオマージュと言われる130秒の映像は、かつてない衝撃を観客にもたらし、全世界でフォロワーを生んだ。
なお、映画のサブスク鑑賞が日常的になった現在、タイトル・バックは煩わしく感じるためスキップされたり、作品自体を避けるトリガーになり得るため、敬遠されがちだ。しかしフィンチャーはデビュー作「エイリアン3」から一貫して、このパートを作り続ける今や珍しい存在だ。
脚本はアンドリュー・ケビン・ウォーカー。大卒後NYに移りタワーレコードなどで働きながら執筆。街に馴染めない自分を投影しつつ、図書館で古典や神学書を読み漁り脚本を書き上げた。役名に付けるほどサマセット・モームを愛読する彼だけに、足に障害を持った主人公が登場する名著「人間の絆」が、犯人の読書リストにも登場する。
撮影はLAで行われ、アレキサンドリア・ホテルなど実在の建物も登場する。この年はエルニーニョの影響でLAでも雨が多く、シーンを繋げるために人工降雨機も使いながら全編を雨天にした。採用された銀残し(明暗が強くなり、暗部はより深くなる現像手法)は、その天候と共に作品のダークなイメージを際立たせるのに一役買っている。
1990年代のサイコ・スリラーブームは「羊たちの沈黙」(1991)、「ツイン・ピークス」(1991~92)で始まり「ミザリー」(91)、「氷の微笑」(1992)、「沙粧妙子 最後の事件」(1995・ドラマ)などを経て、96年の本作で頂点を迎えた。その後も「ユージュアル・サスぺクツ」(1996)、「CURE」(1997)、「PERFECT BLUE パーフェクトブルー」(1998)などで裾野が広がり人気ジャンルとなった。現実でも凶悪な事件が頻発し、世紀末も重なり不安だった世相に合致しつつ、善悪の本質や神の存在という哲学的な深みまで備えた本作、ぜひ大画面での鑑賞を。
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