堺雅人「平場の月」で8年ぶり映画主演! 井川遥と35年越し大人のラブストーリーに挑む
2024年12月18日 05:00
俳優の堺雅人が、土井裕泰監督の最新作「平場の月」で8年ぶりに映画主演を果たすことが明らかになった。女優・井川遥とともに、35年ぶりに再会した中学時代の同級生2人が意気投合し、心を通わせていく大人のラブストーリーを紡いでいく。
朝倉かすみ氏の同名小説(光文社刊)は2018年に刊行され、第32回山本周五郎賞を受賞したほか、第161回直木賞にノミネートされた。お互いに独り身となった中学時代の同級生同士が、35年の時を埋め、心を通わせていくストーリーは「こんな“大人の恋愛小説”は読んだことがない!」と多くの話題を呼び、発売当初から映像化権をめぐり30社以上が争奪戦を繰り広げたという。
「DESTINY 鎌倉ものがたり」以来、8年ぶりの映画主演となる堺は、妻と別れて地元へ戻り、再就職した印刷会社で働きながら慎ましく生活する、どこにでもいるような主人公・青舐に扮する。「半沢直樹」「真田丸」「VIVANT」など、近年の強烈なキャラクターから一転、初参加となる土井組では等身大の実年男性を演じる。
一方の井川は、青砥が中学生時代に思いを寄せていた須藤葉子に息吹を注ぐ。夫と死別しパートで生計を立てているが、中学時代に感じた大人びた線の太さを残しつつも、どこか儚く切なさを感じさせる役どころだ。中学生以来、離れていた35年の時を埋めていく2人は、50歳にして初めて自然に惹かれ合うようになる。やがて未来のことも話すようになるのだが……。
脚本を手掛けるのは、「ある男」の向井康介。原作では断片的な回想として描かれた中学時代の初恋の記憶を、映画ではさらに掘り下げながら35年越しのラブストーリーを繊細に綴る。「花束みたいな恋をした」で等身大の若者の出会いから別れまでを丁寧に表現した土井監督が、今作では15歳の瑞々しい初恋と大人のリアルな恋愛を描く。
堺と初タッグとなる土井監督は「堺さんは、原作や台本をボロボロになるまで読み込んで、情報をすべて取り込んでいるが、最後は削ぎ落して、そのまま立っている感じがします。現場で堺さんのお芝居を見て、青砥ってこういう人なんだと教えられるような、青砥をわかっていくことが多いです。青砥という人が堺さんの中にあると思いますが、こちらの要求にも柔軟に対応してくれ、堺さんと役を作っていくのが本当に楽しいです」と語る。
井川に対しても、「以前ドラマ『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲』でご一緒した際に、この須藤のような“太いところがある人”と感じていました。須藤は一筋縄ではいかない難しい役です。須藤のシーンを撮影する度に井川さんとお互いに持ち寄って、見つけながらやっているような感じです」と明かしている。
原作発表時には、朝霞市、新座市、志木市など埼玉県内の実在の地名や店舗が多数登場して話題になったが、映画でも同市内を中心にロケーションを敢行。映画は、2025年秋に全国で公開。
なお堺、井川、原作の朝倉氏のコメント全文は以下の通り。
青砥役のオファーをいただき、原作を読みましたが、原作小説の世界が素晴らしく、豊かなので、ぐいぐいと引き込まれ、何度も何度も読み返しました。今回、原作に登場する場所で撮影し、いち原作ファンとしては聖地巡りのような、本当に夢のような日々が始まったなと感じています。
僕が演じる青砥は井川さん演じる須藤あっての青砥だと思っています。撮影が始まり、役としての井川さんと出会って、須藤の横にずっといたいなという気持ちが強くなりました。また、土井監督は大学の演劇研究会の先輩にあたり、ずっとご一緒したかったので、今回念願叶ってとなります。土井監督は物腰が柔らかく、丁寧に説明してくださり、役者が伸び伸びと動けるようにしてくださる印象です。これから撮影が続きますので、監督のおっしゃった通りに動きたいと思っています。
須藤は青砥と再会したことによって、そこから慎ましやかだけれども気持ちが少しずつ膨らんでいく。この2人を応援したくなりました。私自身、この年齢になったからこそわかる気持ちが原作の中に溢れていて、温かさや切なさも同時にあるこの本を愛おしく感じました。
今回、私が演じる須藤は自分の弱さを見せまい、寄り掛かることをよしとしない覚悟を持って生きている人です。須藤の芯の強さ、意地らしさ、今ささやかな幸せを噛みしめている感じ、それら彼女の持っているものを大切に演じたいと思いました。堺さんは懐が深く、温かくて包み込んでくれるような方です。年齢を重ねてまたご一緒できること楽しみにしていました。土井監督とは今回2作目になりますが、大変嬉しく思っています。その役の持っているもの、滲み出てくるものなど丁寧に教えてくださるので、監督についていきたいと思います。
「平場の月」はわたしにとって初めての映像化作品になります。
もちろん映像化というものへの関心はありました。それは著作が異なるメディアで展開されるのを観てみたい、という圧倒的なミーハー魂と、わたしがひとりで書いたものを、わたしではない人たちがチームを組んで表現したらどんなふうになるのだろう、という純然たる好奇心の混ざり合ったものでした。
ミーハー魂は、「ピッタリ!」のキャストやスタッフを妄想させ、好奇心は、わたしが紙やモニタなどの平面に文字で描いたシーンが立体となったときの驚きや喜びを想像させました。シーンといっても具体的なものではなく、わたしが書くときに大事にしている三つ(ディティールと、実感と、イノセンス)が感じられるかどうかがポイントでした。
そんな我儘すぎるあれこれが、どんどん「ほんとう」に—それはもう思った以上に「ほんとう」に—なっていく不思議を、今、味わっている最中です。
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