政治エンタメ作品「もしも徳川家康が総理大臣になったら」 「翔んで埼玉」との関係性は?【コラム/細野真宏の試写室日記】
2024年7月26日 10:00
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
今週末7月26日(金)から、異色の政治エンターテインメント作品「もしも徳川家康が総理大臣になったら」が公開されます。
タイトルを含め、トンデモ感が漂っていますが(笑)、この異色な作品を映画化するのは割と賭けのように感じます。
ただ、見てみると、意外にも良く出来ていました。
それは、この作品を手掛けたのが、同じくトンデモ感が漂っていた「翔んで埼玉」を成功に導いた武内英樹監督だったからでしょう。
武内英樹監督は、フジテレビの社員として有名だったので、私は「もしも徳川家康が総理大臣になったら」もフジテレビ映画なのかと思っていました。
その一方で気掛かりだったのは「めざましテレビ」などでそれほど紹介されていない点でしたが、案の定、製作委員会は以下のようになっていました。
東宝が幹事会社で、「東宝、サンマーク出版、トライストーン・エンタテイメント、ローソングループ、秋田書店、クオラス、ニッポン放送」。
最後の「クオラスとニッポン放送」は、フジテレビも属する「フジ・メディア・ホールディングス」の会社ですが、肝心のフジテレビの名前がありませんでした。
この理由と思われるのが、2022年に発表された「50歳以上を対象とした早期退職制度」。武内英樹監督は、2023年3月末でフジテレビを退社しフリーランスになっています。
つまり、今後の武内英樹監督作品は、必ずしもフジテレビ映画にはならないわけです。
おそらくこのきっかけのひとつとなったのが、興行収入37.6億円を記録し日本アカデミー賞も席捲した「翔んで埼玉」の成功だったように思います。
「もしも徳川家康が総理大臣になったら」においても「翔んで埼玉」と同様に、「脚本・徳永友一、音楽・Face 2 fAKE」というチームが集結しているからです。
さらに、次回の武内英樹監督作品である「はたらく細胞」(2024年12月13日公開)にも、同様の「翔んで埼玉」チームが集っているのです!
そのくらい、トンデモ感のある作品を名作に昇華させた「翔んで埼玉」の成功事例は大きなものだと考えられます。
「もしも徳川家康が総理大臣になったら」の時代設定は、2020年。まさに新型コロナウイルスの影響で日本も含め世界中が緊急事態になった現実とリンクする設定となっています。
この日本の国難に緊急対応するため、AIなどを駆使して、日本の偉人たちを蘇らせて、総理大臣も含め、閣僚を全て歴史上の偉人たちで構成する、という物語です。
設定を聞くと、やはりトンデモ感が満載ですが、流石は「翔んで埼玉」チームという感想でした。
随所にギャグを織り交ぜながら、最後には的確な社会風刺も含め「正当な政治映画」として成立していました。
おそらく本作の映画化は、「翔んで埼玉」チーム以外では無理だったと思います。
とは言え、政治映画は日本でそれほどヒットした実例がなく、有名なのはフジテレビ映画の三谷幸喜監督作「記憶にございません!」の興行収入36.4億円でしょう。
昨今、テレビ局の影響が弱まってきているとされていますが、ネットニュースはテレビ関連であることが多いなど、何だかんだとテレビ局の影響力はまだまだ小さくないと思います。
そのため、フジテレビ映画ではなくなった武内英樹監督作品がどれだけヒットできるのかは、大きな注目点となります。
個人的な印象としては、興収15億円は狙えると思っています。
割と制作コストがかかっている作品のように感じたので、興収15億円は何とか死守して、前作「翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて」のように興収20億円を超える成功をおさめることができるのかが焦点でしょう。
映画業界の反転攻勢は、1週目「キングダム 大将軍の帰還」、2週目「怪盗グルーのミニオン超変身」は想定通り大ヒットを記録しています。
そして、今週の「反転攻勢の3週目」は、本作以外でも「デッドプール&ウルヴァリン」「劇場版モノノ怪 唐傘」など期待作が複数あり、まだまだ盛り上がりそうな状況です。
果たして、これらはどれくらいのヒットとなるのか、「反転攻勢の3週目」も大いに注目したいと思います!
執筆者紹介
細野真宏 (ほその・まさひろ)
経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。
首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。
発売以来15年連続で完売を記録している『家計ノート2025』(小学館)がバージョンアップし遂に発売! 2025年版では「全世代の年金額を初公開し、老後資金問題」を徹底解説!
Twitter:@masahi_hosono
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
【推しの子】 The Final Act NEW
【忖度なし本音レビュー】原作ガチファン&原作未見が観たら…想像以上の“観るべき良作”だった――!
提供:東映
物語が超・面白い! NEW
大物マフィアが左遷され、独自に犯罪組織を設立…どうなる!? 年末年始にオススメ“大絶品”
提供:Paramount+
外道の歌 NEW
強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…地上波では絶対に流せない“狂刺激作”【鑑賞は自己責任で】
提供:DMM TV
全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の超重要作 NEW
【伝説的一作】ファン大歓喜、大興奮、大満足――あれもこれも登場し、感動すら覚える極上体験
提供:ワーナー・ブラザース映画
ライオン・キング ムファサ
【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!
提供:ディズニー
ハンパない中毒性の刺激作
【人生の楽しみが一個、増えた】ほかでは絶対に味わえない“尖った映画”…期間限定で公開中
提供:ローソンエンタテインメント
【衝撃】映画を500円で観る“裏ワザ”
【知って得する】「2000円は高い」というあなただけに…“超安くなる裏ワザ”こっそり教えます
提供:KDDI
モアナと伝説の海2
【モアナが歴代No.1の人が観てきた】神曲揃いで超刺さった!!超オススメだからぜひ、ぜひ観て!!
提供:ディズニー
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。