東京国際映画祭って、どんな映画祭? 歴史から紐解く魅力と楽しみ方
2024年10月27日 13:00
第37回東京国際映画祭が10月28日~11月6日、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催されます。アジア最大級の映画の祭典といわれ、TIFFの略称で親しまれている本映画祭の魅力を、歴史から紐解きながらご紹介していきます。
1985年から始まった東京国際映画祭は、日本で唯一の国際映画製作者連盟(世界の映画産業や国際映画祭の諸問題を改善、検討する国際機関)公認の国際映画祭。コンペティション部門には世界中の映画作家から数多くの作品(第36回は114の国と地域から1942本の応募)が寄せられました。過去にはアレハンドロ・アメナーバルが「オープン・ユア・アイズ」、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが「アモーレス・ぺロス」、ミシェル・アザナビシウスが「OSS 117 カイロ、スパイの巣窟」でグランプリを獲得しており、後に世界を席巻する監督陣が本映画祭で飛躍のきっかけをつかみました。
現在のメイン会場は、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区ですが、過去には渋谷や六本木が会場として映画祭を盛り上げてくれました。
2004~2008:渋谷(Bunkamura)と六本木(六本木ヒルズ)
2009~2017:六本木
2018~2020:六本木と日比谷
2021~:日比谷・銀座地区
映画祭の華ともいえるコンペティション部門には、これまでに世界で活躍する著名な映画人が審査員を務めてきました。その中から、歴代の審査委員長を紹介します。
第2回:グレゴリー・ペック(インターナショナル・コンペティション/ヤングシネマ・コンペティション1987国際審査委員長)
第3回:イブ・モンタン(インターナショナル・コンペティション)
第4回:ルイス・ギルバート(インターナショナル・コンペティション)
第5回:リチャード・D・ザナック
第6回:フランコ・ゼッフィレッリ
第7回:マイク・メダボイ
第8回:ヒュー・ハドソン
第9回:セルジュ・シルベルマン
第10回:ソウル・ゼインツ
第11回:ジェレミー・トーマス
第12回:カレル・ライス
第13回:フォルカー・シュレンドルフ
第14回:ノーマン・ジュイソン
第15回:リュック・ベッソン
第16回:コン・リー
第17回:山田洋次
第18回:チャン・イーモウ
第19回:ジャン=ピエール・ジュネ
第20回:アラン・ラッドJr.
第21回:ジョン・ボイト
第22回:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
第23回:ニール・ジョーダン
第24回:エドワード・R・プレスマン
第25回:ロジャー・コーマン
第26回:チェン・カイコー
第27回:ジェームズ・ガン
第28回:ブライアン・シンガー
第29回:ジャン=ジャック・ベネックス
第30回:トミー・リー・ジョーンズ
第31回:ブリランテ・メンドーサ
第32回:チャン・ツィイー
第33回:新型コロナウィルス感染拡大の影響によりコンペティション部門中止
第34回:イザベル・ユペール
第35回:ジュリー・テイモア
第36回:ヴィム・ヴェンダース
第37回:トニー・レオン
コンペティション部門以外にも、多種多様な部門が用意されています。現在ある部門・企画をまとめて紹介します。舞台挨拶だけでなく、上映後に監督や俳優が登壇し、観客の質問に応えるティーチインが行われる作品も多くあります。より深く作品世界を理解できる魅力的なひと時を楽しむことができます。
娯楽性と作家性を兼ね備えた、世界の話題作を上映します。
2013年に創設され、アジアの新人新鋭監督が競い合う第2コンペとして今年で11回目を迎えます(コロナ禍の2020年はコンペ部門なし)。入選作10本すべてがワールドプレミア(世界初上映)です。
女性の複雑な諸相を描いた女性監督による多彩な作品を特集する部門が新設されました。女性のアイデンティティやたくましさ、変容などこれまで語られてこなかった側面に光をあて、世界中の女性の多様性と強さを称える作品を特集します。
現在の世界の映画の潮流を知ることのできる作品を紹介します。日本での劇場公開がまだ決まっていない映画も多いため、この部門での上映がきっかけとなり、日本での公開が実現した例もある貴重な部門になります。
日本映画の新作を上映する部門。選考にあたっては、「海外に紹介されるべき日本映画」という観点を重視しており、骨太な作品も多く上映されます。
国内外の最新の注目作を上映するパートと、かつての名作を上映するレトロスペクティブのパートで展開されます。
日本映画界の巨匠たちの功績を特集する部門です。今年は増村保造監督の生誕100周年を記念し、3本の傑作を上映。また、名優・高倉健さんの没後10年にあたり、「日本侠客伝」「網走番外地」「狼と豚と人間」を上映します。
テレビ放映やインターネット配信を前提としたシリーズものが数多く作られるようになり、その中には劇場用映画に勝るとも劣らないクオリティを有するものがある、という状況を踏まえ、すぐれたシリーズものを紹介する部門です。
10代の観客に観てもらいたい…という映画祭の願いを込めて選出された作品を上映します。そのため、10代はもとより一般の映画ファンも必見の強力な作品が揃っています。
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ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
死刑囚の告発をもとに、雑誌ジャーナリストが未解決の殺人事件を暴いていく過程をつづったベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」(新潮45編集部編)を映画化。取材のため東京拘置所でヤクザの死刑囚・須藤と面会した雑誌ジャーナリストの藤井は、須藤が死刑判決を受けた事件のほかに、3つの殺人に関与しており、そのすべてに「先生」と呼ばれる首謀者がいるという告白を受ける。須藤は「先生」がのうのうと生きていることが許せず、藤井に「先生」の存在を記事にして世に暴くよう依頼。藤井が調査を進めると、やがて恐るべき凶悪事件の真相が明らかになっていく。ジャーナリストとしての使命感と狂気の間で揺れ動く藤井役を山田孝之、死刑囚・須藤をピエール瀧が演じ、「先生」役でリリー・フランキーが初の悪役に挑む。故・若松孝二監督に師事した白石和彌がメガホンをとった。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
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文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
ハングルを作り出したことで知られる世宗大王と、彼に仕えた科学者チョン・ヨンシルの身分を超えた熱い絆を描いた韓国の歴史ロマン。「ベルリンファイル」のハン・ソッキュが世宗大王、「悪いやつら」のチェ・ミンシクがチャン・ヨンシルを演じ、2人にとっては「シュリ」以来20年ぶりの共演作となった。朝鮮王朝が明国の影響下にあった時代。第4代王・世宗は、奴婢の身分ながら科学者として才能にあふれたチャン・ヨンシルを武官に任命し、ヨンシルは、豊富な科学知識と高い技術力で水時計や天体観測機器を次々と発明し、庶民の生活に大いに貢献する。また、朝鮮の自立を成し遂げたい世宗は、朝鮮独自の文字であるハングルを作ろうと考えていた。2人は身分の差を超え、特別な絆を結んでいくが、朝鮮の独立を許さない明からの攻撃を恐れた臣下たちは、秘密裏に2人を引き離そうとする。監督は「四月の雪」「ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女」のホ・ジノ。