【「ヴェノム ザ・ラストダンス」評論】<ロード・ムービー>のような要素を持ったシリーズ最新作
2024年11月4日 08:00
(C)2024 CTMG. (C)& TM 2024 MARVEL. All Rights Reserved.トム・ハーディ演じる敏腕記者のエディ・ブロックを主人公にした「ヴェノム」(2018?24)シリーズが、マーベルコミックスを実写映画化した作品群の中でも、やや異色であるという理由がいくつか存在する。そのひとつが、単独作品になったという点。説明するまでもなく、マーベルコミックスのスーパーヒーローたちは、「アベンジャーズ」(2012)などのマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品で競演。本来は独立した複数の作品が、同じ世界観の中でクロスオーバーしてゆく展開によって多くのファンを獲得していったという経緯がある。ヴェノムと同様にソニー・ピクチャーズが権利を持つスパイダーマンは、交渉の末MCUに参加しているが、ヴェノムは当初から独立した作品として企画が進んだと伝え聞く。MCUは作品数が膨れに膨れ上がり、もはや「一見さんお断り」のような赴きさえある中で、単独作品であることはMCUに疎い観客に対して興行の強みであると言える。
とはいえ、ヴェノムというキャラクターそのものは「スパイダーマン3」(2007)に登場しているし、厳密には「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」(2021)のミッドクレジットにエディの登場シーンが挿入されていたりもする。それゆえ、クロスオーバーの可能性を示唆させながらも、基本的には「ヴェノム」シリーズだけでストーリーを成立させた英断は特筆すべき点だろう。トム・ハーディにとっても、エディ=ヴェノム役に対して思い入れがあることは、彼が2作目以降で製作を兼ねているだけでなく、2作目では脚本を担当していることからも窺える。斯様な経緯のある「ヴェノム」だが、3作目となる「ヴェノム ザ・ラストダンス」は前作の“続きの物語”でありながら、さらに異色さが際立っているのである。劇中では「レインマン」(1988)や「テルマ&ルイーズ」(1991)といった作品名が登場するが、それらの過去作へ倣うかのように、今作は<ロード・ムービー>のジャンルに属するような要素を持った作品となっているのだ。
エディ・ブロックとヴェノムの関係には、アボット&コステロの凸凹コンビや、「珍道中」シリーズのビング・クロスビーとボブ・ホープのようなコンビのドタバタ感がある。特に「アラスカ珍道中」(1946)や「バリ島珍道中」(1952)などのシリーズ作は、ドロシー・ラムーアを伴った旅を描く<ロード・ムービー>だったという特徴があった。「ジキルとハイド」のような関係性にあるエディとヴェノムのやりとりには、往年のコメディ映画に通じるものを感じさせるのである。また、トム・ハーディがエディ役とヴェノム役をひとりで演じ分けている点も重要だ。それは、腹話術師エドガー・バーゲンが人形のチャーリー・マッカーシーを操って聴衆を沸かした、テレビ番組や映画のワンシーンを想起させるからでもある。今作はVFXやCG表現によって構築されているものではあるが、奇しくもトム・ハーディの即興演技を時に取り入れながら、ひとり二役であることによって腹話術のような軽妙さを導いているのだ。エディとヴェノムは旅路の果てに、残された者だけが約束の地へと辿り着く。彼の地の眩しいばかりの輝きと、ひとりになった寂寞感。それはまるで、<ロード・ムービー>である「真夜中のカーボーイ」(1969)の終幕のようではないか。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
面白すぎてヤバい映画
【目が覚める超衝撃】世界中の観客が熱狂・発狂し、配給会社が争奪戦を繰り広げた“刺激作”
提供:松竹
この冬、絶対に観る映画はありますか?
【私はこれを絶対に観ますね!!】心の底から推す理由が、たんまりあります!
提供:ディズニー
人生にぶっ刺さる一本
すべての瞬間が魂に突き刺さり、打ち震えるほどの体験が待っている。
提供:ディズニー
日本で実際に起きた“衝撃事件”を映画化
【前代未聞の事件】そして鑑賞後、あなたは“幸せ”の本当の意味を知る――
提供:KDDI
なんだこの天才的な映画は!?
【物語がめちゃくちゃ面白そう――】非常識なまでの“興奮と感動”を堪能あれ
提供:ディズニー
てっぺんの向こうにあなたがいる
【世界が絶賛の日本映画、ついに公開】“胸に響く感動”に賞賛続々…きっとあなたの“大切な1本”になる
提供:キノフィルムズ