【第77回カンヌ国際映画祭】奥山大史監督「ぼくのお日さま」にスタンディングオベーション、山中瑶子監督「ナミビアの砂漠」も好評価
2024年5月20日 16:00
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5月14日に開幕した第77回カンヌ国際映画祭で19日(現地時間)、ある視点部門で奥山大史監督の「ぼくのお日さま」が披露され、スタンディング・オベーションの温かい拍手を浴びた。会場には、今年のコンペティション部門の審査員である是枝裕和監督や、新制作会社K2 Picturesに関する記者会見のためカンヌに来ていた西川美和監督、クィア・パルム部門の審査員長を務めるルーカス・ドン監督らの顔も見られた。
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終映後、奥山監督は、「自分が尊敬している、背中を追いかけ続けてきた映画人の方々に観て頂きとても光栄です。会場も温かい反応で、嬉しかったというより、安心しました」と、胸の内を明かした。奥山監督とともにカンヌを訪れた主演の子役、越山敬達と中西希亜良、池松壮亮もそれぞれ喜びを噛み締めながら、「カンヌに来るのは初めてだったんですけれど、公式上映ですごく温かい反応を頂いてとても嬉しいし、カンヌのような素晴らしい場所でこの映画が伝えたいことが伝わった気がします。まだ夢を見ている気持ちです」(越山)、「初めての映画出演でカンヌのような素晴らしい映画祭に連れてきて頂き、感謝の気持ちで溢れています。夢のような時間を過ごせて本当に幸せです。最初は気づかなかったんですが、終わってから、こんなに会場に人がいたんだとびっくりしました」(中西)、「僕自身もみんなと同様に初カンヌで、右も左もわからないなかで、素晴らしい反響を頂けて、この映画にとって本当に最高のスタートを切らせて頂いたと思います。そんなに緊張しているつもりはなかったんですが、終わってどっと疲れを感じたので、やっぱり緊張していたんだなと実感しました。今回作品を観るのは2回目だったんですが、自分で言うのもなんですが、あらためてとてもいい映画だと感じました」(池松)と、率直な思いを言葉にした。
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さらに監督は会場となったドビュッシー・シアターについて、「上映前日に音のチェックをしたのですが、劇場の特性として音の聞こえ方が、圧が強すぎずバランスがよくて、とても心地よいと感じました。この映画にとってはドビュッシーが向いていたと思いますし、ここで世界初の上映ができたことはとても幸せだったと思います」と付け加えた。
本作は奥山監督のオリジナルストーリーであり、吃音を持つ少年がフィギュアスケートの上手い少女に恋をし、東京から越してきた元有名選手のスケート・コーチの力を借りて、ペアでアイスダンスのトーナメントを目指すようになる様子を描く。淡い恋心に誤解や嫉妬が混ざり、複雑な感情を生み出していく様子を、丁寧かつ詩的に描写しカンヌの観客を魅了した。
ちなみに今年のカンヌの公式ポスターは、黒澤明の「八月の狂詩曲」だが、この作品の制作総指揮を務めたのが奥山監督の祖父だという。池松は、「奥山監督は自分で言いたがらないかもしれませんが、こういう年にこの映画が披露されたというのは、やはりカンヌに呼ばれたのだという気がします」と明かした。
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一方、カンヌの併設部門の監督週間では17日に、山中瑶子監督の「ナミビアの砂漠」がプレミア上映された。
ベルリン国際映画祭に出品された自主映画「あみこ」(2017)に続く、山中の商業映画1作目となる本作は、日常に鬱屈を感じながらも現状を変えられないヒロイン、カナを独創的なタッチで描く。「あみこ」を観て女優を目指すようになったという河合優実が、カナの行き場のないエネルギーを全身に滲ませたパワフルな演技を見せる。
フランスの日刊紙リベラシオンは、「間違いなく素晴らしい作品」と評価。他にも「俳優たちの的確な演技に支えられた魅力的な作品」(Letterboxd)、「生々しくダイナミックで、若い監督らしい作品」(FilmVerdict)といった好評価が上がった。
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現地には、山中監督、河合とともに、共演の金子大地、寛一郎が顔を揃え、上映後に日本のマスコミの取材に応じた。
山中監督は、「上映後、お客さんたちが素直な感想を伝えにきてくれて、細かい指摘なども頂き、とても良かったです。まったく知らない人ばかりなのに、ダイレクトな反応に驚きました。パリから来たという二十歳の女性は、『美しい映画だった』と言ってくれて、喋ろうとすればするほど涙を流していて、自分はなんと答えて良いかわかりませんでしたが、とても美しい光景でした」と、感じ入った様子だ。河合は、「観ているお客さんの空気を感じ取れたのが本当に嬉しかったですし、上映が終わったあと、興奮して心臓がばくばくしていました。この映画は、何かに諦めているような東京のZ世代のポートレートですが、こちらのお客さんもそれを汲み取ってくれたようで嬉しいです」と語った。
また金子と寛一郎はそれぞれ、「お客さんの反応が良くて、笑いが起きていたことも印象的でしたし、いい映画だなと感じました。とても貴重な経験をさせて頂きました」(金子)、「この映画は今日の日本の若者の恋愛の話で、海外の人にどう受けるのかが気になっていたのですが、笑いのツボが異なって、日本人が笑うところで笑わなかったり、笑わないところで笑ったり、それを一緒に体験することができて素晴らしかったです。みなさんに好評で一安心しました」(寛一郎)と、手応えを感じた様子で笑顔を覗かせた。(佐藤久理子)
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